クリップぼこぼこ、クリップぐにゃぐにゃ(ガルラジ特別編2-4)

超声優祭2021で放送されたガールズニコニコデイズチーム徳光で長縄まりあさんと河瀬茉希さんが、特別編Unlimitedでは河瀬さんから吉田さんへ「逆輸入」されて反映されているものがあると話していた。

演者の個性がキャラクターの個性として立ち現れるのと演者の属人的な事柄(例えば趣味や好み)がキャラクターに持ち込まれるのとでは全く違うので、後者だったらあんまり面白くないなと身構えていたのだが、「逆輸入」の箇所を聞いた瞬間そのガルラジらしさに思わず唸ってしまった。

該当箇所はUnlimited徳光、20分あたり。
シャッフル編を振り返りつつ、自分のことをごまかさずに語る吉田さん、その手元を見て海瑠がひとこと。

海瑠「台本とめてたクリップ、ぐにゃぐにゃじゃないですか」
吉田「緊張すると、これやっちゃうんだよね~」
海瑠「吉田さんが緊張とか……」
吉田「いやぁ、することもあるって」


もとはガルラジ情報局#1・チーム徳光パートで、河瀬さんが緊張して「クリップをぼこぼこに」しながらセリフを言っていた(18:40)という話があり、またシャッフル編第7回(みみもとティータイム)アフタートークでも「緊張するとクリップぼこぼこにしてしまうクセがあるので」(7:10)と話していて、特別編Unlimitedではこのクセが吉田さんの仕草として反映されている。

これがいかにもガルラジらしいというのは、"ガルラジでしゃべっている最中(つまり河瀬さんの収録中=吉田さんのトーク中)"に起こっていることだからだ。
ガルラジは台本の言い回しの変更や追加、つっかえたり噛んだりするアクシデント、咄嗟の反応といった突発的・偶発的なものもキャラクター自身のこととして活かされることが多々ある。意図的なものも偶発的なものも、台本通りでもアドリブでも、それらのセリフはいずれも等しくキャラクター自身のトークである。そしてセリフばかりでなく、例えば台本をめくったり飲み物を飲んだり、何かに手などをぶつけたり(岡崎1-2-23:00Unlimited富士川5:10)といった演者自身の身体的な動きもキャラクター自身の仕草としてあらわれることがある。

ガルラジは一本のラジオドラマが同時に一本のラジオ番組として成立しているので、ラジオで〈しゃべる〉という一点において演者とキャラクターが不思議な仕方で重なっているのだが、それに準じて、収録中の演者の仕草もラジオ中のキャラクターの仕草としてあらわれることがあり得るのだ。
だから徳光2-1で緊張してクリップを「ぼこぼこ」にしていた河瀬さんのクセが、緊張するとクリップを「ぐにゃぐにゃ」にする吉田さんのクセとしてあらわれるのはガルラジ的に実に自然なことではないだろうか。

アクシデントも含むアドリブ的なものが即時に活かされ、台本にはなかった吉田さんの相槌がのちに台本に反映されるのと同じように、クリップを指でねじ曲げる仕草が反映されている。
「ぐにゃぐにゃ」のクリップは、演じられたものではなく河瀬さん自身のクセの反映だからそこが意外な感じがするが、河瀬さんがガルラジ(という物語)に臨んでしゃべっている(演じている)とき、それは同時に吉田さんがガルラジ(というラジオ番組)に臨んでしゃべっているということなのだから、こうした重なりのなかではぐにゃぐにゃのクリップにおける反映の仕方も充分にガルラジ的な出来事だ。
何より、シャッフル編を経て自分のことをごまかさずに話そうしている吉田さんに、海瑠が少し驚きつつも軽いツッコミ(「筋は通す女」に対する「ぐにゃぐにゃ」)のようにクリップに言及するのが、この二人らしくて良い。

徳光2-1では河瀬さんの緊張が吉田さんのしゃべりにあらわれないようにぼこぼこにされていたクリップが、今回は普段は見せない吉田さんの緊張をあらわすものとして言及されているのもなんだか面白い。そしてクリップの元ネタを知らない場合には、ぐにゃぐにゃクリップのくだりは単に"吉田さんの"意外な一面、あるいは"ラジオだから見えない"表情や仕草への言及の一つ(Unlimited徳光27:00)としてふつうに聞こえてくるはずで、そこがまた面白い。ガルラジっていいねぇ。


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