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(イス)追悼:また来世で!

平成の世が終わり、新時代 令和が幕を開けた。
「何かの終わりは何かの始まり」                                                                                 そんな趣旨の言葉は巷に溢れているかもしれない。



「死は『人生の終着駅』であると同時に、『来世への始発駅』でもあるんです」

ある雑誌記者のインタビューに、こう答えていた人物こそ、私が最も尊敬するムスリムであるハーリド樋口(樋口美作)だ。(敬称略)

  1936年に新潟で生まれた樋口は大学を卒業した後は「国際的な仕事がしたい」という希望を持っていたが、新卒で思うような就職先を見つけることができなかった。そんな時にエジプト政府の留学生募集という 千載一遇のチャンスが巡って来る。応募するための条件はムスリムであること。樋口は悩んだ末にイスラムへ入信し、イスラムの最高学府であるエジプト アズハル大学へ留学した。

 その後、樋口はエジプト留学時からアルバイトをしていた日本航空に入社し、エジプト、イラク、サウジアラビアと10年間の海外勤務に従事することとなった。主に路線開設業務を行いサウジアラビア・イラクの路線を開設させるなど、樋口はビジネスマンとしても優秀だった。

 1990年、樋口は日本ムスリム協会の9代会長に就任。在任時に発生した9・11ニューヨーク同時多発テロの影響で、「イスラム=テロリスト、過激派」という誤解と偏見が日本中に蔓延する中で、必死に正しい情報の発信をし続けた。2003年に会長を引退した後も、他宗教との対話活動を推し進めるなど日本における「イスラム」のあり方を模索し続けた人物だ。

そんな樋口が人生の終着駅に到着したのは2019年4月3日のことだった。

 一般の日本人で「樋口美作」の名前を知っている人など、ほぼいないだろう。しかし、日本でテロが発生せず、過激派も台頭せず、イスラムフォビアも蔓延しない理由の1つとして少なからず樋口の存在があったからだと私は思っている。

それほど偉大な人物だった。


樋口さん
現世での82年、本当にお疲れ様でした。
また、来世で会いましょう。

(text ナセル)

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