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【雑談】最近のポケモンの企画複雑すぎない??

寒すぎて早くもこたつむりになる晩秋の雑談🍁

最近のポケモンは様々な企画を展開している。SV一周年を記念して公開されたオリジナル小説「きみと雨上がりを」(以下「きみ雨」)を中心とするメディアミックス展開は記憶に新しいところ。

他にも「ポケミク」などのコラボ企画も実施中だ。これまで考えられなかったような大掛かりで多方面に渡る企画が展開された2023年であった。

さて、このように様々な企画が展開されるのは一ファンとしては勿論嬉しいし、何より「ポケモン」らしいと思う。ゲーム、マンガ、アニメ、カード…あらゆるところから「ポケモン」に接触できる機会を増やしたことで現在のポケモンのポジションがある。これからも成長を続けるにはこのような企画は積極的に打っていくべきだろう。

ただ、それはそれとして懸念していることがある。それは企画の複雑化だ。企画の内容が難しいというわけではない。企画の構造が多層的で入り組んだものになっているのだ。

本記事では先にも挙げた「きみ雨」「ポケミク」について、企画の構造の複雑さとそれにまつわる問題について確認してみたいと思う。


まず、「きみ雨」について。これは、2022年に発売された「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」を下敷きにした武田綾乃氏によるオリジナル小説だ。視点人物はゲーム内主人公ではなく、ライバルのネモとなっている。

そして、音楽グループのYOASOBIがこの「きみ雨」を下敷きにした楽曲である「Biri-Biri」を公開した。つまりこの企画は「SV」>「きみ雨」>「Biri-Biri」の三層構造になっている。

ここで大事なのは「Biri-Biri」の直接的な原作は「SV」ではなく「きみ雨」ということだ。ポケモン公式Xのポストにおいてもそのことについて言及されている。

「Biri-Biri」という曲/MVを理解するためには「きみ雨」の内容を理解しなくてはならない。SVのイメージソングだと思って聴くと意味不明な部分があったり違和感が生まれてしまう。また、その前提をクリアしたとしても解釈が分かれてしまうこともある。以下の記事はその一例だ。

「Biri-Biri」の歌詞には過去シリーズのタイトルを散りばめたフレーズが存在する。

金銀クリスタル 欲しいのはそんなんじゃないんだ 新人?リーダー? 誰でも構わないや 蒼天の下 エメラルドの海超え 探し出す紅一点

YOASOBI「Biri-Biri」

「Biri-Biri」を「きみ雨」のMVとして観るとき、これらのフレーズが適切か否かで意見が分かれている。人によってはここが一番エモいポイントとなるが、ある人にとってはノイズになるようだ。

個人的にはこれらのフレーズはネモがアンナの宝探しを見守っている様子を表現していると解釈している。フレーズ自体にファンサービス的要素が含まれているのは否定しないが、あくまで「きみ雨」世界を表現するための言葉であってノイズだとは思わない。

分かりやすいところでぽけりんの記事を引用したが、勿論これが世論を的確に表しているということではない。ただ、本企画の複雑さによって発生している混乱は察せるのではないだろうか。

そもそも小説を読むことを前提としている時点でハードルが高く、それを乗り越えても小説と曲の二重の解釈をする必要がある。そしてそれらのレイヤーが重なっていくほどオーディエンス間での認識は一致させにくくなっていく。


続いて「ポケミク」について。ポケミクはポケモンと初音ミクによるコラボ企画である。具体的な企画としては二部構成となっており、前半は「18タイプの初音ミク&相棒ポケモンのイラスト・設定資料」、後半は「18名のボカロPによる、ゲームBGM・SEをサンプリングした楽曲・MV」が公開されるという構成になっている。

前半の「18タイプの初音ミク&相棒ポケモンのイラスト・設定資料」については概ね好評だったように見受けられた。タイプごとに異なるデザインのミクさんと相棒ポケモンがイラストとして発表されるという企画は単純明快で受け入れられやすかったと想像できる。

ただ、後半の「18名のボカロPによる、ゲームBGM・SEをサンプリングした楽曲・MV」についてはオーディエンスで混乱が発生していた。それは前半の企画で登場したミクさんがMVに登場するという誤解もとい期待に由来する。

また、前半の企画で登場したミクさんが登場せずとも18タイプに則った楽曲が発表されると考えていた人達もいる。ポケモンYoutuberのポケソルの企画動画などが好例だ。

改めて「ポケミク」の後半部分の企画説明を読むとこう書かれている。

「18タイプ」の数にちなんだ、18の楽曲・MVを順次公開中!
『ポケットモンスター』のゲームサウンドをサンプリングし、初音ミクが歌う!

ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE 18 Types/Songs
(
https://www.project-voltage.jp/index.html)

すなわち、18タイプに因んでいるのは「数」であって「タイプ」そのものではない。よりツッコんだ解釈をすれば18名のボカロPの「個性」こそが「タイプ」に相当するものと考えればいいのかもしれない。

とはいえ、私自身前半の18タイプのミクが公開されていたときに「このミクさんはMVではどんな歌を歌うんだろう」と想像していた。オーディエンスの思考の導線としてはやはり不自然だったと言わざるをえない。


前述したように、ポケモンは昔からメディアミックスで拡張していったコンテンツだ。アニポケだって今は当たり前のように受け入れられているが、ゲームとは全く異なるシステムで展開されていくことに戸惑った人もいるだろう。

そういう意味でポケモンファンは企画の複雑化には慣れっこ…と言いたいところだが、「きみ雨」と「ポケミク」に関してはオーディエンスの混乱が目立っていた。

私は「きみ雨」「ポケミク」それぞれのコンテンツを高く評価しているし、楽しんでいるオーディエンスの一人だ。ただし、これらの企画の構造の複雑さは手放しに褒められるものではないと考える。

ポケモンは間口が広く、オーディエンスの母数が膨大なコンテンツだ。それ故に企画の満足度はオーディエンス全体の空気感に多分に左右される。「分かりやすさ」は企画における「面白さ」に直結している…というのはポケミクの前半部分で感じたことだ。

オーディエンスのリテラシーを高めていくことも勿論重要だ。私の記事がその一助になればありがたい。制作とオーディエンスが互いに歩みあうことでポケモンは一つのIPからインフラへと「進化」していくと信じている…To Be Continued.




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