ラメセス6世の王墓3Dスキャンプロジェクト〜ワールドスキャンプロジェクトの挑戦
歴代のファラオが眠る王家の谷。そこに造営された数多くの考古学的価値の高い王墓の中でも、現実離れした美しさから高い人気を誇るのがラメセス6世の王墓です。今回は、私たちワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)による調査内容と共にラメセス6世の王墓内部をご紹介します。
第20王朝のファラオ、ラメセス6世
ラメセス3世とイセト・ター=ヘムジェルトの間に生まれたラメセス6世。新王国時代に第20王朝のファラオとして即位したラメセス6世ですが、当時は情勢が不安定で、前代より続く神官団の政治介入や暴動の勃発などにより国力は低下の一途を辿っていました。
そんな衰退期に築かれたラメセス6世の王墓はツタンカーメンの隣に位置していますが、元々は甥である先代のファラオ、ラメセス5世のためのものでした。しかし、第20王朝の間にラメセス6世は王墓に刻まれた先代ラメセス5世の名前を上書きし、拡張を行うとともに王墓を簒奪してしまったのです。
ラメセス6世の王墓内部
王墓内、入り口から続く通路には太陽神ラーが毎晩西に没した後、冥界を通過し朝に東から登るという旅路を描いた「洞窟の書」や、冥界にある12の門について記された葬送文書である「門の書」など、宗教や死生観に深く根ざした壮麗な壁画が飾られました。年老いた羊頭の太陽神が杖をついて洞窟の中を旅する姿や、太陽神ラーに敵対する者の頭や心臓、体が洞窟内の神によって焼かれているシーンが残っています。
また、古代エジプト人にとってナイル川は欠かせない存在ですが、冥界にも川が存在し、太陽神ラーは船に乗ってその冥界の川を移動します。川で分断された東側には善人が描かれた一方で、西側には太陽神と敵対する者が手足を縛られた状態で描かれるなど、太陽神ラーに反する敵がどのような運命を辿るのかを示唆しているのです。
鮮やかな壁画の数々
長い通路を進むと暗青色の天体に黄色で描かれた神々の鮮やかな天井画が訪れる人々を迎えるでしょう。ここには、天空の女神ヌトが西に沈む太陽神ラーを飲み込み、朝に再び東からラーを生み出す様子が色彩豊かに残っています。周囲には「門の書」で飾られた柱が並んでおり、古代エジプト人の死生観や宇宙観を深く理解する上で貴重な資料となりました。
死と再生の物語はさらに続き「アム・ドゥアトの書」と呼ばれる冥界の書からの抜粋では、太陽神ラーが冥界に入るのを迎えるヒヒや女神、フンコロガシの姿をしたケプリ神などが描かれました。
フンコロガシは古代エジプトにおいて「再生」の象徴であり、年老いた羊頭の太陽神は最終的にケプリ神となって東の空から蘇るのです。そしてファラオも同様に、冥界の旅を経て太陽神とともに復活すると信じられました。
ラメセス6世の美しい玄室
最奥に造営された玄室は煌びやかな装飾で彩られており、ラメセス6世がかつて眠っていた巨大な石棺も現存しています。ラメセス6世の棺はアーチ型の天井を見るように置かれ、その眼差しの先には太陽や星の運行を記した「昼の書」と「夜の書」が描かれました。
また、壁には「大地の書」と呼ばれるオシリス神の復活を表すシーンが緻密に描かれており、3000年以上前に描かれたとは思えないほど鮮やかな空間となっています。
世界を、未来を、好奇心を、身近に
このようにラメセス6世の王墓には多数の葬送文書が綺麗な状態で残っており、古代エジプト人の宗教観と死後の世界に対する深い信仰を調査するための貴重な手がかりとなっています。
私たちワールドスキャンプロジェクトは、このような古代の遺産を高精度に3Dスキャンし、VRやメタバースで装飾の細部に至るまでリアルに再現することで、現地に行かなくても遺跡の内部を探索したり、歴史的な背景を学べる環境を作ることを目指しています。
そして、この取り組みを通じて遺跡への関心を高め、保護の意識を広めることが私たちの使命です。これからもデジタル技術を通じて、歴史のバトンを次世代に渡していきます。ご興味があれば、ワールドスキャンプロジェクトの活動をフォローいただき、ぜひ応援をお願いいたします。
ラメセス6世の王墓についてはこちらの動画もご覧ください。
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