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1999年4月21日(水)

【AXIS:桑野 詩織・富田 剛】
「あ、詩織ちゃん久しぶりだね」
「中学校通い始めて少しバタバタしてました」
 久しぶりに来店してきた桑野 詩織を見て、富田 剛が声をかけて、詩織はそれに答えた。ここはゲーム&喫茶『AXIS』。夕方過ぎの時間であり、数人の客がゲームを楽しんでいるが、雰囲気的には非常にまったりとしている。妹の桑野 絵梨花は学年が上がったとはいえ、まだ小学生なので今まで同じように学校帰りにここに寄る習慣が続いている。ただ、詩織は中学生になったので、しばらくは来店をしていなかったのだ。ちなみに絵梨花はいつものように子供コーナーに置いてある机で宿題をしているようである。
「だいぶん落ち着いたからまた帰り寄ることにします」
 こう言って詩織は笑顔を浮かべる。それにしても先月まで小学生だと思っていたが、中学校の制服を着るだけで中学生に見えるところが制服マジックである。
「部活とかは入らなかったの?」
 中学生の帰宅時間に影響するのは部活ぐらいであろうと安易に考えている富田の質問に、桑野は笑顔で返事を返す。
「運動系は悩んだ末にやめました。一応放送部に入りましたけど、そんなに忙しくはないみたいです」
 こう話しながら先程受け取ったお茶缶を開けて飲み始める。今までのように帰りにここに寄って妹と一緒に帰るのであれば、あまり帰りが遅くならないほうが良い。体育系の部活などは帰りが遅くなるかもと思い、少し心配したのである。
「それならあまり遅くならなくて大丈夫だね。これからもよろしくね」
 こう言って富田は何をするのかはわからないが、業務をするために奥の方へ移動していく。そして詩織は飲み終えたお茶缶をゴミ箱に捨てて、絵梨花のいる子供コーナーへと向かうのであった。

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