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数字で話している気でいるおじさん

 ビジネスを数字化しやすい時代になった。誰が何件、どういう案件や顧客を対応しているのか。電話や商談でアプローチ出来ている率はどれぐらいなのか、見積もりの提出率やクローズレートはどの程度なのか。WEBサイトの訪問数、そこからイベントへの流入数。etcetc...

 「データは21世紀の石油だ」という言葉があるが、なるほど、いつの間にか指標や経過はすべて数字化して話せる時代となっていた。

 そこで大量発生しているのが、タイトルにもある、「数字で話している気でいるおじさん」だ。

「新規顧客のターゲットとして挙げているうち、赤色が18.7%、青が15.1%、黄色が13.9%、その他…。赤色の内訳をみてみると…」

 スライドにはそれらしい数字がエクセルで納められている。

 しかし、よ〜く、よぉ〜く聞いていると、前提としている数字が間違っていたり、母数の考え方がおかしかったり、そもそものデータに抜け漏れがあったりするのは、私の職場だけではないだろう。
 肌感とよく当たる勘では、日本の8割の職場がそうなんじゃないかと思う(さっそく数字を出してみた、しかも勘で)

なぜか?

 これは私が以前noteに書いた、「ロジカル」は「美味しい」ぐらい違う にも通ずるものがある。

https://note.com/woo_chew/n/nb92ce22a5b22

 今の日本のおじさん(50代くらい)は、若手の頃にバブルが弾けて、今まで何となく右肩上がりだった業績にテコ入れをしなければならなかった。
 そこでまず、「欧米ってロジカルだよね、日本みたく気合いと根性でやってないよね」と誰か偉い人が言ったのか、ロジカル病が流行り始める。
 それから、Windows95の登場。今まで、「田中君はよく頑張ってる、お客さんの評判も良いし、新製品もいち早く売れた。遅くまで残ってやってるし、飲み会の付き合いもよく、ハキハキしている」と評価していたのが、超初期のデジカル化とは言え数字で出るようになってしまった。「数字の読めないやつはビジネス音痴」という潮流のはじまりである。

 そんなこんなで、日本のおじさんは一生懸命、「ロジカルで数字で語れるビジネスマン」のふりをしなくてはならなくなった。

 かくして2000年問題をなんとかくぐり抜けて以降、10年も20年も数字で話している気でいるのである。

 これは我々若手(と言っても30代中盤)にとってなかなか悩ましい問題である。
 「ん?なんか数字が分かってるような感じでみなさんヤンヤヤンヤ言ってますけど、全然違いませんか?」
 と言ってしまうのは簡単かも知れないが、彼らの10年20年がガラガラと音を立てて崩れてしまうのだから。

 多くの若手がやっている(と私が思っている&私もやっている)ように、おじさんには数字とロジカルの幻想の中にいてもらって、手元の数字はしっかり把握、管理し、うまいことバレないようにビジネスを組み立ていくしかないのだ。

 そんな世代の我々が、ビジネスを、日本を動かす時代になったら、どうなるか?
 きっとまた新しい若い世代に、違うところでコッソリ馬鹿にされるのだろう(それが健全)

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