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新無印における再登場ライバル

〇概要

今回のテーマは「新無印に再登場したライバル」!
前回の再登場ヒロインに引き続き、新無印における再登場ライバルについて描かれ方やその意義について語っていきます。ライバルの意義やヒロインとの違いについて焦点化して考えます。

〇アンケート

今回もヒロイン編同様にアンケートを実施しました。ただし質問は少し変えています。質問内容は「新無印で再登場したライバルで一番活躍した(している)のは誰?」
得票数は100票で結果は以下の通りです。

今回はかなり数字にバラつきがあって、シゲルが圧倒的に優勢でかなり遅れてシンジ、グラジオと続きアランに入った票はわずか3票でした。(得票数がちょうど100票なので%と票数が同じ)
ヒロインよりもライバルの方が扱いに差があると感じている人が多いのでしょうか。

〇ライバルの役割

前回は再登場の大きな意義は「成長」にあると述べました。しかし、今回のアンケートでは「活躍」という言葉に言い換えました。 これはヒロインとライバルではキャラの役割には違いがあると考えたからです。各自のキャラクターの話に入る前に「ライバル」の役割について考えてみましょう。

・ライバルの役割-相対的な規定-

私はライバルの主な役割は「主人公の位置を相対的に明らかにすること」だと考えています。サトシが何を考え、どう行動するのか。 それはサトシの自己宣告によってのみ成り立つのではなく、サトシと異なる立ち位置にいるライバルによって相対的に規定されます。

例としてバトルスタイルが分かりやすいです。サトシは重量系のポケモンを扱うのが苦手という言説をよく聞きます。これはシンプルにサトシのポケモンの重量系の勝率が低いというだけではなく、シゲルやシンジが重量級を扱うのが得意で相対的に苦手と規定されているともいえます。

バトル以外でもポケモンとの関わり方や育て方などでも同じことがいえます。衝突のイメージが強いですが、お互いに違いを尊重しあう関係性でも起こりえます。
重要なのは相対的にポジションを決定することです。ライバルといえばサトシと向かい合う構図 互いを線で結び座標を決定する関係がライバルなのです。

・ライバルの再登場

ライバルはヒロインと違って元の関係性を保ったまま新シリーズに登場するのが難しいです。現行シリーズには現行のライバルがいて新たな座標を位置付けており、旧ライバルが入り込む隙はありません。どんな立ち位置で再登場するのかはキャラの特性以上に物語の都合によります。

ここからは新無印に再登場したシゲル、シンジ、アラン、グラジオの四人が元シリーズでどのようなライバルとして描かれ、新無印ではどのように活躍したかについておさらいしていきましょう。

〇シゲルについて

・無印でのシゲル

シゲルはカントー~ジョウト編のライバルで、サトシと同じマサラタウン出身でオーキド博士の孫です。カントー編ではサトシを見下していましたが、セキエイリーグの敗退を転機としてジョウトリーグでサトシに敗北してからはお互いのことを認め合うようになりました。

シゲルはサトシの一歩先を行く存在として描かれました。シゲルの存在によってサトシはバッジやゲットしたポケモンの数が不足しているトレーナーとして規定されます。
サトシが一人前のトレーナーになった後、シゲルは研究職につきサトシを「未熟」な存在として規定する位置から退いたのは興味深いですね。

・新無印でのシゲル

新無印では「プロジェクト・ミュウ(以下PM)」のチェイサー候補として準レギュラーの扱いで再登場します。シゲルの新無印での位置づけはなんともう一人の主人公・ゴウのライバルでした。かつてのライバルが別軸のライバルとして登場するというのは新鮮ですね。

無印時代のライバルですが、実は一番ラディカルな再登場をしているのがシゲルです。サトシのライバルという位置づけを降りながら、研究職という異なる座標でゴウのライバルというフレッシュな位置づけを獲得する…。 無印を再構築するという意味で新無印の象徴的なキャラなのではないでしょうか。

〇シンジについて

・DP編でのシンジ

シンジはDP編のライバルでサトシと同じく複数の地方を回っているトレーナーです。シリーズ当初はサトシとのスタンスの違いから衝突を繰り返していましたが、徐々に相手のスタンスを理解してリーグ戦ではお互いの戦法を取り入れたバトルを展開しました。

DP編のシンジは先のライバルの定義の体現者です。

「全ての命は別の命と出会い何かを生み出す」

DP40話「チャンピオン・シロナ登場!」より

シロナがシンオウ神話を引用して表現した二人の関係。シゲル時代と違うのはサトシもシンジも熟達したトレーナーであり、それぞれの考え方に理があること。アニポケにおけるライバルといえば!という認識を作った功績は偉大です。

・新無印でのシンジ

新無印でシンジが再登場したのは 「114:炎の特訓バトル! サトシ対シンジ!!」
マスターズトーナメントの前のオーキド研究所回に組み込まれた特訓回であり、シンジはサトシたちに稽古をつけるコーチ的な役回りを与えられました。

この回でのシンジの立ち回りはAG編で再登場したシゲルに似ています。相互に位置づけを規定しあう関係ではなく、あくまで補助的な立場に退く。ジムリーダーとしての道を歩もうとしていることからもそれが分かります。ライバルがそのままの関係で再登場することの難しさを表していますね。

〇アランについて

・XY編のアラン

アランはXY編のライバルでメガリザードンとともに最強を目指す青年です。「最強メガシンカ」という本編とは別軸のもう一人の主人公の一面も持っています。Z編でサトシと出会ってからは無敗を誇り、リーグ決勝でもサトシゲッコウガを打ち破りました。

アランはこれまでのライバルとは異なり、サトシと明確なスタンスの違いは表面化していませんでした。フレア団編においても明確なスタンスの違いが打ち出さず、すぐにサトシ側につきました 。
対立しないライバル像を生み出したのがアランの功績といえるかもしれません。

・新無印でのアラン

新無印ではマスターズ8の一角として登場。マスターズトーナメントの初戦でランキング1位のダンデと激突しました。
しかし、ダンデとの圧倒的な実力差を示され敗退…。多くは語りませんが大いに荒れましたね…。アラン回については総括で触れます。

〇グラジオについて

・SM編のグラジオ

グラジオはSM編のライバルで、スクール組リーリエの兄です。リーリエと同じく家族再生のために奔走しながら、サトシとは折に触れ共闘したりバトルしていました。最終的にリーグの決勝戦で激突し、サトシがアローラチャンピオンになる契機を作った人物です。

グラジオはサトシの特異性に意識的でした。なぜサトシは伝説のポケモンと親しくなり、UBであるほしぐもを信じることが出来るのか。
「月」のグラジオに「太陽」のサトシ。アニポケ世界における主人公の位置づけというスケールの大きい議論にまで昇華させたのがグラジオの功績です。

・新無印でのグラジオ

新無印でグラジオが再登場したのは以下の回。
111:モーンとリーリエ、雪原の再会
112:凱旋! アローラチャンピオン!!
111話に関してはリーリエと同じく家族再生の自己完結型の物語の主人公で、112話でサトシはアローラチャンピオンとして送り出す元ライバルとしての位置づけでした。

グラジオは主人公を見送るポジションにつきました。グラジオ個人としてのライバルの役割は薄れてしまったかもしれませんが、サトシの主人公性に寄与する役割を全うしたのはグラジオらしいともいえます。サトシに初めてチャンピオンと声をかけたのはグラジオなのですから。

〇総括

・ライバル描写の多様化

今回新無印における再登場ライバルについて考えてみました。ライバルの役割は「主人公の位置を相対的に明らかにすること」と述べましたが、過去シリーズでのライバル達の描写と見比べるとその軸はさらに多様化しているように見えます。

例えばライバル枠をゴウに移したシゲルやサトシを送り出したグラジオは「サトシのライバル」とは異なる役割を与えられています。 シンジは今シリーズではプレイヤーの位置を降りてコーチ的な役割を担いました。ライバルというよりタケシ的なポジションに落ち着いたといえるでしょう。

そしてアランですが、彼の場合ライバルの代わりの位置を用意してもらえなかったのが問題でした。アラン回の最大の失敗は、アランが彼自身の物語にもサトシの物語にも関係しないところで物語が展開され完結してしまったことにあります。

・ヒロインとライバルの差異

要するに「何のために登場したのか」が分かりにくかったのです。 再登場キャラはなぜ登場するのかという物語上の疑念に応えなければなりません。ヒロインであれば空気感を演出するためという曖昧な理由でも受け入れられやすいですが、ライバルは役割が明確にある以上曖昧さを受け入れにくい傾向にあります。

再登場シリーズをヒロイン編から続けてやりましたがキャラクターの役割によってその描かれ方に違いがあるのは面白いところです。 新無印に関してはまだまだ掘り下げられそうなのでまた違うテーマでも語ってみましょう。
それではご清聴ありがとうございました。
(了)

〇追記:もう一つのアンケート

今回もう一つ、本題とは関係ない「あなたが好きなライバル」についてのアンケートをとりました。結果は以下のRTの通りです。

「活躍したか」のアンケートではシゲルが単独一位でしたが、このアンケートではグラフ全体がなだらかになっています。「ライバル」の王道をいくシンジが一位をとったり、独特の立ち位置を守っているグラジオが躍進したりとこちらも面白い結果です。

グラフがなだらかになったということは、ライバルそれぞれにファンがいて親しまれているということです。再登場は難しい問題を孕んでいますが、相応の需要があるということですね。炎上もありますが需要を満たしてくれるだけでも嬉しくありがたいものです。
最後にアニポケスタッフに感謝して終わります。ありがとうございました!

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