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政府目標「202030」達成遠い“後進県”

 性別にかかわらず、誰もがあらゆる分野へ参画する機会が保障される社会に―。男女共同参画社会基本法の制定(1999年)から20年以上が経過したが、いまだに多くの分野で女性の参画が遅れている。

 政府が2003年に掲げた「20年までに、指導的地位に占める女性の割合を30%程度」との目標は達成には程遠く、先送りされた。群馬県は各分野への女性登用に関する指標で全国下位が目立ち、“後進県”の様相だ。固定的な性別役割意識や男性中心の慣例など越えるべきハードルは多い。

 女性の自治会長0.8%「全国最下位」

 地域のリーダーとして、住みやすい街づくりや問題解決に取り組む自治会長。群馬県内の自治会長2429人のうち女性はわずか19人、割合は0.8%(昨年4月現在)で、9年連続で全国最下位となった。

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 本県特有の事情があるのだろうか。
 自治会長経験者の女性2人の話や県民意識調査の結果から、男女双方が抵抗感をなくすことの重要性が浮かび上がる。

 桐生市広沢町の諸井佐恵子さん(54)はフルタイムのパートとして働きながら、広沢町6丁目町会長(自治会長)と連合組織である市第13区の区長代理を務める。
 女性初の市PTA連絡協議会長を務めたのをきっかけに2016年、49歳の時に区長代理の就任を打診された。役員は定年退職後の男性が就任するのが慣例だったため戸惑ったが、「これからは男女共同参画の時代。力を貸してほしい」と依頼されて引き受けた。18年から町会長を兼務する。 

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現役の自治会長として「難しいことだと考えずに、多くの女性に経験してほしい」と話す諸井さん 

 町会長の業務は環境美化や防犯活動、役員会議、主催行事の運営など多岐にわたる。諸井さんは就任後、地元婦人会と連携してお茶のみサロンを企画。市の広報配布などを担う町務委員は女性が増え、10人中4人を占めるという相乗効果もあった。

 自治会役員は、自治会内部で候補者を挙げたり、当番・輪番制で選出するケースが多い。諸井さんが町会長を引き受けた際は「候補だった男性の体調不良により急きょ頼まれた」といい、県内で女性自治会長が少ない理由について「そもそも女性の名前が挙がらないのではないか」と推測する。

女性も地域社会で「手を挙げよう」

 前橋市五代町の小沢晴美さん(70)は19年まで6年にわたり、端気町自治会長(2年)を含む自治会役員を務めた。就任を打診された夫が体調を崩したため、小沢さんが引き受ける旨を伝えたところ、高齢男性から「女じゃなあ」と否定的な反応をされたという。

 陸上自衛官として定年まで勤め、男女が一緒に働く環境が当たり前だった小沢さんは「女のどこが悪いんですか」と反論。就任後は途絶えていた地元の夏祭りを復活させるなど地域おこしに奔走し、否定的な発言をした男性からも「よくやっている」と励まされたという。

 小沢さんは「群馬はかかあ天下と言われる割に、積極的に前に出たがらない女性が多いと感じる。ぜひ自分から手を挙げてほしい」と呼び掛け、「PTAや子ども育成会など、地域の団体で活動歴のある女性はたくさんいる。そういう人たちに自治会役員に入ってもらえれば活性化されるのではないか」と語った。

 男女ともに「抵抗感」をなくす

 群馬県が19年度に実施した県民意識調査で、女性が地域活動のリーダーになるために何が必要かを尋ねたところ(複数回答可)、「男性の抵抗感をなくす」(43・1%)、「女性自身の抵抗感をなくす」(32・7%)の順に回答が多かった。
 地域社会学を研究する坂本祐子・群馬パース大非常勤講師は「女性自治会長が増えれば、住民の半数を占める女性の意見が地域に反映される」と強調。「男性が就くのが当たり前になってしまい、問題にすら思っていない地域が多いのではないか。すぐに意識を変えるのは難しい。男女交互に選出するなどルールの見直しが必要だ」とした。

 市町村審議会の女性委員の登用。現状は?

 自治会長の少なさと同様、県内35市町村が法律に基づいて設置する審議会などの女性登用も低迷している。女性委員の割合は21.6%(2020年)と全国最下位で、県の審議会の女性割合(33.9%、全国17位)との開きが目立つ。

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 内閣府の調査によると、市町村別では人口の少ない西北毛の町村で割合が特に低い傾向が見られた。最も低い中之条町(9・1%)は、調査対象となる25審議会のうち、10審議会で女性ゼロだった。同町は男女共同参画に関する計画を策定していない自治体の一つであり、担当者は「今後、各団体に働き掛けて女性委員を増やしていきたい」と話す。

 一方、最も高い大泉町(32・8%)は35%を目標に掲げて取り組んでおり、女性が7割を超える審議会もあるという。県人権男女共同参画室は「審議会の委員は各団体の長が就任するケースが多く、『町村では適任の女性が見つからない』という話も聞く。目標値を定めればそれに向けて進められるのではないか」としている。

 他県では、一定数の女性を割り当てる「クオータ制」を導入した自治体もある。栃木県日光市は、各審議会で一方の性が40%を下回らないように定め(努力目標)、昨年4月現在で女性が36・6%を占めた。同県内で最も割合が高い小山市(38・4%)は、市全体で40%を目指すという目標を設定。女性割合の低い審議会については、改選時の上昇を働き掛けている。

(2021年2月8日付上毛新聞『探る 考える 女性参画の現在地』より転載)



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