見出し画像

今日もaudible 第15回: The Girl with the Dragon Tattoo

audible uk の会員ですが、リンクは日本版のaudibleにしました。
audible uk については下記をご参照ください。

今日もaudible: ところで audible uk って何?



北欧ミステリーと言えば、これですよね



ここのところおもしろい作品にあたらず、友人が9月の連休中にミレニアムシリーズを一気見すると聞いて、久しぶりにミレニアムシリーズの1作目である The Girl with the Dragon Tattoo を再聴することにしました。

細かいことをいろいろ忘れているので、新鮮な気持ちで聴けました。

こちらのタイトルは日本版 audible では2023年9月時点で聴き放題対象にはなっていないようです。ただし下記の日本語版だと聴き放題対象でした。


ちなみに日本で言う「北欧ミステリー」は Scandinavian mystery と言うみたいですよ。何度か見かけました。


the small hours


Blomkvist kept reading until the small hours and did not get up until late on Epiphany Day.

Stieg Larsson, translated by Reg Keeland, Maclehose Press (2017), The Girl with the Dragon Tattoo, p.148

深夜まで資料を読むふけったようです。
「小さい時間」という言い回しがおもしろいですね。

Longman のサイトでは定冠詞付きの the small hours が下記のように定義されています。

the small hours (also the wee small hours British English)   the early morning hours, between about one and four o’clock


put on some coffee


put on は使用範囲の広い表現です。電気をつける、服を着る、体重が増える、などなど。

この本をスウェーデン語から英語に翻訳された Reg Keeland さんの好きな言い回しなのかもしれませんが、put on some coffee, put on water for coffee のように、coffee とともに何度も出てきます。

Longman のサイトでは put on の10番目の定義 'cook' として下記の記述と例文があります。'cook' は料理の工程の中の火を用いることです。

to start cooking something
例文 Shall I put the pasta on now?

Oxford English Dictionary(OED) では下記のように定義されています。

To put (a kettle, pan, etc.) on a fire, stove, or other heat source.

やかんなり鍋なりを火にかけることを指します。

Longman の例文は「パスタをゆで始めましょうか?」となりそうです。

そこで本文です。

Chapter 24 で 'put on water for coffee' と出てきたときには、コーヒーを入れるためにまずはお湯をわかすところから始めたと場面がすぐ納得できました。

Chapter 24 の前に、water なしで 'put on some coffee' が何度も出てきている間は、water は書いていなくても、上記と同様にコーヒーを入れるためにまずお湯をわかすところなんだろうとは思っていました。まさか、すでに入っているコーヒーを火にかけて温めなおしているわけではありませんよね。

日本語版『ミレニアムⅠ ドラゴン・タトゥーの女』では、たとえば8章なら「ミカエルはコーヒーの準備を始めた。」とありました。「コーヒーを温めた」でもなく「コーヒーを淹れた」でもありません。ただしこれはスウェーデン語から日本語への翻訳です。

みなさんならどのように処理しますか?

(2023年12月30日追記:コーヒーを飲めない私は「コーヒーメーカー」という存在が頭にありませんでした。これですね、きっと。コーヒーメーカーに水と豆をセットすることですね。)


翻訳実験1


Longman の例文である 'Shall I put the pasta on now?' を Google 翻訳にかけてみました。

「今度はパスタを入れましょうか?」

と算出されました。うーん。何か鍋を使うものを作っていて、それができあがったら次はパスタに取り掛かりましょうという文脈なら考えられなくないですね。

もちろんDeepLにもかけています。

「パスタをつけましょうか?」

DeepLの場合、カーソルを訳語に持っていけば、別の訳語一覧が表示されるので、もっといいものがないか探りました。

「パスタを」に続くものとして「かけようか?」「食べようか?」「のせようか?」「入れましょうか?」「温めましょうか?」などなどたくさん並び、ようやく最後に「茹でる?」が出てきました。最初から文脈を与えればすんなり出てくるかもしれません。


翻訳実験2


put on some coffee も訳してもらいましょう。主語は He にして、He put on some coffee. と入力しました。

Google 翻訳
「彼はコーヒーを入れた。」

DeepL 翻訳
「彼はコーヒーを入れた。」

はい、どちらも同じです。

DeepL の別の訳語一覧では「入れた」の部分が「飲んだ」「かけた」「淹れた」「注文した」「置いた」などなどたくさん出てきます。

私はコーヒーを飲めないのですが、みなさんが「コーヒーを入れた」で指す動作はどこの部分でしょうか。

The Girl with the Dragon Tattoo の Chapter 8 でこの表現が出てくる場面では、カップに注いではいません。

このあと少し動きがあったあとで、(あとから来た2名の分も含めて)コーヒーカップを取り出し('got out the coffee cups')、訪問者が持参したケーキを切る場面が出てくるからです。

そもそも原書がスウェーデン語なので、英語に訳すときに何かしらズレは出てくるでしょう。原語が表すものに近い表現を探した結果 put on が使われた可能性もあります。


まだまだこの本から取り上げたい表現があるのですが、いったんここで締めます。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?