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《WOMAN Next 国際女性デーinぐんま タレント・ryuchellさんトークショー》

 3月8日は、女性の生き方を考える「国際女性デー」。上毛新聞社は女性の活躍を推進する企業・団体を応援するキャンペーン「WOMAN Next 国際女性デーinぐんま2022」を展開してきた。

 今回は、家事や育児、自分らしさについて考えるきっかけにしてもらおうと、協賛社を対象にしたトークショーを開催した。育児や多様性についての発言が注目を集めているタレントのryuchell(りゅうちぇる)さん(26)が登壇。自身のルーツや仕事、生活について赤裸々に語り、「相手に期待しない」「心に余白をつくる」など独自の考えや処世術を紹介した。

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(以下は3月8日付上毛新聞に掲載されたインタビューの転載です)

オンリーワン知ってもらえた

 5人兄弟の末っ子で、姉が3人。姉たちの華やかな服や着せ替え人形が身近にある環境で育ち、自然とファッションが好きになった。
 高校卒業後に上京して、読者モデルをしながら原宿のアパレルで働いた。ヘアバンドをしたファッションが注目されてテレビに出始めたのもその頃。自分を派手だとも個性的だとも思ったことはないのに、一般的な感覚とのずれを感じた。
 そのうちに「ジェンダーレス男子」と言われるようになって。「一人一人違うのに、どうしてひとくくりにするんだろう。カテゴライズしたほうがはやりやすいのかな」ともやもやした。でも諦めずに好きなファッションを続けていくうちに、枠組みから外れて「オンリーワンのりゅうちぇる」を知ってもらえるようになった。
 メークを始めたのは、コンプレックスを隠すため。個性的な人が一般社会で浮いてしまい、からかわれることがあるように、僕も人と違うことで悩んだ。でも社会で成功している人は、やったことがないことをしている人や、何かに秀でている人。人と違うから抜きんでることができる。そう思ったらコンプレックスも愛せるようになった。
 人は汚いところに目が行きがちだけど、それはほんの一部で、他にもっとすてきなところがある。社会のルールやマナーはもちろん大切。でも世間を気にしたところで、世間は自分に何もしてくれない。だから自分らしくいよう、と強く思うようになった。

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幸せも苦労もシェアしよう

 長男は3歳。活発でかわいくて、頑張る活力になっている。今日も朝食を作って、リモート授業の準備をしてきた。妻のpeco(ぺこ)とは家事・育児の役割分担はせず、気付いたほうがやる。お互い幸せをシェアしているんだから、大変なこともシェアしようというスタンスで自然と生活が回っている。「女だから我慢する」「男だからできない」なんてことは一つもなくて、人と人として子どもと向き合っている。
 子どもが生まれて思うのは「愛だけじゃ子育ては難しい」。かわいがったりスキンシップを取ったりするだけじゃだめ。成長に合わせた言葉遣いや接し方が必要と思い、育児セラピストと食育インストラクターの資格を取った。不安はたくさんあるけど、知識があれば心に余裕ができる。たとえばイヤイヤ期も成長段階の一つと捉え、余裕を持って接することができた。
 両親の影響もある。両親は僕が3歳の時に離婚して、週に何日かは父親の家で過ごしていた。だから当たり前に家事や育児をする父親の姿を見ていたことが今に生きている。親にされたことは、いい意味でも悪い意味でも巡ってくる。一般的に見れば、きれいな家族の形ではなかったかもしれないけど、得られたものは大きい。

思いやりを持ち接したい

 夫婦でいると、お互いむかつくこともあるし、傷つくようなことも言いたくなる。「ちゃんとやってよ」「見て分かんないの?」とか。その関係を紙に例えれば、言う度にしわくちゃになっていく感じ。謝れば許されるかもしれない。でも、言われたことはずっと覚えている。紙のしわくちゃが完全に戻らないのと同じで、傷は残る。どんなに近い関係でも、絶対に言っちゃいけない言葉は言わないようにしよう、思いやりを持って接しようと心掛けている。
 疲れていて、会話も煩わしい時があると思う。でも言わないと分からない。相手に期待しない。期待するからいらいらする。もともと他人同士。育った環境が違うのだから、たくさんぶつかり合って、違う形だったものの角が取れて丸になっていくイメージをしてほしい。「どうしてやってくれないの?」ではなく、「こうしてくれると助かる」という風に、言葉遣いにも気を付けて。その作業ができてようやく、運命の人同士になるんだと思う。

頑張り過ぎず心に余白を

 息子が成長する中で、ジェンダーに関する気付きが増えた。トイレは男が青で女は赤、人形のCMには女の子しか出ない、といった植え付けが潜んでいる。そうした違和感を子どもに伝えようと、最近は絵本を活用している。プリンセスの話を例に「なんで女の子から告白しないんだろうね」「パンツスタイルも似合うのにね」などと話し掛けている。意見を押し付けず、自分で考えるよう促している。
 これから学校や社会に出ていく中で、いろいろな壁にぶつかると思う。親としては、子どもが悲しい思いをしないよう守りたくなる。でも個人的には、失敗を経験した人の方がすてきになっていく印象がある。だから失敗もたくさんしてほしい。
 大変な思いをした時に再び立ち上がるためには、自分を愛せているかどうかという自己肯定感が大事。親ができるのは「自分は無条件に愛される人間」だとしっかり伝えること。特に日本人は言葉にするのが苦手だけれど、僕は「あなたがおなかの中にいるって分かった時、すごくうれしかったんだよ」と毎日伝えるようにしている。
 子育て世代は「親はこうあるべき」と自分の中で決まり事を作って、頑張り過ぎている。もっと自分の時間を大切にして、心に余白をつくってほしい。遊びに行ったり、買い物をしたり、ただ休んだり。人と関わらないのもいい。余裕があれば、次への活力につながる。親が楽しいと、子どもも楽しくなる。趣味やオフになれることを、いま一度考えてみてほしい。

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時には自分を甘やかして

 SNS(会員制交流サイト)での発信や仕事をする上で大切にしているのは、その人の背景に寄り添うこと。嫌みを言われたとしても「どんな気持ちで仕事をしているのかな」「どんな環境で育ったのかな」などと考えてみる。すると、発言の本当の意味が分かり、いろいろなゴールが見えてくる。自分の物差しだけで考えるのは非現実的。みんなに好かれることはないけど、大勢の人が好きでいてくれている。そう思うだけで頑張れる。
 多様性が叫ばれる時代になって、「こういう生き方は古い」「考えを変えていかないと」といった表現があふれているけど、そうした批判的な意見こそ多様性に反していると思う。本当の多様性は、古いといわれる意見やスタンスも認めることから始まる。簡単なことではないけれど、年代や性別、国籍、宗教、その人にとって幸せな生き方に寄り添えた時、みんなが活躍できる社会になっていく。
 SNSでは、テレビでは見せないような等身大の自分を発信して、多くの人から共感のコメントをもらっている。みんなとつながれる場所として、相談に乗ることもある。でも「大丈夫だよ、頑張って」のような聞こえのいい言葉は言わない。「本垢」(メインとなるアカウント)で相談してくれる人もいる。僕も裸で向き合い、育った環境や、これまでの失敗、後悔、恋愛などいろいろな経験を踏まえ、じっくり考えてみんなの気持ちに寄り添っている。
 生きているといろいろなことがある。壁を乗り越えても、次はもっと高い壁が立ちはだかっていて、神様って意地悪だなと思う。でも生きてさえいれば、いいことはきっとある。限界が来たら、立ち止まればいい。逃げてもいいし、戦わなくてもいい。みんな頑張っている分、逃げ道をつくることも大事。素直にいられるよう、時には自分を甘やかしてほしい。自分しか、自分を守れないのだから。

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【プロフィール】ryuchell 1995年、沖縄県生まれ。個性的なファッションとキャラクターで注目を集め、バラエティー番組などに多数出演。2016年12月にモデルでタレントのpecoと結婚し、18年に長男が誕生。育児セラピストの資格を取得したほか、NHK高校講座「家庭総合」のMCを務めるなど活躍の場を広げている。

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(2022年3月8日付上毛新聞掲載「WOMAN Next」特集紙面を転載しています)

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