歯磨き粉。
朝の話。
赤信号の横断歩道の向こうに、ジャージ姿の高校生男子がいた。大きなリュックから1.5ℓのペットボトルを取り出し、口のみでガブガブ水を飲んでいた。「たぶんサッカー部やな⚽️」と微笑ましく見てた。
彼の目線は横断歩道のさらに先の方。身体を道路に半分はみ出させながら遠くを見てる。
きっと迎えの車かバスを待っている。
気が付かれずに通り過ぎてしまわないように「オレはここやで!」と手は振らないまでも存在アピール。
かわいいなあ。
小学生と同じ行動様式や、と見てると。
ややや!口の横に白いかたまり。
何やあれは?
信号が変わって近づいてもわからず、じっと見るのも憚られるので、そのまま通り過ぎる。
そして、2、3歩ほど歩いたところでわかった。
歯磨き粉や!
口元を指して「ついてるで!」と教えてあげようと思って踵を返した。チームメイトの乗ったバスが着いたら恥ずかしい思いをするだろう。
でも、男の子の背中のすぐ後ろで立ち止まる。
待てよ、歯磨き粉ついてる方がおもろいやん。
犬だったら確実にしっほをブルンブルンふりまわすほど、みんなの乗ったバスが待ち遠しい男の子。バスが到着して扉が開いたら、きっと勢いよく乗り込んで、「こーへんかと思って焦ったわー」とかなんとか、待ち侘びてた態度の照れ隠しで大声で言うに違いない。
そして仲間に突っ込まれるのだ。
ん?
おまえ、なに顔につけてんねん!
え?
それや、その白いやつ!
え?
(手でぬぐう)
(匂いを嗅ぐ)
あ、歯磨き粉や!
おまえアホかー!!!爆笑!
バスの中は大盛り上がり。
きっと今日の試合もテンションMAXで大勝利や!
…という絵が浮かんだので、また、踵を返し、声はかけずに会社に向かった。
妄想以外の何物でもないけど、結構いい線いってる気がする。
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