見出し画像

【アニポケ雑談】「期待」には応えるもの?裏切るもの?

いつの間にか歳末が近づいていたことに怯える雑談⛄

先日放送されたアニポケHZ 31話にて六英雄のラプラスが登場した。

ポケットモンスター(2023) EP31「白い霧の歌声」

六英雄とは冒険者ルシアスが連れていた手持ちポケモン達のことで伝説的な力を持っているとされる。主人公のリコとロイは現在これらのポケモンを追うことを冒険の目的としている。

このラプラスについて、リコの祖母のダイアナの調べによると「霧の中で迷う船を歌で導き助ける」ポケモンだと伝承されていた。ラプラスといえば人間に友好的なポケモンとして知られており、その伝承はまさにラプラスに「期待」されるイメージに合っていたといえるだろう。

ポケットモンスター(2019) EP143「ラプラスにのって♪」

しかし、31話の後半で伝承とは異なるラプラスの姿が現れる。ラプラスは自ら霧を発生させて船を迷わせ、その隙に仲間に食料を強奪させていたのだ。

ポケットモンスター(2023) EP31「白い霧の歌声」

人間に友好的かと思いきや、敵対するラプラス。体には傷を負っており歴戦の猛者といった雰囲気。これまでアニポケで描かれてきたラプラス像とは大きく隔たりがある。「期待」を裏切られたと感じる人もいたようだ。

裏切ると聞くと大げさに聞こえるが、視聴者が予想(期待)しているものと提供されたコンテンツにズレがあるというのは普遍的な事象だ。今回はこのことについて考えてみよう。


最初に、話を整理して進めるために本記事における「期待」について定義しておく。ここでの「期待」とはコンテンツの受容者であるオーディエンスが「当然そうなると予見していること」を指す。

一般的に「期待」といえば「クリスマスにサンタさんからプレゼントにNintendoSwitchを貰いたい」というようなニュアンスが想定されるが、ここでは「クリスマスにはサンタさんからプレゼントを貰うものだ」というニュアンスに近い。

物語に対する「期待」はオーディエンスによる既知の情報―先入観と言ってもいい―によって構成される。サンタにプレゼントを貰ったことのない子どもはクリスマスに何の「期待」もしないはずだ。

そしてこの期待は大きく二つに区分される。一つは「キャラクター/登場人物に対する期待」で、もう一つは「展開に対する期待」。アニポケに即して見てみよう。

①キャラクター/登場人物に対する期待

キャラクターや登場人物に対する期待とは、あるキャラに対してオーディエンスが既にそのキャラに対して抱いている印象通りに今後も振舞うだろうと予見することを意味する。

過去に人間に友好的に描かれたならば友好的に、食いしん坊なら食いしん坊に、ドジならドジに描かれ続けると「期待」する。長い歴史を持つアニポケでは特定のポケモンに「期待」される役割があった。代表的なのは人を襲うオニスズメやスピアーだ。

ポケットモンスター(1997)EP1「ポケモン!きみにきめた!」

しかし、最近のアニポケではこれらの「期待」を裏切る描写も増えてきた。すなわち敵対的だったオニスズメの友好的な一面が描かれるようになった。これについては後述することにしよう。

ポケットモンスター(2023)EP8「あかずの扉のひみつ」

②展開に対する期待

展開に対する期待とは、主に直前までに展開されてきた筋書を基にオーディエンスにとって合理的な形で物語が展開されると予見することを指す。

サトシ編においては無印~XYに至るまでジムでバッジを8つ集めてその地方のリーグに挑戦するというのが定番だった。なのでどんなことがあってもバッジが取れないという展開は「期待」されない。

ポケットモンスター(1997) EP14「でんげきたいけつ!クチバジム」

ただ、リーグでどこまで勝ち上がるかについてはランダム性があり予想できない面もあった。XYにおいては歴代でも強力な手持ちを揃えていたこともあって未踏の優勝を「期待」する声も大きかったことだろう。…実際はそうならなかったわけだけど。

ポケットモンスターXY EP126「メガジュカイン対ライチュウ! 経験値いただきます!!」

さて、このようなオーディエンスの「期待」に対してコンテンツの提供側は二つの選択を迫られることになる。「期待」に応えるのか、それとも裏切るのか。

「期待」に応える場合、オーディエンスの予見通りにキャラは動き物語は展開するので良くも悪くも無難な仕上がりになることが予想される。オーディエンスの反応もほどほどになるはずだ。

「期待」を裏切る場合、オーディエンスには様々な反応が生まれる。新鮮さを喜ぶ声もあれば、違和感に戸惑う声もあるだろう。あるいはそのギャップをネタとして消費するかもしれない。

世間で話題になるのは往々にして「期待」を裏切った時だ。マスターズトーナメントでのアラン敗退の時の騒動は記憶に新しい。この一件に関しては、ダンデが勝ったという展開ではなくキャラの動かし方や演出がオーディエンスの「期待」を裏切った例だと認識している。

ポケットモンスター(2019) EP115「開幕! マスターズトーナメント!!」

「期待」に応えるのも裏切るのも、どちらが正しくどちらが間違っているということはない。マーケティング的にウケやすい展開はあるかもしれないが、作品批評の世界では関係ない…と信じている。

HZにおいては、オニスズメの例のように今までのオーディエンスの「期待」を裏切ることに躊躇がないようにみえる。そしてそれらの積み重ねが次の「期待」への布石となる。まずは六英雄のラプラスにどんな物語が用意されているのか楽しみに待ちたい…To Be Continued




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?