マガジンのカバー画像

小説&ブックレポート

25
小説: 高校の文芸部に所属していた頃に書いた小説を「供養」しました。 ブックレポート: 読んだ本の紹介や書評、感想を書きます。
運営しているクリエイター

記事一覧

グロなし『墜落遺体』印象的なエピソード3選

グロなし『墜落遺体』印象的なエピソード3選

1985年8月12日、18時56分。

1台のジャンボジェット機が、高天原山の斜面に墜落しました。

日本航空123便墜落事故。

この事故で、乗員乗客520名の尊い命が奪われました。

それから16年。

事故当時、身元確認班に所属していた群馬県警の刑事官、飯塚訓さんが、身元確認作業の様子を詳細に綴った『墜落遺体』を出版しました。

それからさらに、18年後。

一昨日、タイムラインで目にしたこ

もっとみる
「安楽死で死なせて下さい」読書感想文

「安楽死で死なせて下さい」読書感想文

2018/2/2 はてなブログ自記事より

こんにちは。あすぺるがーるです。

連日の寒波により、今日もまた雪が降っているようですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

母に頼まれたお使いのあと、浮かない気持ちを晴らそうと本屋を散策していた私の目に、こんな本が飛び込んできました。

元々安楽死については興味があったものの、なかなか安楽死について知ったり話したりする機会がなかったので、これを機にと

もっとみる
「母からの解放」読書感想文

「母からの解放」読書感想文

こんにちは。あすぺるがーるです。

今日は、信田さよ子さんの「母からの解放」という本を紹介します。

今の私のように、母親の存在に悩まされている方(特に女の方)必見の一冊です!

豊富な毒母被害の例この本では、多種多様な毒母からの被害の例が載っています。

・母親に汚らわしいものを見る目で見られた
・健康に悪いしきたりを強制された
・父のDVから母を庇おうとしたら貶された
・あからさまに病んで

もっとみる
「泡沫少女とイデアの少年」読書レポート

「泡沫少女とイデアの少年」読書レポート

2018/3/26 はてなブログ自記事より

こんにちは。あすぺるがーるです。

今回は、私が最近(と言っても、数か月前になってしまいましたが…)読んだ『泡沫少女とイデアの少年』という本の感想文を書こうと思います。

本の紹介この本は、ボーカロイド曲を小説化した、いわゆるライトノベルというジャンルの本です。

原曲は、「林檎売りの泡沫少女」と「イデアの青年」です。

「林檎売りの泡沫少女」は、作詞

もっとみる
【小説】美しい孔雀 9

【小説】美しい孔雀 9

王子は、家の戸を叩いた。

すると、中から、あの若い娘──マーシーが姿を見せた。

「ど、どなたですか?」

青紫のワンピースにエプロンをつけ、靴を履いたその姿には、あの時の貧苦の影は、少しも見られなかった。

「私はあの日、あなたに羽を渡した孔雀です。神様が、私を王子にして下さり、新しい人生を歩むようにおっしゃったので、そのお礼とごあいさつをしに参りました」

「まぁ、何てことでしょう!!!!

もっとみる
【小説】美しい孔雀 8

【小説】美しい孔雀 8

孔雀が消え入りそうな声でそう言った、その時だった。

突然、老人の姿が光り輝いた。

老人は孔雀を抱きかかえて、すっくと立ち上がったと思うと、更にその輝きを増した。

辺りが昼のように明るくなった中、そこに立っていたのは、白い上着をまとった、ほかでもない神その方だった。

「美しい孔雀よ」

「美しい…?」

「見た目ではない。お前の心が、限りなく美しいのだ。

自分の身を犠牲にしてまで人々を救っ

もっとみる
【小説】美しい孔雀 7

【小説】美しい孔雀 7

そんなある日、孔雀は、あの懐かしい呼び名を聞いた。

「テンチャ!」

「ドーヴ! どうしたの?」

「テンチャ…。噂は、聞いていたけど、まさか、まさか、こんなことになっていたなんて…」

ドーヴは、孔雀の変わり果てた姿を見て、大粒の涙をこぼした。

それからドーヴは、首の回りがびしょ濡れになるまで泣き続けた。

しばらくして、ドーヴはようやく、伝えたかったことを口にすることができた。

「お城の

もっとみる
【小説】美しい孔雀 6

【小説】美しい孔雀 6

しかし、楽しい時はそう長くは続かなかった。

あれほどたくさんあった飾り羽が、とうとう無くなってしまったのである。

最後の飾り羽を渡し、家から出てきた孔雀に、孔雀と遊んだことのある少女が通りかかった。

「カミーラ! 元気にしてた?」

「うん! それよりあのね、見て見て!」

そう言ってカミーラはリュックサックから、一冊の本を取り出した。

それは、英語の教科書だった。

「学校、行けるように

もっとみる
【小説】美しい孔雀 5

【小説】美しい孔雀 5

その日から、孔雀は、来る日も来る日も自分の羽を配り続けた。

そして夜になると、地面の上で、できるだけ汚れてないところを探して体を休めた。

夏は涼しく、冬は暖かく、完璧に整備された環境の中で、ふわふわの専用ベッドに寝ていた孔雀にとって、それは過酷なものだった。

眠る孔雀の体を、寒さが襲い、風が吹き付け、雨が穿った。

ネズミの声で目を覚ました時もあった──

──いや、ネズミならまだよい方であ

もっとみる
【小説】美しい孔雀 4

【小説】美しい孔雀 4

 

しばらくすると、辺りの様子が一変した。

昨日馬車で通ったような、あの、煉瓦屋根でパステルカラーの壁の家々は消え、代わりに、板切れや布を継ぎ合わせたような粗末な家々が立ち並んでいた。

辺りには、鼻が曲がりそうなほどきつい悪臭が立ち込め、でこぼこでぬかるんだ狭い道の上を、時折、ネズミやゴキブリが走っていった。

それでも、軒前には洗濯物が並び、道には子どもたちが走り回って遊んでいた。

そし

もっとみる
【小説】美しい孔雀 3

【小説】美しい孔雀 3

家の屋根で翼を休めながら、休み休み空を飛んでいくと、街の片隅に、今にも崩れそうな小さな家があった。

孔雀が扉が無くなった窓から中をのぞいてみると、頭にタオルを乗せ、ベッドに横たわる女性がいた。

女性の頬はやつれ、顔は熱で赤くなっていて、目は閉じていた。

だが、女性の布団は、ぼろきれを縫い合わせたような布一枚だけだった。

その後ろに、大きな写真が飾られていた。そこに写っていたのは、間違いなく

もっとみる
【小説】美しい孔雀 2

【小説】美しい孔雀 2

そして、この日もまた、孔雀の召使いたちは、その「生ける国宝」を丁寧にカンガルー革製のお出かけ用バッグに入れ、王様の馬車の座席に乗せた。

季節は春。

南風が窓を開け放った馬車を通り抜け、かぐわしい花の香りを運んできた。

孔雀は、一体どんな美しい花が咲いているのだろうと思い、お出かけバッグの中から首を伸ばした。

するとそこには、美しい街並みが見えた。

おそろいの煉瓦屋根と、それぞれ異なったパ

もっとみる
【小説】美しい孔雀 1

【小説】美しい孔雀 1

ある国に、一つの城があった。

その城は、王様の住んでいる城で、この国の中で一番大きく、立派なものだった。

真っ白な大理石に、金の装飾が施された柱、赤いビロードの敷かれた床、七色に輝くステンドグラス、細かい装飾が施され、素晴らしい絵が描かれた天井…。

しかし、この、他に類を見ないほど豪華で美しい城の中にも、それと同じぐらい、いや、それ以上に美しいものがある。

それは、王様の居室に住まう、一羽

もっとみる
【小説】海の涙 12

【小説】海の涙 12

 

遥希と海音は、もちろん、あの浜辺へと足を運んだ。

二人は浜辺を走り、叫び、波や海の生き物たちと戯れて…。

そして夕方ごろ、またあの「君とみた海」を歌った。

海音の透き通った声と遥希のハイトーンボイス、そして波の音が、見事な調和をなしていた。 

歌い終わった後、遥希はぽつりとこう呟いた。

「この歌は、ぼくたちの歌だね」

「私もそう思う…」

夕日が空に紫と桃色のグラデーションを生み

もっとみる