《合格発表ってドキドキしますよね。でももう実際合格発表を体験することはないかな》
【冒険者組織本館：有村　藤花・富田　水無・澤口　恭平】
「ふむ、合格してる」
「藤花ちゃん合格おめー」
　冒険者組織入り口前に設置されている大型掲示板に記載されている番号を眺めながら有村　藤花が発した言葉を聞いて、富田　水無は大声で祝福の言葉を述べ、有村　藤花に抱きついた。本日は冒険者組織70期1次試験の合格発表日であり、午前中大学の講義だった有村は講義後に黒髪方面へと移動し、冒険者組織本館にやってきたのである。また、富田は午前中第1迷宮地下3階を探索しており、探索終了後、部隊のメンバーとは分かれて、有村の到着を待っていたのだ。そして、一緒に大型掲示板を確認し、合格を喜び合ったのである。ちなみに合格発表はここの大型掲示板だけではなく、ホームページなどでも確認できるので、わざわざここまで来る必要はない。だが今回は富田の希望として、どうしても一緒に合格発表を見たいというのと、もし合格していたら『AXIS』でお昼ご飯を奢ると決めていたのである。ちなみに有村は富田の家には何度か泊まりに来ているので『AXIS』にも行ったことがあるし、富田の家族とも周知となっている。ひとしきり富田の感動が収まった後で、『AXIS』に向けて移動を開始しようとする。すると聞いたことある声が遠くから聞こえてきた。
「あ、有村さんと富田さんだー」
　この声を聞いて有村は大きくため息を付き、富田は声のする方向に視線を向ける。するとこちらに向かって走ってくる澤口　恭平の姿が見えた。
「有村さんも合格発表見に来てたんですねー。奇遇だなー。嬉しいなー」
　何やら興奮気味に言葉を続けているが、有村は何とも言えない表情を浮かべている。
「えっと、それで澤口くんは一次試験合格してるの？」
　自分にはあまり関係はないが、気になったことを富田が質問する。
「あ、見てきます。ちょっと待っててくださいねー」
　こう叫びながら澤口は掲示板の方向に走り出し、しばらく掲示板を眺めた後、またこちらの方向へと走ってきた。
「大丈夫でしたー」
　こう話しながらサムズアップをした澤口に富田はサムズアップを返したが、有村は相変わらず微妙な表情を浮かべたままである。この後、澤口も一緒に『AXIS』へと移動し、3人で一緒に食事を食べ、富田は有村の分だけではなく、澤口の食事代も合格祝いとして払ってあげたのである。