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ライター雑記(その49) 貨幣にすべてを依存するのはコスパが悪いのかもしれない

現在社会において、多くの人は、自らの労働資源を会社や市場に投下し、その対価として賃金を得ている。もちろん、それはフリーランスや個人事業主にとっても例外ではない。

しかし、私は最近、こう思うようになった。タイトルでも記述した「貨幣にすべてを依存するのはコスパが悪いのかもしれない」という考えだ。本稿では、なぜこのような思想が頭によぎるようになったかを語りたい。

そもそも貨幣の役割とは

そもそも貨幣には価値尺度機能交換機能価値貯蔵機能の3つの機能がある。

価値尺度機能は交換される財・サービスの価値を、ある貨幣の数量で一元的に表示する機能、交換機能は財・サービスを交換するうえで仲立ち・媒介となる機能、価値貯蔵機能は財・サービスに対する購買力を蓄えておく機能をそれぞれ意味する。

このような物質的存在として貨幣単体では成り立たない。ある貨幣は、商品取引における交換を媒介する手段として、人々の間で広く受け入れられる一般受容性を持った時に初めて成立とされる。

参考文献
ファイナンス用語集「貨幣」みずほ証券、一橋大学

なぜ貨幣は生まれたか

さまざまな考えがあるが、私は、貨幣が誕生した経緯について、社会の高度化、分業化に伴い、個人が入手できる物品が限られるようになったためだと考える。

事実、貨幣の源流は、貝や布、家畜、石といった物品貨幣だ。物品貨幣は、物々交換の代わりに生まれた仕組みであり、人々の暮らしを飛躍的に便利にした。

しかし、文明の発展とともに、物品貨幣ですら、入手や貯蔵といった面で、不便とみなされるようになった。そこで、生まれたのが、金や銀、銅などを原材料とした金属貨幣である。日本では7世紀後半、有史初となる金属貨幣とされる「富本銭」が誕生している。

その後、人口の増加に伴い、金属貨幣を作るための金属が不足するようになったことを受け、紙幣が誕生した。なお、日本で最初の紙幣は、三重県の商人の間で使われていた「山田羽書(やまだはがき)」とされている。

参考文献
いよぎん金融教育教室「お金歴史館」伊予銀行

なぜ貨幣はコスパが悪いのか

ここまでの説明では、貨幣は、保有する機能や、誕生した経緯など、多様な面で合理性があることがわかる。

では、なぜ私は貨幣についてコスパが悪いと感じるのか。

その理由は、現代社会における貨幣とは、森や水などの社会の富(コモン)にアクセスできない「持たざる者」が、唯一生計を成り立たせるツールになっているためだ。

本来、農業や漁業を通じて自ら生産物を入手できたり、コモンを所有したりしていれば、貨幣に対して全面的に依存することはない。

しかし、現代社会では、資本家や国家によってコモンが解体されるとともに、コモンの独占が起きていることから、人々はコモンにアクセスできないうえに、貨幣なしで生きることが難しくなっているのだ。

これは、マルクス経済でいう「囲い込み」と呼ばれている。

もちろん、私は、お金を稼ぐことを否定しない。お金は個人がわざわざ生産物を作る手間をなくしたほか、生産物を作る時間に代わり、人々がコミュニケーションに従事する時間を増やすことに寄与したといわれるためだ。

それでも、世の中の主流ではないかもしれないが、人が貨幣に100%依存する状態は健全とはいえない。資本主義が発展する前の人々が生活を送っていたように、現代人も、森や水などのコモンを所有し、貨幣への依存度を下げる方法を模索するべきだと思う。

貨幣への依存度を下げる生きる方法とは、いわば、農業や漁業などの一次産業に従事することだ。私は、ホワイトカラーの仕事に従事し金融資産の最大化に努めながら、コモンを活用し一次産業にも従事する生き方が、現代を生きるうえでの最適解の一つだと考えている。

参考文献
前山三都里(著)、斎藤幸平(読み手)『マンガでわかる!100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ』宝島社(2022年)

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