見出し画像

もうすぐハロウィン!おすすめ絵本をご紹介

秋と言えば、スポーツ!食!読書!の秋ですね。そして、10月は子どもたちが大好きなハロウインです!

今回はハロウィンにちなんで、ワールドライブラリー出版の絵本『まじょになったら』(オーストリア)を、ご紹介します。

画像1


作: ヘルガ・バンシュ Helz Bansch
1957年オーストリア、シュタイアーマルク州のレオーベン生まれ。グラーツの教育大学を卒業し、2003年まで小学校教師。2003年以降、ウィーンでアーティストとして活動する傍ら、子供たちとのワークショップなどを運営している。ラガッツィ賞受賞作家ハインツ・ヤーニッシュとのコンビで高く評価されており、“Kommt das Nashorn” はミュンヘン国際児童図書館国際推薦児童図書目録The White Ravens 2016に選出され、さらに2017年ドイツ児童文学賞絵本部門にノミネートされている。
訳: 佐藤 淑子 さとう よしこ
上智大学文学部ドイツ文学科卒業。やまねこ翻訳クラブ所属。訳書に『トゥルーリのアメリカりょこう』『オスカルとはらぺこドラゴン』『シマウマくんはシマウマくん』『まじょになったら』『だいすきなパパ』『シロクマくんといっしょに』(ワールドライブラリー)、『世界の名画を読み解く』(あかね書房)など。

ちいさな魔女候補の修行

7年に一度、魔女たちは仲間になるのにふさわしい子どもを選びにやってきます。選ばれるのは、どんな子でしょう。魔女の修行って、どんなことをするのでしょうか。ヘルガ・バンシュの詩情あふれるイラストレーションが、読者を不思議な世界へと誘います。魔女たちや猫の表情豊かなこと!何度も読み返すうちに、絵の中に新たな発見をして、絵と物語のからみあう深さに膝を打つことになります。

画像2

タイトルの魔法

この絵本の原題は“Hexlein”。最初の仮タイトルは訳したままの「ちいさなまじょ」でした。小さな魔女のお話ですから、この絵本の内容にはぴったりです。ですが、魔女のお話としてすぐに思い浮かんだのが『小さい魔女』でした。『大どろぼうホッツェンプロッツ』シリーズや『クラバート』で知られている、ドイツの児童文学者オトフリート・プロイスラーの名作です。こちらを連想して混同しやすいのではと、別のタイトルを検討することに。そして生まれたタイトルが『まじょになったら』でした。
魔女になる方法が書いてあるのかな、魔女になったらどうなるのかな、と想像と期待を誘うタイトルになりました。そのおかげか、初版時から大きな反響と多数の注文があり、すぐに増刷が決まりました。ワールドライブラリーにかけられたうれしい「タイトルの魔法」に、スタッフ一同が喜びました。

画像3

力強く成長していく子どもの姿

『まじょになったら』では、「選ばれた子だから」「特別な子どもだから」不思議な魔法でパッとたちまち魔女になり、とはいきません。普通の子どもが魔女になるお話。魔女になるのは簡単なことではなく、熱心に勉強しなければいけないし、集中力や根気も必要なのです。
特にほうきを乗りこなす場面。夢中になって何度も繰り返し挑戦する子どもの表情、逆立つ髪、力のこもったまなざしからは、強い意思が伝わってきます。初めて自転車をこぐときや、初めて跳び箱を跳ぼうとした日、きっと誰でもこんなふうではなかったでしょうか。この小さな魔女見習いは、連れてこられて最初は戸惑いながらも、自分の意思で魔女になろうと決めた子です。力強く挑戦する子どもの姿、その輝きが描かれます。

リズムの魔法

翻訳は佐藤淑子さん。佐藤さんの訳は、シンプルなことば選びによる、すっきりとした文体が魅力です。ナチュラルなことば遣いの中で、原文の詩のようなリズムや音韻の響きは七音五音を基調としたリズムに置き換えて表現されています。魔法の呪文をとなえるように、ぜひ声に出して、読んだときの心地よさを楽しんでみてください。まだ文字が読めない子たちも、繰り返し読んでもらううちに覚えてしまい、楽しく一緒に口ずさむくらいです。

(本稿は過去にWORLDLIBLALYメールマガジンで発表したコラムを加筆修正したものです。)