見出し画像

日本独自の占い「血液型占い」が信用ならない理由~レッテル効果と確証バイアス

私が初めて「血液型占い」というものに触れたのは、小学2年生の頃、90年代のことである。
その当時は、星座占い、血液型占い、おまじないなどが流行していた。大人の世界はどうだったか知らないが、子供、とくに女児と「うらない」は密接なかかわりを持っていた。

テレビでは毎朝12星座の占い結果を発表し、女児向けの雑誌には「彼と両想いになれるおまじない」「成績があがるおまじない」「ポプリの作り方」「相性占い」などが書かれていたものだ。

そんな中わたしが手に取ったのは女児向けの「血液型占い」の本である。
発行は私が産まれる前(80年代)のものであった。つまり血液型占いブームの黎明期の本である。
内容は、半分くらいは漫画で構成されており、血液型擬人化のようなA子ちゃんB子ちゃんO子ちゃんAB子ちゃんが登場し、その性格を紹介してくれたり、血液型同士の相性などが書かれていたりした。

大体の日本人ならおわかりと思うが、現在の血液型占い同様、それぞれこんな感じの描かれ方である。
A子……しっかり者。几帳面。人のおうちで靴をきちんと揃える。食事は上品。必ず五分前行動。
B子……わがまま。乱暴者。人のおうちで靴を脱ぎ捨てる。食事は下品に食べ散らかす。甚だしく遅刻してくる。
O子……明るくてちょっとバカ。人のおうちではB子の次に靴を揃えず、食事はB子よりはマシ。ちょっと遅刻する。
AB子……二重人格。それ以外はA子の下位互換


子供心に「はあ?」と思った。
そりゃ思うだろう、とにかく血液型占いのA子ageはすごい。
血液型占いにおいてはひたすらA子がヒロインなのだ。
B・O・ABはボロカス言われまくりなのに、A子の短所といえば「真面目過ぎて他者がついてこられずから回り」とか「自分に厳しく他人にも厳しい」とか、なんだそれ面接における短所の紹介かよみたいなクソだるいことばかり書いてある。

子供心に腹が立ち、著者プロフィールを見た。
私は幼児期からアニメのクレジットをくまなく見るようなオタク気質だったため、そういうチェックは欠かさない。

案の定
「著者 YM(伏せます) 血液型A型
と書いてあった。

ほらな!!!!!!!!!!!!!

と子供心にとてもドヤり、A型が「私A型だから~」と自分に都合のいいことを言うたびに「まあ、血液型占いってA型がA型にいいように考えたでたらめ占いだから信用してないよ私は」という大変こまっしゃくれたガキが出来上がってしまった。

「お前(A型)が単にナルシストで、お前の身近にいたB型の奴のことを嫌いだっただけだろカス」
と血液型占いの始祖(笑)にお伝えしたかった(しなかった)。
つまり確証バイアス(自分が既に持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向のこと)およびチェリーピッキング(自論に有利な証拠のみを選び、それと矛盾する証拠を隠したり無視する行為のこと)というやつである。

今回調べてみて面白かったのが、ABO式血液型は1900年初頭に発見された血液型分類であり、「血液型占い」というジャンルができる前に、日本では大学教授や作家が「性格の分類を研究」をしたことがある、という話だ。

そこでは、「B型(の兵士)が優秀」だったり「BOが能動的でAとABが受動的」という研究結果を出していた。
ただし、これらについては研究としては否定されている。
どちらも相当数、教授は第二次大戦の兵士たち、作家に至っては10万人のデータを集めたが、前者は血液型による能力や性格の差がさして出なかったこと、後者は集めたデータが「血液型の性格分類に興味がある人のみ」という偏りがあったためだ。
ただ少なくとも、自称占い師がおそらく自分の周囲だけの狭い範囲のデータと個人の好悪で作り上げたであろう「血液型占い」よりは、大人数を集めた統計であるのは間違いない。

だが、残念なことに教授のほうも作家のほうも、血液型がなんだったのか調べても出てこない。場合によっては話変わってくるぞ

また、もはや検証しようにも日本では正確なデータが取れないのは間違いない。
何故なら我々は物心ついたときからすでに「血液型占い」を認知しており、「それぞれの(少なくとも自分の)血液型がどういう性格だと決めつけられているか」を知っている。
いわゆるレッテル効果(ラベリング効果)というやつである。
レッテルを貼られた人が、そのレッテル通りの行動をする。
つまり「A型は几帳面。細かい」と小さなころから刷り込まれていれば、そうなって(信じ込んで)しまう。
まあこれこそ個人の性格が出るところだが、「私って●型だからこうなのよね!」とレッテル効果にまんまと騙される人のいいタイプはその通りの性格に育つだろうが、私のように「はあ? 全然当たってねえし」と思ったり「いや、そうはいっても私はこういう性格なんで合わせるの無理です」というタイプはその限りではないだろう。
そうは言いつつも、いいとされているところは影響受けてもいいと思いますけどね。いいところひとつも書いてなかったりするとそうはいかないけど。

やる意味はないが、もし「血液型占いが本当か検証する場合」、欧米などの血液型占いの土壌のない場所で数万人を無作為に集めて検証する必要があるだろう。

余談だが、ABO式の血液型が発見された1900年代初頭のドイツでは「白人A型人種優秀論」が提唱され、「白人にA型が多く東洋人にB型が多い」と人種差別に使われていたそうだ。
ちなみに白人にA型は多くないし(白人かどうかは置いといて、ヨーロッパ系は確かにA型が多い)、日中韓でいうと日韓で一番多いのはA型、中国はABOがほぼ同率である。(日本は次いでO型、韓国はBOがほぼ同率)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?