大草さん

『キャリアのピークは内面は年齢を重ねるほど美しく、オシャレのスキルも積み重なっていく60代で持ってくる』大人気スタイリスト 大草直子さん

JJや多数のファッション雑誌を始め、商品プロデュース。ファッションを軸に、多岐に渡るお仕事をこなされている大人気スタイリスト 大草直子さん。

5年単位で考えるという大草さんは、入社してから5年が経った27歳のタイミングで、ダンスのために会社を辞めたそう。比較することなく、自分のペースでその時々の選択をするマインドまでたっぷり伺いました!

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大草直子さん(写真中央)

大草直子さん1972年生まれ、東京都出身。大学卒業後、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わったのち、独立。多くの雑誌やカタログのスタイリング・編集、ブランドや広告のディレクションを手掛け、現在はウェブマガジン『mi-mollet』のコンセプトディレクターを務める。ベネズエラ人の夫を持ち、大1、中2、小4の3人の子どもの母。

「ファッションが好きだったことも相まって、シナプスが繋がったのが雑誌編集者という仕事」

WI吉岡:大草さんご自身の中で、未だに刻まれている学生時代のご経験はありますか?

大草さん:高校時代は、自ら希望して行ったアメリカ留学が1番印象に残っています。そこでは肌の色や瞳の色、家庭環境を含めたバックグラウンド、国籍、考え方など、人間の多様性を学びました。それが今に生きているし、心の目まで開いた気がします。

大学では団体スポーツがやりたかったので、ラクロス部に所属していました。チームで雑誌を作るということと大学時代の経験に、共通点を感じることもありました。

WI大山:スタイリストというお仕事の入り口のような編集者やファッションの仕事に、興味を持ったきっかけを教えて頂きたいです!大学時代のラクロス部での経験が大きいですか?

大草さん:新聞記者やアナウンサーなど選択肢は沢山ありましたが、ファッションが好きだったことも相まって、シナプスが繋がったのが雑誌編集者という仕事でした。私は1人1人が、キャリアを通しての使命を持っていると考えています。そんな私の使命は、沢山持っている情報を人に伝えること。

若い時だけキャリアを伸ばせるのではなく、やった年月の分だけ実績として残る、長く働ける仕事がしたいという想いもあっての選択だったように思います。生きていくにあたって最重要なこと。

例えば「食べることや育児を第1にする中で人生が少しでも楽に、そして豊かになるのであれば、そのツールとしての”オシャレ”ってアリだよね」ということを伝えたい。私の本を読んだ方から「オシャレをすることが楽になりました」「生きることが楽になりました」と言って頂けることが1番嬉しいです。

原:他メディアの記事を拝見し、ダンスのために会社を辞めたと書かれていたのですが、その選択に迷いはなかったのでしょうか?

大草さん:結構苦労して入った会社だったのですが、迷いはありませんでした。私は5年単位でモノを考える癖があるんです。会社に入って5年目を迎えた時に、次の5年の自分を考えた先に、会社にいる自分を想像できなかったですし、仕事とダンスを天秤にかけたたら断然ダンスの方が重要でした。

沢木耕太郎さんが書かれた「深夜特急」に『人は27歳で、今まで作ってきた価値観を1度壊したくなる』という一節があるのですが、「これ、私のことじゃない?」と思ったのを覚えています(笑)

『キャリアのピークは内面は年齢を重ねるほど美しく、オシャレのスキルも積み重なっていく60代で持ってくる』

WI新井:努力の上に築かれた大草さんのキャリアに憧れる人も多いと思います。高校生の私が、将来を考えるにあたって意識しておいた方がいいことや、やっておくべきことはありますか?

大草さん:キャリアを決める時は、なるべく一生続けられて、ピークを人生の後半に持ってくることのできる仕事を選ぶべきだと思うんです。特に女性は結婚、出産があるためピークを20代で迎えるより、人生の後半、60代くらいに持ってくるべき。

WI大山:人生のピークを60歳に持っていくと仰っていましたが、なぜ20代や30代ではなく、60代なのでしょうか? 

大草さん:大前提として、私は死ぬまで仕事がしたいんです。そして細く長くでもやり続けたことが身になったり、評価に繋がって、死ぬ間際に「今の私、最高のレベルだな」と思える社会にしたい。未だに日本は女性も男性もキャリアのピークが40歳くらいで、その後は消化試合と化してしまっています。

私の理想は、稼ぎもキャリアも緩やかに、でも上がり続けていけるような社会。生きてきた経験値、実績があるなら、最後までずっと上がっていくべき。私は今60歳に近づいてきてしまっているので、ピークを70歳に変えようかと思っているくらい(笑) 女性の美しさだって、内面は年齢を重ねるほど美しく、オシャレのスキルも積み重なっていく。それと同時にピークが後ろになるといいと思います。

「ファッションのセンスは替えが効くけれど、キャリアや人生経験は替えが効かない」

WI林:1つのことに命を懸けているからこそ生み出せる、大草さんだけの魅力を教えて下さい。

大草さん:替えが効かないモノです。ファッションのセンスは替えが効くけれど、キャリアや人生経験は替えが効かない。私のことを応援して下さる方は、私が生きてきた風景、ありのままの私に共感して下さっていると思っています。

オシャレは表層的なものだけど、人と比較するものではない。女の人が楽になるツールであって、財力などを誇示するものではない。この考え方に共感してくださる方が多いのかもしれないですね。

WI新井:「比較するのではなく、替えが効かない経験が財産になる」というメッセージに共感しました!2人で生きるという子どもを産まない選択肢はありましたか?

大草さん:第1子妊娠時は結婚はしていたものの、計画はしていませんでした。私は自分軸以外のことで、こうあるべきといった意識が働かない。子どもを産みたいとも産みたくないとも思っていなくて、幼い時に漠然と思う子どもはいつかできるだろうなとくらいの意識でした。

ただ今は3児の母として、子どもがいなきゃいけないというメッセージは出さないように気を付けています。子どもの有無によって女性のヒエラルキー、優位性をつくろうとするのはやめようと言いたいですね。

『自分を表す3つのキーワードは「情熱、リアル、自分勝手」』

WI清田:仕事とプライベートどちらもご多忙な日々だと思うのですが、それを支えるエネルギーはどこにあるのでしょうか?

大草さん:忙しいのは苦ではないんです(笑) 人は、年齢を重ねれば自然と忙しくなる。でも忙しくしているその要素が自分にとって楽しくて、愛情と信念と情熱で支えられているものならば、ストレスにはならない。娘には「自分に言い訳をしない」「人のせいにしない人生にしなさい」とよく言っています。

WI吉岡:大草さんご自身が好きなところを知りたいです!

大草さん:素直なところですね、心がけています。「これはいい」と言われていることは全部試してみます。そんなに手間のかかることではないし、毛嫌いせずにやってみるようなところが、自分でも好きです(笑)

WI大山:ご自身を3つの言葉で表すとしたら、どんな言葉になりますか?

大草さん:まずは「情熱」。オシャレ、ラテン、ダンス、お酒、いろんな意味で(笑)心を動かしたときに出てくるエネルギーですね。

2つ目に「リアル」。少し前までは、「雑誌はファンタジーで、自分はリアル」と境界線がはっきりしていたけれど、今はファンタジーとリアルの区別がつきにくい。インスタは“リアルに見せているファンタジー”なので、SNSをリアルだと思うのは大間違い。自宅から自転車に乗り、駅から電車で事務所に出勤する時に、電車に乗れないような服は着られない。そういう意味で私は「リアル」を大事にしています。

3つ目は家族からよく言われる“いい意味での自分勝手”。“自分勝手”という言葉は、言い換えると自分軸がちゃんと自分にあるということ。たとえ家族であろうと、軸を他者に預けてしまうと辛くなってしまうので、私は絶対に自分軸を自分で大切に持ちたいと思っています。自分の勝手で動くからもちろん「尻拭いも自分」という意味で“自分勝手”ですかね。

『ポジティブは後天的なモノ、訓練で身につくモノ』

WI新井:大草さんにお会いすると、自分の中にある前向きな感情に気付かされます。大草さん流のポジティブマインドの保ち方を教えて下さい!

大草さん: 20代の頃の私は人と自分を比較して、辛い思いをしていました。夫からポジティブは後天的なモノ、訓練で身につくモノだと教わったので、今は毎晩必ず自分を褒めています。

ポジティブは、長距離走みたいなモノで突然できるようにはならない。色々なことを自分以外のせいにしないように、どんなに少なくてもいいので飲んだり踊ったり、自分を発散する時間を何が何でも取るように意識しています。

(文:新井寿美伶&清田真尋、構成:編集:大山友理)

Women's Innovation前HPブログ掲載記事を再編集(2018年7月20日)



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