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富士山・座神香聞     2024 1/1

富士山・座神香聞     2024 1/1
 
クニオ
“スゲー富士だったね!”
ヨシコ
“どの富士山のこと? 今日は沢山の富士山を観たからお腹一杯、どの絵にも感動したけど”
クニオ
“「霽るる」(*1)だよ、観た瞬間、頭をガツンと揺さぶられちゃた”
 

東京・山種美術館に「富士と桜」展・副題に「北斎の富士から土牛の桜まで」とある。
北斎や広重、横山大観、奥村土牛等々の神々しい富士。
渡辺省亭、上村松園、速水御水、千住博等々の絢爛たる桜の競演。
 
ヨシコ
“「霽るる」ね ……  えーと …… なんか異質な感覚を覚えた富士山のことかな~ ”
クニオ
“それそれ  異質というよりは異様な感覚ね!”
 
 
不尽山を詠みし歌一首
「言ひも得ず 名づけも知らず 霊しくも います神かも」 (*2)
萬葉集3巻319 高橋連虫麻呂
 
富士はその神々しい美しい姿によって、万葉人やそれ以前の古代人の自然信仰のより所となっていた、万葉集からもわかる、そう霊峰富士である。
 
 
クニオ
“展示されているほとんどの富士は、神々しく美しい姿だったよね、そうだなー……和魂と言っていいと思う、でも「霽るる」は荒々しく、富士はまるで荒魂のように思えたんだ”
ヨシコ
“荒魂って、霊魂が持つ2つの側面(*3)、和魂と荒魂のこと?”
クニオ
“そう、「霽るる」から強烈なエネルギーを感じない? ほとばしる生命力、まさに荒魂の富士を”
ヨシコ
“確かに、ほかの富士は、麗しく、輝くエネルギーを身にまとった富士だけど、これは、今まさに海から生れ出て、浮かび漂っている、荒々しいエネルギー溢れる富士って感じね”
クニオ
“でしょう   (●´ω`●)ウンウン♪”
…………
 
しばらく「霽るる」の前で佇む二人
 
…………
 
こうして二人は、荒々しい相貌を持ち「あっぱれ」と呼ぶにふさわしい「富士」に名残を惜しみながら、「あわれ」を誘う「桜」のもとに向かった。
 
*1)《霽(ふ)るる》  川﨑晴彦 日本画家(1929-2018) 山種美術館蔵
 作品紹介 雲をまとい、波立水面の上にそそり立つ富士、威厳ある佇まいを見せる  
*2)  ……言不ㇾ得 名不ㇾ知 霊母 座神香聞……
「言ひも得ず 名づけも知らず 霊(くす)しくも います神かも」
訳:名づけようも言いようもなく霊妙な神様だ 
霊しく(くすしく)  霊妙不可思議の意 
 富士は、当時火山活動は活発で、煙の絶えざる様を不尽と表記していた、富士は平安時代以降とされる。                                                         出典 萬葉集 新日本古典文学大系1 岩波書店 
*3)荒魂(アラミタマ)と和魂(ニギミタマ)
 荒魂は神の荒々しい側面、荒ぶる魂である。勇猛果断、義侠強忍等に関する妙用とされる一方、崇神天皇の御代には大物主神の荒魂が災いを引き起こし、疫病によって多数の死者を出している。
和魂は神の優しく平和的な側面であり、仁愛、謙遜等の妙用とされている。
                     出典:ウイキペディア

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