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羽生結弦選手単独ツアー「RE_PRAY」埼玉感想①【オープニング〜いつか終わる夢】

2023年11月4、5日。

ありがたくも2日間チケットが取れたので、さいたまスーパーアリーナに連日行ってきました。

改めて今あの2日間を振り返ってみると、「RE_PRAY」というアイスショーを現地で体感することができた私は本当に幸せ者だったなと思います。

あの日以来ずっと「RE_PRAY」の余韻に浸っています。
また私の宝物の記憶が増えました。


初日、ほとんど情報を入れずまっさらな状態でこの身に受けた衝撃と感動を、じっくりゆっくりと思い出しながらまた長々と綴っていきたいと思います。
書ききるのに時間はかかるかと思いますが、よろしければ読んでいただけると嬉しいです。

※いつもながらネタバレが満載ですのでご了承ください。


少しセンチメンタルなたまアリ

11月になったというのに軽く汗ばむくらいの気候に恵まれたさいたまスーパーアリーナ周辺。

羽生選手のアイスショーの時は季節を問わず晴天になることが多いですが、この日も見事に晴れ男っぷりを発揮してくれました。

さいたま新都心駅を降りて、乾いた空気を心地よく思いながらさいたまスーパーアリーナに向かうと、
会場に近づくにつれて多くのファン達の熱気が辺りを包みこんでいき、
その熱気を感じた私の心も徐々に高揚していくのが分かりました。

浮き足立って歩いているとやがて遠くに見えてきたさいたまスーパーアリーナ。

2021年の全日本で来た時以来だな、と思った途端、一気に2年前の思い出がよみがえってきました。


2021年12月、
ここさいたまスーパーアリーナにて開催された全日本選手権で、羽生選手は見事金メダルを獲得し北京オリンピック出場の権利を得ました。

その運命のフリーの演技前。
6分間練習の時に、羽生選手はたまアリの満員となった観客席を見てこう思ったそうです。

「もうなんか正直6分間練習前から泣きそうで。あと何回こういう景色が見られるだろうとか、今まで頑張ってきたこととか、いろんなことを思い出して。」

https://www.chunichi.co.jp/article/391232



当時のことを思い出すとなんともセンチメンタルな気持ちになります。

過酷なコロナ禍、コーチもつけずたった一人という状況で、4Aに果敢に挑戦した試合でした。

当時私は羽生選手を応援するためにたまアリにいました。
「優勝できますように。4Aが跳べますように」と両手を握りしめて祈っていました。


彼の言った「こういう景色」というのは、一体どんな景色のことなのでしょう。



この後の怒涛の2年間。
色んな事がありましたね。

2021年12月の全日本で第一位となって、翌年には北京オリンピックに出場。
そして2022年7月にプロ転向。

初の単独公演も東京ドームも満席にし、
入籍発表の後の初単独ツアー公演も2日間とも満席にした。

他の誰も為し得ない事をやり遂げてきた。

「RE_PRAY」たまアリ現地では、公式グッズを手に歩いているファンの方々をたくさん見ました。
今回は、水色のパーカーがとても人気だったそうですね。すぐに完売したと聞きました。
色違いの黒パーカーを着ている人も多かった。

今までの「プロローグ」や「GIFT」、「notte stellata」等のグッズを身に着けた人たちもたくさんいて…

皆笑顔で、楽しそうで、幸せそうにしているのを見て、それだけでぐっとこみ上げるものがありました。

本当に、ここには羽生選手のファンしかいなくて、そのたった一人を見るためだけに、全国から集まったんだなと思うと。

競技を引退しても、入籍しても、少しも妥協せずスケートのために努力してきた羽生選手の人気の証を、このたまアリ前の広場の光景に見た気がしました。

なかなか前に進めないほど人がいっぱい



そう思ったら、まだ会場にも入ってないのに涙が溢れそうになっていました。

羽生選手の大きいパネルが、そんな私を出迎えてくれました。


2年前の全日本で飾られていたパネルでは、あくまでフィギュアスケート選手の一人として他の選手と一緒に写っていた。

今は羽生選手一人だけの大きなパネルがここさいたまスーパーアリーナにそびえ立ち、たくさんのファンに囲まれて微笑んでいる様子に、胸が熱くなる思いがしました。


全日本の時の私は、公式練習を見るために寒さに震えながら開場を待っていました。
試合の前なのでとても緊張していました。
私が試合に出る訳じゃないのにそんなに緊張してどうする?という感じですが…。

寒さのせいだけじゃなく、足が震え、身体が震え、食欲もなくなり。
とにかく羽生選手がいい演技ができて金メダルを取ってくれることを願っていた。

今は、緊張感というよりもワクワクや期待感という楽しくてポジティブな感情しかなくて。

二年前の私は、まさかこんな気持ちでこの地を再び歩いている未来が来るとは思いもしなかっただろうな。

あの頃のことは懐かしいけれど、昔に戻りたいという気持ちはほぼないです。


今の私は、今の羽生選手が一番かっこいいことを知っているので。

また見に来たよ。
ここたまアリでしか見られない、羽生選手の一期一会のスケートを。

羽生選手が見たいと願う「こういう景色」が、
今日このたまアリでもきっと見られるはず。
私はそう信じたい。
その景色を、羽生選手とファンと共に、見たい。

これからも、何度でも、私はその景色の一部となっていたい。

そんな気持ちになりながら、会場入りしたのでした。

ステージの様子


雪肌精と東和薬品のチラシを受け取りつつ入場。

無事に自分の席を見つけ、腰を降ろしてまずはじっくりとリンクを観察します。

後方のロングサイド席ですが、会場全体が広く見渡せるなかなか良い席でした。プロジェクションマッピングがよく見えそうです。

綺麗に張られたリンクの周りと客席にはだいぶ距離があって、黒い床で覆われ、意図的に作られたスペースに見えました。

リンクの奥側には大きなスクリーンが一つ。その両脇に細長いスクリーンと、さらにそれぞれ奥側に注釈席用らしき小さなモニターが見えました。

大きなスクリーンには何やらレトロチックなテレビが大きく映し出されており、画面には「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd →RE_PRAY←TOUR」と書かれています。

このテレビの形が面白くて。
よく見ると下の方にスイッチが付いているし、画面の横と縦の長さの比率からしてアナログです。
音が出るところも一つなので、ステレオじゃなくてモノラルなのかなと。

「RE_PRAY」のメインビジュアルが発表になった時、ロゴのデザインがドット絵だったのでレトロな感じで表現するのかなと思っていた通り、
このテレビの古さ加減がこれから始まるICE STORYの世界観を表しているんだなと思いました。

大きなスクリーンの手前、天井から吊られた四角い装置が目を引きます。

「GIFT」の時のように大きなオブジェがあるとか、オーケストラブース等はありませんでした。

ただ、気になる場所がひとつ。

ショートサイドの客席の眼の前に、小さなステージがあるのです。

目を凝らしてよく見てみると、そのステージにはリンクへ降りる階段がついているのが分かりました。

「あれは何?」
「なんだろうね?あそこで誰かが演奏でもするの?」
「それともあのステージが地下からせり上がってきてご本人が登場するのかな?」
「いや、今回こそ天井から現れるんじゃ?」
「MIKIKO先生、羽生くんに空飛んでほしいって言ってたもんね笑」

などと、隣の友人とああでもないこうでもないと予想合戦していたら、あっという間に開演の時間に。


「GIFT」では「火の鳥」で空を飛ぶという観客の度肝を抜いた登場をしてくれましたが、今回の「RE_PRAY」ではどんな登場をしてくれるのだろう?

もうすぐ羽生選手に会える…!
心が昂ぶります。

やがて会場が暗転し、正面スクリーンに映し出されたテレビが暗闇の中に浮かび上がりました。


オープニング

テレビに映し出される羽生選手。
ゲームのコントローラーを握っています。

なんと、皮手袋をしているではありませんか!

ゲームする時に皮手袋?普通つける?邪魔では?

…などという私の固定概念などすぐにどうでもよくなりました。だってかっこいいから笑
かっこよければそれが正義です。

「PRESS START」のコマンドが選択され、いよいよゲームが始まりました。

音源の少ないゲームサウンドが鳴り響き、それがなんとも懐かしく耳に心地良い。

「SAVE DATA」を選ぶところ。
ゲームをしたことのある人、特にRPGをプレイした人なら大体が見覚えのある画面じゃないかなと思います。
選んだデータがショー当日の日付「20XX/11/04」というところが凝っているなぁと思いました。


白い布を被った羽生選手が登場しました。

天井から吊られた四角い装置の下にスタンバイすると、音楽が流れ、装置から何やら布のようなものが降りてきます。
羽生選手を取り囲むように降りてきた布のようなものは、映像を映し出すスクリーンの役目をしていました。

スクリーンに囲まれた四角い空間の中で羽生選手が舞い始めました。

羽生選手が手をかざすと、それに呼応してスクリーンの中で風が吹いているような映像の描写がありました。
まるで羽生選手自らが風を起こしているみたいに。
それがとても見事でした。

四角く切り取られた空間の中で羽や水がたくさん舞い飛び、音楽と相まって幻想的な景色を作り上げています。

なんて綺麗なんだろう…。
思わず見とれました。

印象的で素敵な演出。
「GIFT」の時のような派手さは無いけれど、
これから始まる物語への期待感が膨らむ印象的なオープニングでした。

固唾を飲んで見守っていたら。

布のスクリーンに、文字が映し出されました。


「いつか終わる夢」




いつか終わる夢Original


…………!!!


スクリーンに映った文字を見た時の私の衝撃といったら。

目を疑いました。


嘘、嘘でしょ?


しばらく見られないと思っていたプログラムなのに。


「いつか終わる夢」、プロローグで初めて見た時から好きすぎるプログラムで、このnoteの過去記事でも散々書いています。

プロローグ、GIFTと2つの単独公演で演じてくれたので、さすがにもう生で見られる機会はしばらく無いと思ってました。

だから、「またこの目でいつか終わる夢を見られる」という事実に驚くやら混乱するやらで。

羽生選手が白いマントを脱いで、あの深い海の色の衣装が見えてもまだ信じられない気持ちでいました。

そして、「いつか終わる夢」の切ない音色が流れてきた時、完全に私の涙腺が崩壊しました。

「GIFT」の時も大泣きしたけど、また再び「RE_PRAY」でも大泣きするとは思わなかった。

泣かせてくれてありがとう、という気持ちです。
感動から涙するなんてこと、日常ではほぼ起こらない体験ですから。

涙が出るほど美しい、
音楽、プロジェクションマッピング、そして
羽生選手のスケート。

すべてが完璧で、調和されていて、完成していました。

後半、光の球を追いかけるようにぐんぐんとスピードをあげて滑る羽生選手の、
氷を削るシューーーッという音がやけに耳に響きました。

言葉達が羽生選手から生まれて流れ落ちて重なる、その場面では
「日本語って綺麗だな」って思いました。

言葉を大切にしている羽生選手が考え抜いたであろう、想いのかけらひとつひとつが、美しく流れていきます。

胸がぎゅっと締め付けられる。

「真っ暗」
「怖い」
「独り」
「水面は心」
「ただ彷徨う」

「いつか終わる夢」より

口には出来ない、だから言葉にした、というような想いが羽生選手からこぼれ出して、雨のようにしとしとと私たち観客に降り注ぎました。


肉眼で見るプロジェクションマッピングは、やっぱりとても綺麗。
映像で見るよりも遥かに鮮明でキラキラしています。
そこに羽生選手のゆったりとした優雅な滑りが乗ると、限りなく幻想的な世界がリンクの上に広がって、見ている私が異空間に誘われた気持ちになりました。

羽生選手を中心に大きな樹が生まれ、リンクいっぱいに根や枝葉が広がっていく美しいラストシーンの後、
彼が膝を折り、何かの想いを込めるように右腕を氷の上に押し当てて、演技は終わりました。

FF10で言うところの「異界送り」されたみたいに魂が抜かれてボーッとしていたら、演技を終えた羽生選手がショートサイドへ向かっていくのが見えました。
先程脱いだマントを拾いに行っただけと思ったら、
なんと次の瞬間スクリーンに羽生選手のお顔のアップが映し出されました。

会場から「キャーー!!」という悲鳴が聴こえました。

悲鳴を出したくなる気持ちは分かります。
攻撃力の高い(顔が良い)羽生選手のアップが突然大画面に映るんですから…。

私はかろうじて息を飲んだだけで済みましたが、動機がしばらくおさまりませんでした笑

羽生選手の先制攻撃を食らって、私達観客は早くも大ダメージを受けました。
1曲目からこれですから、私達は無事にゲームクリア(終演)を迎えられるのだろうか?


それにしても。
まっさらなリンクに最初に刻まれた羽生選手のトレースは、「いつか終わる夢」のものだった。
そう思っただけで何故だか涙が溢れてきます。

「RE_PRAY」の栄えある一曲目に選ばれたこのプログラムには、一体どんな意味が込められていたのでしょう。

きっと、「プロローグ」や「GIFT」の時とは意味が違う。

「RE_PRAY」で羽生選手が表現したいこと、
新たな意味を与えられて「いつか終わる夢」は生まれ変わったのだ、と、なんとなくそんな気がしています。


でも、意味を考察するのは一旦横に置いておいて、
今はまず現地で受けた感動をただひたすら綴っていけたらいいなと思います。



続きます。


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