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無慈悲な大人と給食委員会



大人は時に無慈悲だ。そう思える経験が中学生の頃にあった。




私は比較的真面目なタイプなのだが、中学の時は全く勉強をしていなかったので内申点がとても悪かった。





そのため、何かしら加点ポイントが欲しく委員会の長をやることを決意し、就任したのが給食委員長だ。





活動内容は正直何も覚えていない。定期的に集まりがあったような気もするがそれすらも曖昧である。仲の良い友達が一人いたのは覚えているが、遊んでいた記憶しかない。






そんな給食委員会だが、年に1度「給食評議会」なるものに参加をしなければならない。なぜかその評議会の記憶だけは今でも鮮明に覚えている。本当に地獄だったからだ。





給食評議会の参加メンバーは、基本的に給食室のおばちゃんたちである。その中に、給食委員長と副委員長が参加する機会が年に1度だけある。






つまりは完全にアウェーな会議に参加することにとなるのだ。いうならば給食界のG20の席にどこかの村の村長が来ちゃいました、くらいの覚悟で参加しないといけない。






そしてただ参加するだけならまだしも、クラスの生徒たちの意見を給食のおばちゃんたちに伝えなければならない。これがなかなか大変なのだ。






私は委員長だったのでクラスのメンバーから意見を吸い上げた。給食に対して様々な意見が出たのだが、その中でもとりわけ多かった意見がこちらだ。


















「給食に豆が多すぎる」













確かにその頃は豆が多かった。豆サラダに豆カレーみたいな日もあった。1日2豆とは恐れ入ったが、とりあえず困ったら豆。都合のいいやつみたいに可哀想なくらい豆がこき使われていた。








そんなこともありクラスからの豆へのクレームがすごすぎて、給食評議会では豆の使用過多ついて意見することとなった。











そして決戦当日。張り詰めた空気の中、給食評議会に参加した。様々な議題が話される中、ついに生徒代表、給食委員からの意見のターンとなった。私は生徒の声をそっくりそのまま伝えた。











「生徒たちから、最近豆が多すぎると意見をいただきました。豆も苦手な人もいるのでどうにかならないでしょうか」








この時点で私の心臓はばくばくだ。当時はまだ中学生。大人に囲まれた中で意見をいうの経験などほとんどない。






そんなコンディションにありながら私は返答を待った。そして間も無く返ってきた言葉がこちらだ。















「いや、栄養のバランスを考えたら仕方ないんですけど。」













一言で完敗だ。まさに1ターンキル。







大人からこんな辛辣に正論を言われてしまったらぐうの音も出ない。反論しようがないどころか声も出なかった。たまたま年に一回評議会に出た栄養の素人、ましてや中学生がここまで正面から殴られたら、もう何も言えず立ち尽くすしかない。






まあ実際そうなんだろうけどもう少しオブラートに包んだ言い方はなかったのだろうか。





「確かに最近多くてごめんなさい。でも成長期だからしっかりと栄養のバランスも考える必要があって、豆って色々と体にいい成分が入ってるからどうしても多くなっちゃうのよ。でも検討しますね。」






くらいの返事をしてくれてもいいのではないだろうか。相手は何も知らない中学生だ。「仕方ないんですけど”」って言われても困るんですけど











私は「わかりました」と言って席についた。地獄だった。もう二度とこんな会議出たくないと思い後輩にも語り継いだ。給食委員はやめておけ。評議会でズタボロにされる。










大人は時に無慈悲だ。身を以て感じた。今もまだこの言い伝えが残っているかは不明だが、あの日の経験は絶対に忘れない。そして少なくとも私は子供に対してはもう少し寛容になろうと思う。








そんなことをふと思い出した日曜日だった。





おぎそ






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