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千曲市ワーケーションエピソード1

信州千曲観光局の山崎です。2021年5月22日〜5月29日の8日間、「ワーケーションウェルカムデイズ」というワーケーションイベントが千曲市で開催されました。千曲市では2019年10月の初回から数えて、1年半の間に計6回のワーケーション体験イベントを開催し、延べ200人以上の参加がありました。私は観光局員として初回から参加者の受け入れ側として千曲市ワーケーション体験会に参加してきました。今回「千曲市ワーケーションエピソード1」と題して、主に第1回ワーケーション体験会を振り返りながら、受け入れ側として感じたことなどを書き連ねます。これからワーケーションに取り組もうという自治体や観光関係の方の参考になれば幸いです。

「千曲市は温泉街がワーケーション拠点になると確信、プロジェクトがスタート。」

2019年、私が市役所の産業振興課に所属していた時、長野県で実施している「信州リゾートテレワーク」というワーケーション事業を知りました。千曲市でもやってみようということで、中心市街地のまちづくりを一緒に担っていた株式会社ふろしきやの田村さんにお声がけし、千曲市ワーケーション体験会を実施することになりました。
ワーケーションを始めるといっても、当時の千曲市には拠点となるコワーキングスペースはなく、ハード面でも整備の予算が全くない中、なぜワーケーションに取り組もうと思えたのか。

一つは千曲市には戸倉上山田温泉という信州屈指の温泉街があります。コンパクトな温泉街でありながら宿泊できる旅館ホテルは28軒あり、温泉は源泉掛け流しの美肌の湯。さらに温泉街には個性的な飲食店が200軒以上あり、ワーケーション参加者を受け入れる環境が整っているように思えていました。何より温泉街は自分自身が幼少期から遊んでいた遊び場、旅館や飲食店の関係者の個性的でウエルカムな人柄も大好きでした。

もう一つは千曲川を中心にしたメリハリのある地形で、温泉街からすぐの場所に絶景スポットがあったこと。絶景の中で働いて、夜はゆっくり温泉を楽しむ。これ最高でしょ!というわけで10月のワーケーション体験会にむけてスタートをきったわけです。

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「城と寺で働く、城ワーク・寺ワークを企画」

ワーケーション体験会の開催で重要になる働く場所。コワーキングスペースなど立派なハード設備がない千曲市で働く場所を選定する際、「とにかく気持ちよく働け、目を引く場所じゃないといけない。」という思いがありました。企画段階でまず目をつけたのが戦国時代の山城「荒砥城(あらとじょう)」。温泉街に隣接する山の山頂にある荒砥城は、善光寺平を一望できる絶景があり、電源も完備されていることから気持ちよく働けるのではないか、さらに「山城は戦国時代の武将のオフィスだよね」という解釈から、働く環境にもってこいということで、荒砥城を貸切り、城ワークができないかと役所の担当部署に相談しました。

城を貸し切れるのか半信半疑ではありましたが、担当の文化財センターでは荒砥城をはじめとする、文化施設の新しい使い方や、活用方法について考えており、城ワークにも前向きに検討してくださいました。そして新たな文化施設の使い方の実証実験として荒砥城を貸し切っての城ワークが実現することになりました。ちなみに城ワークのワークデスクやチェアはアウトドアギアをレンタルし、城の敷地内を自由に使えるかたちにしました。ワーケーション期間中にアウトドアギアを片道1時間の北軽井沢までレンタルしにいったのはなかなかハードでした。

もう一つの働き場は、棚田百選に選ばれる景勝地姨捨にある長楽寺というお寺。こちらは松尾芭蕉などの石碑もあり、昔から俳人に愛される場所。「そういえば松尾芭蕉って当時のノマドワーカーだよね。」という無理矢理な理屈から、長楽寺は昔のコワーキングスペースだったんじゃないかと、テレワークならぬ「テラ(寺)ワーク」と称して長楽寺を働き場にできないかと画策し、住職に相談しました。長楽寺は大変オープンなお寺で、我々の提案を快く了解してくれ、働き場としてお借りすることができました。

天気に思いっきり左右される働き場(特に城ワーク)でありながら、体験会当日は雲ひとつない晴天に恵まれ、県内外10名の参加者にご参加いただき、想像よりもはるかに有意義な時間を過ごすことができました。しかし体験会翌日、千曲市は台風19号による千曲川の氾濫により、未曾有の被害に遭うことになります。参加者の中には新幹線が止まり帰れなくなる方もいましたが、みなさん無事だったのはなによりでした。

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「ワーケーションの魅力は人の交流、 スナック交流会、姨捨BBQ」

体験会では「城ワーク」「寺ワーク」の他に、参加者同士・地元の人との交流を深め、温泉街の文化を知ってもらうために、「スナック交流会」を開催しました。戸倉上山田温泉には200軒近くの飲食店があり、昔ながらのスナックも多数あります。我々地元の人間は何かあるとスナックで交流を深めるのですが、スナックだと普通の居酒屋よりも人と人との距離が近く、交流がしやすいと感じたため、スナックを交流会会場としました。交流会では地元の名物「おしぼりうどん(辛味大根の絞り汁に味噌を解いてつけ汁にして食べる)」をふるまい、薬味の味噌も地元の中島醸造さんに直接持ってきていただきました。

その後も射的やスナックをはしごするなど定番のナイトクルージングで交流を深めました。その他にも市役所の有志「棚田倶楽部」の建物をお借りし、地元企業さんも交えたBBQで日頃仕事では交わることのない方達と交流することができました。

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「地域資源を活かす協働型ワーケーション」

千曲市のワーケーションは1回目以降も地域の遊休資源を活用してきました。市内にとどまらず、平日運転しない観光列車を貸し切ってトレインワーケーションというイベントも開催しました。温泉街の城山にある絶景のお寺、城泉山観音寺を貸し切っての瞑想体験や、こたつで寺ワークを行ったりしています。なんか振り返ると我々は貸切るの好きですね。

 今まで貸し切ってきたもの「城、寺(長楽寺、観音寺)、電車(ろくもん)、スナック」。全て貸し切ったら面白そうという発想から生まれています。ワーケーションが面白いのは、普段こちらに住んでいる側からするとなんの変哲もない場所が、働いたり、しゃべったりしているだけですごく素敵な場所に見えるということ。観光とは違う使い方で、別の価値が見出されることに気が付きました。一方で、観音寺の瞑想体験のように、ワーケーション発で観光資源になったものもあります。ワーケーションというフィルターを通すことで地域の資源が見えてきた気がします。

千曲市ワーケーションの特徴はリピーターが多いこと。そして参加者がワーケーションの企画に参加していることです。トレインワーケーションやゼロカーボンチャレンジなど参加者の企画が千曲市ワーケーションで実現しています。正直最近は参加者と企画者、ゲストとホストの垣根があまりにも無くなってきており、私もだんだん観光案内を怠る始末。そんなダメな観光局員がいても常連の参加者さん達が温泉街を案内してくれるので大変助かってます。常連さん達が知らないお店の発掘がこれからの課題です。

毎度、おおまかな時間割だけで、企画は頑張るのに現場合わせが多い千曲市ワーケーション。参加者と企画者が協力して行うゆるくて深い関係がとても心地いいです。最近では地元企業さんからのワーケーションの問い合わせも増えてきました。これからもっと地元の企業や、旅館ホテル、まだ見ぬ強者に、このゆるくて深い「ゆるふかワーケーション」が広がるとうれしいです。

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【告知】運営より
千曲市ワーケーション・ウェルカムデイズ開催決定
~大人の仕事も子どもの自由研究も両立!夏の思い出に!~
開催日:2021年8月7日~8月13日
・密を避けて涼しい高原の湖畔キャンプ場貸し切り
・温泉街から観光列車トレインワーケーション
イベント詳細/申込サイト:https://furoshiki-ya.co.jp/chikuma/wwd2108/

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