アリババ過去2年間の出資先企業を公開

2018年1月時点ではアリババの時価総額は5160億ドルとなっており、世界8位となっています。※正確にはアリババ・グループホール・ディングス

日本のトップはトヨタ自動車の2030億ドルで、世界43位となっていることから、その規模の大きさがよりわかります。さらに、このアリババ・グループ・ホールディングスの中には、高収益を支えるアリペイなどの金融事業を営むアントファイナンシャルは含まれてはいないことから、実際の企業価値、規模の大きさが伺えることでしょう。

アリババでは中核事業のECサイトは、未だに毎年40%以上の成長をしているモンスター級の会社です。
・CtoCのタオバオ
・BtoCのTモール
・BtoBのAlibaba.com
といったECに関する全てを抑えており、中国国内でのCtoCマーケットプレイスではタオバオが75%以上のシェア、BtoCではTモールが50%以上のシェアとなり、まさに独占的なサービスを提供しています。
こうしたサービスに金融サービスであるアリペイが絡み合うことで、アリババのサービス上で生活が成り立つということがまさに可能となり、人々の生活に深く入り込み、アリババなしの生活は考えられない、という状況になってきています。

アリババのEC事業の中国比率は約9割であり、多くの収益が成長を続ける中国国内から生まれてきています。
そうした中で、アリババが考えているであろう施策・方向を少しだけ突っ込んでみてみたいと思います。
2014年9月にニューヨーク証券取引所へ、世界最大の上場で賑わしたアリババはその後ぐんぐんと投資を広げています。
2015年から現在まで、およそ2年間で行ってきた投資を整理しましたので、どういった戦略を元に事業を拡大させているのかが少しわかるかと思います。

【アリババの投資先企業】2015年1月〜2017年2月 計50社

【参考】Crunchbase (Alibaba Investments)
※投資額はアリババ単独でのものもあれば、ファンド等によるものもあります。そのため、リードインベスターでYes/Noとあるところを参考に、ある程度の出資額をイメージしていただければと思います。

出資先のリストはGoogle Spread Sheetでもう少し綺麗に見れますので、リンクを貼っておきます。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/13Qj7SCBJGff90jI-sQxTyogULIPXcV4Gf1JWI_iVTX8/edit?usp=sharing

一つ一つ書くと、何日もかかってしまうものだと思いますので、大きな流れだけピックアップして書いていきます。
そして、上記の出資先もおそらく全体の一部であり、小さい規模含めるとさらに多くの出資をしていることと思います。
図からも見てわかる通り、分野もかなり広範囲に出資しており、真にコングロマリットに向かって進んでいるのがよくわかります。
創業者のジャック・マーも102年続く会社を作るという想いがあるので、どんどん多角化させて生活の至るところにアリババを浸透させていきたいと考えていることと思います。(ダボス会議でのジャック・マーの対談内容も書き起こしをしたので、興味あればご覧ください。こちら。)

戦略として、中国国内と海外とでわけて見てみます。なお、アリババに関しては常にニュースが出ていますので、ちょっと角度を変えて、出資の情報をベースに考察していきたいと思います。

まずは中国国内から。
【1】まだまだ広がるEC事業を拡大
これは当然ながら、現在の中核事業であるタオバオやTモールが伸び続けていくわけです。ここは買収したり、出資したりというよりも自分たちで既存のサービスをさらに伸ばしていく部分です。
BtoCで気になる存在としては、テンセントと提携している京東集団のJD.comであり、今後2社の争いは注目ですが、このあたりはまた今度にします。

生鮮食品ECのYiguo.comなどはありますが、特に気になるのは2015年5月に物流会社のYTO Expressに出資していること。ECサイトの発達により、中国国内では物流面の向上も著しく、ジャック・マーも「5年以内には、中国の国内はどこでも24時間以内、世界どこでも72時間以内に配達できる」物流ネットワークを実現すると言っています。こちらより。
中国国内での物流がさらに発展し、そして世界での物流にまで進出していくときがくるのだと思います。

【2】リアル店舗への積極的な進出
昨年11月には、香港の企業で、中国本土と香港で食品スーパーを展開するSun Art Retail Groupにも出資を行い、総額2900億円の出資で、株式3割を取得しています。また、中国全土に1600以上のチェーン店を展開しているSuningにも出資。
すでにアリババは無人コンビニもスタートさせており、今後はますますリアルな世界に進出してきます。アリペイの決済をもち、ネット上での購買データと連動させることで強みを保ち、これまではとれなかったリアルな店舗でのデータ収集を加速させることでしょう。
アリババはニューリテール戦略と呼び、重要方針の一つと位置づけており、従来の小売を取り込んでいくことで、さらに積極的な展開が予想されます。
11月の出資はまだまだ序章であると思い、導入が進んでテストマーケティングも済んでくると、さらにリアル店舗への買収、出資が始まってくることと予想しています。

【3】シェアリングサービスへの投資
このあたりは、配車サービス、シェアライド、シェアサイクルなどさすがに手広くやっています。
特に配車サービスで競合関係にあるDidi、UCARの両方に出資するなど、どう転んでも勝つのは各プレイヤーではなく、アリババであるという構図がしっかり作られています。
シェア自転車はofoに出資しており、テンセントが出資するmobikeとガチンコでぶつかっています。こうしてみると最終的には、ここでも巨大な資本をもつアリババとテンセントの戦いとなっています。
また、中国国内ではないので少し話がはずれますが、アメリカの配車サービスLyftにもしっかり食い込んでいます。

【4】その他の成長分野への出資
コアテクノロジーのAIやビッグデータなどの出資に加え、門外漢であるはずの電気自動車(EV)のXiaopeng Motorsへの出資も行っています。
ホットなテーマであるEV関連、特に本丸である自動車メーカーへの投資は今後も継続していくことでしょう。


次に、海外事業を見てみます。
アリババのEC事業の国内比率は9割となっており、全体のパイを広げると同時に、成長が続くマーケットへもさらに積極的に打ってでていきます。

【1】アジアECトップ企業への出資
ECサイトが拡大するマーケットに対して、今のうちにどんどん攻めて、アリババグループに取り込んでいます。
・東南アジアNo.1 ECサイトのLazada(シンガポール)を1000億円で買収
・インドネシアNo.1 ECサイトのTokopediaに出資
・インドNo.1 ECサイトのSnapdeal、モバイルコマースと決済サービスも提供するPaytmに出資

今のうちに伸びるマーケットの各国トップ企業に出資をし、アリババと提携することで、さらに事業を伸ばしにいっています。
ジャック・マー自身も、Lazadaを通じて東南アジアの事業をさらに加速させると言っています。


【2】アメリカは市場としてではなく、技術の取り込みでの投資という位置づけ
アメリカ企業への出資も積極的に行っており、中国以外だと最も多く行っています。AR企業として有名なMagic Leapにも出資を行うなど、有望な技術を取り込んでいっているようです。そのため、技術ドリブンのスタートアップが中心で比較的出資額も小さいのが特徴です。


いかがでしょうか。
こうして見ると、盤石な国内EC事業&金融事業をベースに、中国国内・アジアを中心とした海外へも積極的に展開していることがわかります。
アリババのターゲットはリアルの小売であり、これから大きな変化が起きてくることは間違いがないと思います。既存のマーケットが変化していくことはおそろしくも、同時にワクワクする部分でありますので、引き続きウォッチしていきたいと思います。