見出し画像

「WOMAN Next 国際女性デーin ぐんま2023」キックオフインタビュー                                   石井食品社長(千葉・船橋市)石井智康さん  

 上毛新聞社は、女性活躍推進に取り組む企業・団体を応援するキャンペーン「WOMAN Next 国際女性デーinぐんま2023」を実施する。キャンペーンの第1弾として、石井食品(千葉県船橋市)の石井智康社長のインタビューを紹介する。社長就任2年目で約1カ月の育休を取得した石井社長は現在、シングルファーザーとして家事・育児もこなし、社内で男性の育休や長期休暇の取得などを積極的に推進している。同社の働き方改革に対する思いを聞いた。
(以下は2022年10月25日付上毛新聞に掲載されたインタビューの転載です)

上毛新聞 2022年10月25日掲載 

 石井社長は2017年、祖父の毅一さんが創業した石井食品に入社した。18年には社長に就任。私生活では14年に結婚し、長女を授かった。しかし昨年、妻が病気で他界。育児と家事も担うことになった。
 長女は3歳になったばかり。保育園の送迎や食事の支度、入浴、寝かしつけなどに追われる日々を送っている。「家事はやってもやっても終わらない。優秀な家電に頼りながら、なんとか週末まで持ちこたえている」と苦笑いを浮かべる。
 自宅は本社から車で1時間以上離れた閑静な地域にある。出勤は週に2日ほど、それ以外は自宅でリモートワークというスタイルで働く。仕事の都合で保育園の迎えに間に合わない時は、親族や友人らに頼む。「助けてくれる人がいる環境は本当にありがたい」と周囲のサポートに感謝する。

男性の育休 社長が率先 

 娘が生まれ、約1カ月間の育休を取得した。男性育休の取得は社内で2人目。「前職のIT業界では、男性も育休を取るのが当たり前だった。だから育休を取れない理由はないと思っていた」と振り返る。ただ、前職と食品業界では「文化的な違い」があるとして、育休に向けた準備や、社員への説明に努めた。
 取得に当たっては、多くの女性社員が応援してくれたという。「当社の社員は女性が約6割。これは営業部長として会社を支え、食品業界で女性営業職の活躍を後押しした祖母の影響が大きい」と話す。
 男性育休を足掛かりに、長期休暇の取得推進にも力を入れる。同社の経営計画では、1年間で連続1週間の取得を義務、2週間を推奨としている。休養やレジャーに充ててもらうためのものだが、家族の介護や自身の病気で急に働けなくなった場合のフォローも想定している。改正育児・介護休業法で10月に「産後パパ育休(男性版産休)」が創設されたことを受け、「せっかく義務化されたのなら、形だけ守るよりも本質的な成果にして組織を良くしていくほうが仕組みとして正しいはず。男性育休は、若い男性だけの問題ではない」と強調する。

長女を抱きながら会議に参加する石井社長

属人化解消で 長期休暇取得

 現在、長期休暇はほぼ全部署で6割超の社員が取得しており、365日稼働の物流部門も今期は6割を達成できる見込みという。さらに推進するには、業務内容が特定の人しか分からない状態を指す「属人化」の解消が課題だ。「その人しかできない仕事があるために休めないのは、経営上のリスク。急なけがや病気で連絡が取れなくなれば、会社がピンチに陥る」と指摘する。
 そこで同社が取り入れたのが「スキルマップ表」の活用だ。横軸にメンバーの名前、縦軸に業務と必要なスキルを記し、メンバー自身が丸や三角を付ける。すると誰が何をできるかが可視化され、業務の偏りや課題が明確になる。部署の運営方針に生かせるだけでなく、リーダーシップ育成につながるメリットもある。「長期休暇の取得と属人化の解消はセットで取り組むこと。業務の分配が進めば、おのずと休暇を取りやすい環境になっていく」と期待する。
 働き方改革を進める上で、残業時間の削減にも目を向ける。「組織も人も、短い時間で高い成果を出すことにシフトした方がいい。プライベートが充実すれば仕事への意欲も高まり、誰もが幸せになれる」と力を込める。それでも生産性を維持できなければ、「自分なら減産体制を取るなど、会社の目標値のほうを修正する」との姿勢だ。

理想の環境追求を継続

 働き手が減少していく時代において、「長く働きたいと思える職場づくり」を経営課題に掲げる。男性育休や復職後のキャリア形成、時間にとらわれない働き方、介護や病気の問題など、あらゆる面でチャレンジが求められている。「試行錯誤を繰り返すことで、新しいビジネスが生まれることもある。経営層は理想の環境に進む意思を発信し続けること、従業員は自分事として取り組むことが大事。一人一人が当事者意識を持って乗り越えてほしい」

【略歴】 いしい・ともやす 1981年生まれ、千葉県船橋市出身。2006年にアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現アクセンチュア)に入社。14年からフリーランスのエンジニアとしてベンチャー企業を中心に新規事業のソフトウエア開発などを行う。17年に石井食品に入社し、18年に社長就任。19年には育休を約1カ月間取得した。スーパーダディアワード2020受賞。


WOMAN Next 国際女性デーinぐんま 2023 協賛社


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?