見出し画像

2024年4月13日(土)《GB》

《昔は良く夢を見てたなあ。高校で体操服忘れる夢と大学卒業出来ない夢は鉄板。楽しい夢は皆無》
【有村邸:有村 藤花】
「うーん、朝か」
 ベッドの近くにある窓から入ってくる太陽の日差しを感じて、有村 藤花は目を覚ました。本日は土曜日であり、特に予定もないので早く起きる必要はなかったが、目が覚めた時に起きた方が寝起きが良いということを経験的に感じている。
「良し」
 ベッドから起き上がり、いつものようにパソコンの電源を入れる。そして部屋の電気をつけようと思ったが、本日は天気が良く、部屋の中は太陽の光で十分明るくなっており、その必要はないみたいである。次にコーヒーメーカーをセットして、その後洗面所に向かう。そして洗顔などいろいろと朝の流れを一通り終わらせる。そのタイミングでちょうどコーヒーも出来たようなので、コーヒーをお好みのコーヒーカップに注いでパソコンの前に座った。
「さて」
 大きく息を吐いて今まで見ていた夢の内容を思い出し、そしてそれをパソコンに記録していく。この作業は小さい頃からの有村の毎日の習慣である。実は有村は夢見の能力を持つ一族であり、その能力を受け継いでいるらしい。ただ、本来の夢見は小学生ぐらいまでは毎日夢を見て、その夢の中のほんの一部に予知夢が含まれる。そして中学生ぐらいになると夢を見る頻度が減り、それが高校、大学となるにつれ、あまり夢を見なくなっていく。ただそれ故に見てしまった夢はかなりの確率で予知夢であるということになるのだ。実際、夢見である有村の母親は現在ほとんど夢を見ることがない。だがもし夢を見てしまった場合はその内容はほぼほぼ実現してしまうので、夢を見た際は見たことを然るべき組織に必ず報告することになっている。ただ、有村はもう大学2回生になるが、今だに毎日夢を見ている。もちろんその中には予知夢も含まれるのであろうが、分母が大きい分確率はかなり低い。そこで、今の段階では夢を見た内容を逐一報告しないといけないことはないのだが、一応見た夢の内容は保存しておくように言われているのである。ただ、見る夢の中でもそれが現実になる可能性が高い感覚を覚える時がある。今までも実際に現実になると思った夢が現実になったことが何度かあるのだ。それが今回冒険者に申し込んだ理由であるのだが、そのことは有村以外の誰も知らないことである。
「今日の夢はつまらなかったな」
 特に面白いことも起きなかった夢の内容をパソコンに書き終えて、有村はコーヒーを一口流し込んだ後、ため息ながらに言葉を漏らしたのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?