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世界平和

ホテルの朝食が終わる頃、客室係の仕事が始まる。彼らは使用済みリネンを運ぶ大きなカートを引いて各階を移動しながら仕事をする。
従業員とゲストがエレベーターを共用しているこのホテルでは客室係との同乗は日常的だ。
おかげでエレベーターがほぼ各階停止になり、急いでいてもちっともロビー階に着かない。

客室係がカートと共に乗ってきた。けっして小さくないエレベーターの箱が、3分の1くらい埋まってしまった。私を含め数人は乗っていたが、まだ多少のスペースはある。
ロビー階にはなかなか着かない。閉塞空間が続くと気づまりだ。

次の階で英語を話す中華系の人が乗ってきた。エレベーター内の様子を瞬時に把握したその人は、フィリピン系の客室係にカートを指差して「乗っていいかな」とおどけて話しかけた。エレベーターには日本人の私、欧米人。客室係の「どうぞ」の返答に人種を超えた笑いがおこった。



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