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WINTER CUP 2022 鹿児島県予選レポート①女子の部

高校バスケの最高峰、ウインターカップ。10月下旬、2週に渡り開催された鹿児島県予選にて、女子は鹿児島高校が優勝(13年ぶり5回目)、夏のインターハイに続き全国への切符を勝ち取った。準優勝は連覇を狙うもわずかに届かなかった、れいめい。3位には鹿児島女子と鹿屋女子が入った。男女準決勝、決勝の会場となった薩摩川内市のサンアリーナせんだいではメインコートが舞台。スタンド席を設けた会場から、多くの観客が声援を送った。

女子決勝「鹿児島高校 vs れいめい」

頂上決戦、Tip Off!

3年生のエース鎌田を中心に、決勝まで順当に勝ち上がってきた鹿児島。一方、昨年のウインターカップ優勝校れいめいは、前回の優勝を知る主力の2年生をけがで欠きながらも、準々決勝で鹿児島純心女子を退け、準決勝では鹿児島女子とのデッドヒートを制し、勢いに乗る。スタートは全員1年生という布陣で挑んだ。鹿児島のスタートは4番山下、5番山本、6番西田、7番伊地知、8番鎌田。れいめいは10番田畑、11番栗下、13番山下、16番田中、17番松下。高さでやや分のあるれいめいに対し、鹿児島はスピードと経験を生かしたい。鹿児島優位が予想された立ち上がり、13番山下のエンドワンでれいめいが先取点。鹿児島6‐10れいめいとなったところで、鹿児島が早めのタイムアウト。追うかたちとなった鹿児島だが4番山下、8番鎌田、7番伊地知が得点を重ね、最後は22-18とリードして1Q終了。れいめいも思い切りの良いプレーで、ほぼ互角の展開に。

2Qに入ると両チーム緊張もほぐれ、双方よく練られた攻撃を繰り出す。鹿児島6番西田、5番山本の3連続得点に対し、れいめいも17番松下の得点でなんとか離されまいとする。8番鎌田にマークを付けて得点を抑えるも、アシストで味方の得点を引き出す鎌田。7点差がついたところで、れいめいタイムアウト。スローインからのセットオフェンスで10番田畑がスリーを決めれば、鹿児島も4番山下、5番山本がスリーでお返し。見ごたえのある攻防で、あっという間に時間が過ぎる。43-40と鹿児島がリードを保ち、折り返す。

後半開始直後、れいめい11番栗下がスリーを決めて同点に追いつき、16番田中のドライブで逆転に成功すると、れいめいはディフェンスのギアを上げる。高い位置からボールマンにプレッシャーをかけ鹿児島の攻撃を遅らせ、ゴール下を固めるれいめいに対し、鹿児島はファウルを取ってのフリースローで応酬する我慢の時間帯。れいめいの3年生4番村田がチームに活を入れると、8番鎌田も華麗なプレーでエンドワン。れいめいはインサイドで点を取るものの、突き放すところまでいけない。58-60とれいめいリードで3Q終了。前半5人で戦ってきた鹿児島には少し疲れも見えたが交代を入れてしのぐ一方、厳しいディフェンスを続けてきたれいめいは個人ファウルがかさみつつあった。

試合の終盤、気合いを入れる鹿児島

おたがい一歩も引かずに迎えた最終クォーター、熱戦に会場のボルテージは高まる。観客席の声援が10人のプレーヤーをコートに送り出す。鹿児島7番伊地知のスリーポイントを皮切りに、両者とも気力、体力を振り絞った攻防が続く。れいめいが田畑、栗下、松下の得点で6点のリードを奪うと、鹿児島がタイムアウト。キャプテン4番山下がガッツを見せフリースロー、エンドワンを取る。れいめいのディフェンスが少しずつ付ききれなくなり、伊地知のエンドワン、鎌田のスリーポイントが決まり再逆転、さらにはリードを奪う。残り2分を切り、8点ビハインドでれいめいタイムアウト。フロントコートでの再開を選択し、10番田畑がエンドワン。れいめいはスローインをスティールされ、パスカットから走られても、折れることなく踏ん張った。最後はやや体力を消耗したか、鹿児島の集中力の前にミスが出て、伊地知のスティール、スリーポイントが勝利を祝福するようにネットを揺らした。86-83、ワンポゼッション差の好ゲームで女子決勝の幕は降りた。

今夏のインターハイ予選、鹿児島の打ち出したスタイルは正に鮮烈だった。ティップオフから火花が散るような速攻、先制パンチ。アメフトのようなタッチダウンパスに巧みなパスワーク。かつてサッカーのクラブチーム、バルセロナが見せたパスサッカー、ティキタカを連想させる「走るバスケ」で、頂点まで一気に駆け抜けた。当然、相手チームも対策を取ってくる。早い戻りで走らせない。得点源を徹底マーク。それでも鹿児島の牙城は崩れなかった。前から詰められても焦らない、長短の正確なパスで相手をずらし、内外とバランス良く、5人がどこからでも得点できる。決勝は6人で戦い抜き、精神的にも体力的にもタフだったと思うが?と向けると、山下キャプテンは「1日1試合だったから」と、ほほ笑んだ。

鹿児島・庵下 晃代 ヘッドコーチ

庵下ヘッドコーチ「自分たちがやってきたことを最後まで信じてやれた」

-優勝おめでとうございます。インハイ優勝校として、決勝まで順調に勝ち進んできたように見えました。チームの調子はどうでしたか。
庵下HC「準決勝までは選手を全員使いながら、自分たちがやりたいこと、練習してきたことを、しっかり全員で戦えるようにしてきました。チームにはけが人が出るなど、決してベストな状態ではなかったんですが、とにかく、みんなでサポートしながらやる、ということで決勝まで進んできました」

-スタートは不動のメンバーといえる5人
庵下HC「1年半以上、ずっと新チームになってから、この5人が核になってやってきました。4番山下、7番伊地知、8番鎌田の3枚が目立つ感じがあったんですが、5番山本、6番西田もすごく力を付けてきたので、そういうふうに見てもらえるようになったかなと思います」

-決勝の準備は
庵下HC「3年生が多い分、鹿児島女子が来るかなと思っていましたが、もちろん、対れいめいの準備もしていました。れいめいさんは高い位置からプレスかけてくる、うちの走るバスケを少しペースダウンをさせる目的で徹底してやってくるだろうと思っていたので、楽に勝てる試合ではないというのは覚悟していました」

-選手への指示は
庵下HC「(プレスに対し)そこでミスをしないでハーフコートまで運んでしっかりとバスケットしようというのと、ディフェンスリバウンドが勝負と。れいめいにオフェンスリバウンドを取らせない。オフェンスでは一人ひとりがきっかけを作って、フィニッシュまで決めきるところはこだわってやってきました」

-序盤こそ先行されたが、中盤までやや有利の展開。後半、逆転を許し苦しい時間帯もあった
庵下HC「第4クォーター、6点ビハインドになった時(61-67、残り7:47)にタイムアウトを取りました。今までだったら、選手のなかでも不安だったり、ネガティブな感じがあったかもしれない状況でしたが、インターハイを経て、自分たちがやってきたことを最後まで信じてやろう、絶対にリバウンドを頑張ろう。これをやり続ければ、かならず最後勝てる!と送り出しました。選手も信じてやってくれた結果だと思います」

-全国の舞台に向けて
庵下HC「インターハイでは初めての全国で、相手のスピード、フィジカルの強さ、シュート力に圧倒されて、思うように戦えなかった。ウインターカップでは、まず1勝を目指して、自分たちがやっていることの精度を高めていきたいと思います。みんな性格も明るく、いい子たちです(笑)鹿高らしいプレーができるよう、頑張ります」

左からキャプテン山下、3年生の鎌田、副キャプテン伊地知

山下陽色キャプテン「庵下先生だったから優勝できた」

-ウインターカップ県予選まで
山下「インターハイの県優勝を経て新チームになり、いろいろ問題があって上手く行かない時もありましたが、そのたびにみんなで話し合いをして
チームを立て直して、予選にはいい雰囲気で臨めたと思います」

-決勝を振り返って
山下「決勝は競り合うと思ってました。相手の勢いもあって、序盤は自分たちらしいプレーが出来ていなかった。ゲームが進むにつれて、最後あたり、みんなで声を出し、絶対勝つ!という気持ちを持ち、コートに入りました。勝つ自信はありました」

-キャプテンになったのは
山下「みんなの投票で推薦され、先生も認めてくれました。チームは個性豊かで、面白い人もいれば、静かな人もいる。静かな人でもチームになじめるよう明るい雰囲気で、いいチームだと思います。自分は人前で発表するのも苦手で、あまり好きじゃないんですが、このメンバーは素直に聞いてくれるので、とてもやりやすいし、ありがたいです」

-鎌田さん、監督はどんな人?
山下「まりあさんは、とても頼りがいがあって、チームのことを一番理解しているので、アドバイスをくれます。自分の足りないところをカバーしてくれて、とても頼りになる先輩です。監督は厳しく叱るところは厳しく、自分たちが面白いことを言ったら、笑ってくれたり。先生が監督だったから、優勝できたと思います。ウインターカップでは、負けた人たちの思いも背負って、絶対に1勝したいと思います!」

#7 伊地知優果「まずは一回戦を突破したい」

-優勝して
伊地知「ほっとしました。前半良くなくて、後半は5人全員が勝つというのを強く思っていたので、自然といいプレーが出来るようになりました」

-最終クォーターでスリーポイントシュート2本含む16得点、勝負どころのスティール。あれは狙っていた?
伊地知「やってやろうと思ってました。副キャプテンになり、まだ鎌田さんに頼っているところがあるので、もっと頑張りたいと思います。憧れの選手は…まりあさんです(笑)全国での目標は…まずは一回戦を突破することです!」

#8 鎌田まりあ「鹿児島の代表として、恥じないプレーを」

-決勝を振り返って
鎌田「なかなか自分たちの走るバスケができず、相手の思うような展開になってしまったけれど、勝ち切れたので良かった。(徹底マークがついたことに対し)鹿児島女子にはフェースガードされるかなと思っていたが、れいめいがするとは予想していなかったので、正直あまりうまく対応できなかったです。全国ではもっとマークが厳しくても決めたいなと思います。最後は気持ち、3年生の自分が引っ張るという気持ちで、最後まで頑張りました」

-観客が沸くプレーで魅せてくれますね
鎌田「魅せるプレー、というのは意識していないが、男子の上手いプレーや、上手な人のプレーを見て、マネしようとは思っています」

-オフェンス力はどうやって磨いた?
鎌田「ひとつ上の兄の影響でバスケを始め、小学校のころはよく1対1をしていました。負けず嫌いなので、結構思い切りぶつかっていったり。オフェンスの上手な人とやることで、鍛えられたかなと思います」

-鹿児島高校を選んだのは?
鎌田「伊敷台中学校の時に、西堂先生(鹿児島高校男子ヘッドコーチ・女子アシスタントコーチ)から声をかけてもらい、高校で1番ポジションをして欲しいと。中学校ではフォワード、高校からガードで、ちょうど庵下先生が入ってこられて、ガードのことをいろいろと教えてもらいました」

-ウインターカップへの意気込み
鎌田「鹿児島の代表として恥じないプレーをして、鹿児島のチームでも勝てることを証明したい。上のカテゴリーでやることは今のところ考えてない。鹿高らしいプレーをして、全国の舞台で力を出し切りたいと思います」

左から6番西田、4番山下、8番鎌田、5番山本、7番伊地知

WINTER CUP 2022

令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会は2022年12月23日(金)~12月29日(木) の7日間、東京都渋谷区の東京体育館を中心に男女各60チームにより開催されます。試合の様子は「バスケットLIVE」などのライブ配信やテレビ放送で視聴可能。鹿児島高校の応援、よろしくお願いします!

全国の舞台で勝利を

取材・文/泊 亜希子
(2022年10月)



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