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アブ・シンベル大神殿3Dスキャンプロジェクト〜ワールドスキャンプロジェクトの挑戦

今回は、私たちワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)による、アブ・シンベル大神殿での調査をご紹介します。

私たちが3Dスキャン調査をする理由

W.S.Pが遺跡の3Dスキャンに取り組む理由、それは、私たちの技術が遺跡の保存や研究にとって大きな貢献になるからです。

3Dスキャンされた遺跡は詳細なデジタルデータとして保存され、風化されることなく現在の姿を永久に留めることができます。そしてそのデータは、人類史の貴重な記録として残ると共に、新たな研究や発見の道しるべとなるのです。

「世界遺産」のきっかけとなった記念すべき遺跡

ユネスコによる「世界遺産」の概念を生み出すきっかけともなったアブ・シンベル大神殿は、エジプト最南部、スーダンとの国境近くにあり、今から約3,300年前に古代エジプトにおいて最も有名な王の一人、ラメセス2世によって造られました。

1960年代。この神殿はナイル川治水の為のアスワン・ハイ・ダムの建設計画により水没の危機に瀕します。そこで立ち上がったのがユネスコ(国際連合教育科学文化機関)でした。

ユネスコによる呼びかけのもと、世界各国の協力による国際的な救済活動により水没の危機から救われ、高台に移築されました。現在ではエジプトを代表する世界遺産として多くの観光客が訪れています。

そして、このプロジェクトがきっかけとなり、歴史的価値のある遺産を「世界遺産」として、国家のみならず全世界共通の遺産として、地球全体で保護・保全するという考えに発展していくことになったのです。

現在のアブ・シンベル大神殿から見たアスワン・ハイ・ダム
当初はこの水中数十メートルの場所に建造された

岩山に掘られた巨大な岩窟神殿

アブ・シンベル大神殿は岩山を掘って作られた巨大な岩窟神殿です。神殿の入口では、青年期から壮年期までの4体の巨大なラムセス2世像が私たちを出迎えます。これらの像の足元には、愛妻ネフェルタリの像が立っています。

正面にはラメセス2世の巨大な像が並ぶ

神殿内部にもラムセス2世の立像が並び、壁にはラムセス2世の業績や、世界最初の和平条約が結ばれたことで有名なカディシュの戦い、シリア・リビア・ヌビアとの戦いの場面が描かれています。

カデシュの戦いのレリーフ

最深部の至聖所には、プタハ神、アメン・ラー神、ラー・ホルアクティ神、そしてラムセス2世自身が並んでおり、10月22日と2月22日の年に2回、太陽の光が神殿内部を通過しこの場所を照らす神秘的な造りとなっています。この日は多くの観光客で賑わい、一度この光景を見たいと願う人も多いことでしょう。

年に2回、この正面奥にある至聖所まで太陽の光が通る

また、大神殿のすぐ近くにはラムセス2世の愛妻ネフェルタリに捧げられた小神殿もあり、こちらも小規模ながら見事な彫刻が残ります。

アブ・シンベル小神殿

アブ・シンベル大神殿を3Dスキャン

2018年から2022年にかけて、エジプト政府から特別な許可を得たW.S.Pの調査チームは、大神殿と小神殿を3Dスキャンするためにこの地を訪れました。特徴的な外観だけでなく、通常は入ることのできない至聖所への立ち入り調査や、ドローンを使い壁面の巨大彫刻のデータも詳細に取得することができました。

私たちのスキャンにより、アブシンベル大神殿と小神殿は現在の詳細な姿をデジタルデータとして未来に残すことになります。そしてそれは考古学研究や、多くの人がバーチャルリアリティで訪れることのできるサービスで利用されます。
 
現在も、アブ・シンベル大神殿は世界遺産の中でも特に象徴的な遺跡として、多くの人々に愛されていますが、世界中の人がより手軽にこの遺跡にアクセスすることができるようになれば、その魅力はさらに広がりを見せて行くことでしょう。

W.S.Pの先進的な技術により、アブ・シンベル大神殿は新たな価値を得るのです。

調査を終えたプロジェクトチーム

世界を、未来を、好奇心を、身近に

ワールドスキャンプロジェクトは、これからも世界中の遺跡調査と保存を続け、人類の宝を未来へ繋き「世界を、未来を、好奇心を、身近に」する活動を続けていきます。興味を持った方は、ワールドスキャンプロジェクトの活動をフォローし、応援してください。

アブ・シンベル大神殿の調査についてはこちらの動画もご覧ください。


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