【ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム】
2023年7月プレイ開始
総プレイ時間:120時間
【ストーリー】
★★★★★ 5
前作にて厄災ガノンを討伐してから数年後、リンクとゼルダは地下から突如発生した謎の「瘴気」の原因を探るために遺跡を訪れていた。
しかし、そこで封印されていた魔王が覚醒し、リンクはマスターソードを失い、ゼルダは謎の光と共に過去の時代へと飛ばされてしまう。
目覚めたリンクが降り立った場所は空に浮かんだ島であり、魔王の攻撃によって瘴気に蝕まれた右腕には謎の右腕が装着されていた。
腕の主である初代ハイラル国王・ラウルに導かれながら、リンクは行方不明になったゼルダとマスターソードの捜索と、ハイラルに迫る危機から世界を救う冒険へと旅立つことになる。
前作同様、メインストーリー自体は非常にわかりやすく王道的である。
そして、それらはプレイヤーの好きなタイミングで自由に進行可能な点も同様だ。
また、本作にはゾナウ文明というかつて栄えた文明の痕跡が世界中に残っており、それらの解析によって世界観の輪郭が明確になってくるため、ゲームへの没入度は前作をも凌駕していた。
【ゲームシステム】
★★★★★ 5
前作『ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイしている人間であれば、ゲームシステムの完成度の高さは既知の事実であるはずだ。
しかし、恐ろしいことに本作は前作よりも更なる進化を遂げていることを認めなければならない。
前作との大きな変更点は、リモコンバクダンやビタロックといったシーカーストーンに備わっていた能力が削除され、代わりにラウルから授けられた腕の能力に置き換わった点だろう。
本作ではこの腕の能力によって、「クラフト」・「スクラップ」・「ビルド」・「巻き戻し」といった、前作とは一味違う様々なアクションが行えるようになった。
乗り物を作ったり、武器に素材を装着して強化したりと、組み合わせのパターンや遊び方はもはや無限大である。
これらの要素は、各地に点在する祠にて行う謎解きにも活用することを求められるため、プレイヤーの閃きや想像力を試される形になる。
だが、難易度は高過ぎず低過ぎずといった塩梅で、柔軟な発想と直感的な思考を駆使すれば必ず突破できるように工夫されている。
そして、前作でのマップは地上のハイラル全土のみであったが、本作には加えて「空に浮かぶ島々」と「瘴気の蔓延する地下」が新たに追加された。
どちらも地上のマップに引けを取らないほど広大に作り込まれており、前作をプレイしたユーザーにとっても未踏の地なため新鮮な気持ちで遊ぶことが可能だ。
また、全体的に難易度が向上している点にも注目したい。
前作のプレイを想定しているためか、敵の攻撃力は体感的に上昇しており、油断していると雑魚敵に一発ぶん殴られただけで力尽きてしまうことが多々あった。
これは装備を強化することで対応できるようになるため、装備を強くするという工程が前作以上に増している。
前作では敵のバリュエーションの少なさも相まって、敵のステータスが終盤では頭打ちになってしまい、戦闘面においてマンネリを感じることが多々あった。
しかし、敵の強化と新たな敵の追加によってこの問題を解消しており、序盤から終盤まで緊張感を持って冒険を楽しめた。
先述した「地下」のマップもかなり極悪な仕様になっている。
「地下」には見るからに毒々しい瘴気が蔓延しており、これに長く触れ続けていると体力の最大値が次々と減っていってしまうわけだが、実はこのデバフを完全に防ぎ切ることは出来ない。
また、一旦受けてしまったデバフは特定の行動でしか回復できないため、身長かつ丁寧な探索を心掛ける必要がある。
元々前作の時点で少なかった不満点に関しても、本作では軒並み対応しており、進んで粗を探すような真似でもしない限り、これといった不満点はプレイ中に見受けれなかった。
新たに生まれ変わったゼルダシリーズが一体どこまで進化を遂げていくのかもはや予測不能である。
【キャラクター】
★★★★★ 5
舞台がほぼ前作と同じなため続投されるキャラクターが多いので、詳細には触れないでおきたい。
しかし、前作ではまだまだ未熟だったキャラクターたちが、リンクとの戦いを通じて成長する姿には心奪われることだろう。
また、前作ではほとんど空気と化していたゼルダ姫に対して、本作はかなりフォーカスを当てており、彼女の心情が物語に大きく影響してくる点も特徴的だ。
【音楽】
★★★★★ 5
前作の主張の少ない環境音楽テイストのBGMは本作にも引き継がれている。
しかし、それはあくまでフィールド上での話であり、本作の大きな魅力のひとつになっているのが、ムービーシーンやボス戦のBGMである。
楽器の音量を極力そぎ落としたフィールドテーマとは打って変わり、こちらはオーケストラサウンドやクワイアを極限まで引き出した壮大で勇ましい音色で心を揺さぶってくる。
過去作のボスのテーマのアレンジなども使われており、ファンサービスを欠かさない姿勢も流石だ。
特にトレーラー映像でも流れたメインテーマは圧巻の一言であり、映像と掛け合わさった際の破壊力は計り知れない。
【総評】
99.9点
世の中には「最高傑作」という言葉がある。
それは、アーティストやクリエイターにとって最大の賛辞であると共に、越えられない大きな壁を作ってしまう、実はとても危うい一言なのかもしれない。
何故なら、グランジロックバンド『ニルヴァーナ』のフロントマンであるカート・コバーンや歌手・尾崎豊といった才能ある人物たちが、実質この言葉によって苦しめられ、最終的には自らの命を絶っているからだ。
本作発表時、多くのプレイヤーが期待に胸を膨らませると同時に”こう”思ったことだろう。
『ブレス オブ ザ ワイルド』を越えられるのか? と。
上作品はゼルダ史上――いや、ゲーム史上において最高傑作と謳われることも少なくない作品である。
延期が発表されたことから見て、任天堂にとって本作の開発は大きなプレッシャーであったことは想像に難くない。
単刀直入に述べると、僕は本作は前作を越えてはいないと思う。
と言うよりも、どう表現していいのかわからないのだ。
最高傑作に次ぐ最高傑作が現れた際、その作品の存在を一体どんな言葉で言い表せばいい?
もしかしたら僕は、”どっちが傑作か?”なんて、難しく考え過ぎているのかもしれない。
だって僕は、どっちの作品も大好きだから。
そして、これから配信されるであろうDLCが今か今かと待ち遠しい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?