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(仏)平成から令和へ、その時を克明に描写する

2019年4月30日(火)

平成最後の日はずっとシトシト雨。降ったり止んだりしている。
寺の境内のつつじの花が満開時期のこの1週間、毎日11時より「花説法」を行う。今日は最終日。タイトルは「平成から令和へ~祈りのバトン~」。こんな雨模様なので人も来ないだろうと高をくくっていたら、開始直前に雨が上がる。20席程度用意した椅子はすぐ満席に。
「平成最終日」の御朱印の列を対応しているうちに、17時を迎える。表に出ると、通りから街宣車の音が。天皇陛下の在位中最後のおことばが、ラジオ中継されている。寺のスタッフは身体をラジオのほうに向け、目を瞑ってその放送を聴いている。
「明日の御朱印は朝何時からですか?」と問い合わせの電話があり、明日「令和初日」の御朱印の混雑が、早くも予想される。

平成最後の晩餐は何か?とのニュースで、わが家も俄然その気になり、夕食は旬のタケノコご飯と、鶏のから揚げで決定。1日の疲れもあいまって、食欲に任せてかきこむと、6杯目のおかわりで睡魔が。
子供も咳き込んでいて体調が芳しくなく、風呂には入れずに妻が寝かしつけている間に、茶の間で食卓も片付けぬまま、気絶するように眠りに落ちる。

目が覚めると深夜0時を少し回っていて、慌ててテレビをつけた。令和元年のカウントダウンは既に過ぎていた。何か決定的な瞬間を見逃した気はするものの、天皇の崩御に伴う改元ではなく、お祭りムードの改元に、意識的なパラダイムシフトが起こったのだと痛感。暦をつかさどって意識的にフェーズを変える、その力強さを思った。
NHKのニュースでは比叡山延暦寺の執行(しぎょう=代表役員)がインタビューを受けていた。
Twitter本社からの中継では、トレンドを解析中。元旦より楽しみだ、という声が聞かれる。年越しそばならぬ「改元そば」を食べる人が多く、パスタやうどんで代用する人が多いとか。「年越しには麺類を食べる方が多いようです。」とレポート。

2019年5月1日(水)

朝から「令和初日」のご朱印対応に追われる。9時受付開始のところ、8時半には人が来始め、それから17時過ぎまでひたすら筆を取っていた。淀みを洗いざらい流して新時代を迎えるよう、昨日も今日も長々と雨。
午前10時過ぎには、新天皇に三種の神器が渡され、ここに新天皇が即位された。昨日までの天皇は上皇と、皇后は上皇后となられる。そして11時過ぎから、おことばが発せられた。全国民に対して、というより、この時代は世界各国からメディアも取材に訪れているのであるから、全世界に向けて、といった方が適切だろう。海外に駐留する日本人は、祖国を離れているぶん余計に、このおことばに耳を澄ませた、という方もおいでだろうなと察する。
TVのロケ一行が17時過ぎには到着予想との事前通知だったが、18時近くなっても現れず、さすがにもう閉堂しようと思った矢先に、到着。
午前中に川崎駅周辺から散策を開始して、こんな宵の口にこの寺までたどり着いたというわけ。雨の中の長時間の撮影、ご苦労様だ。スタッフによると昼食の時点でお酒を召し上がったようなので、まぁ良い気分の旅だったのだろう。出演者の丁寧な対応に、こちらも頭の下がる思いがした。

Text by 中島光信(僧侶・ファシリテーター)

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