2022年道路交通法改正を読んでみる
JX通信社/WiseVine 藤井です。
公共系の仕事に関わっていると、法令の改正や制定に関するニュースに敏感になるのですが、今年も道路交通法が改正されるようです。
道路交通法は実は毎年のように改正されていて、特に最近では、危険運転に関する厳罰化や、自動運転技術に対応するための改正が多くあります。こういったサイトでまとめられていたりするのですが、特に今回(2022年4月)の改正は範囲が広く、報道ごとに注目されているポイントがまちまちだったりするようです。せっかくなので、一つずつ改正ポイントを読み込んでみることにします。
なお対照表などはこちらにあります(ページの一番下。なぜ新しい情報を下にした…?)
たぶん一番インパクトが大きいのがこの部分だと思います。
「特定自動運行」の定義は下記のとおりとなっています。
ここでいう特定自動運行は、いわゆる自家用車のオートパイロット(それは「当該自動車の状況に応じて当該自動車の装置を操作するものがいる場合、なので)ではなく、自動運転バスとかのことを指していると思われます。これらの監督をする「特定自動運行主任者」という役割も定義されました。
これも話題になっていましたが、電動キックボードが免許不要と定義され、ヘルメットは努力義務になりました。ヘルメット義務化の声はずっとありましたが、実態に合わせる方向になったようです。
「一定の速度以下に最高速度が制限されており、それに連動する表示がなされているもの」は歩道を通行できる、という謎の言い回しは、glafitの「モビチェン」が法律で具体的に裏付けされた形ですね。こうして、具体的な解決策をベンチャーが提示して、そこに法律が追従する、というのは、いまの時代の道路交通法らしい動きだと思います。
自動配送ロボットは「遠隔操作型小型車」と呼ぶことになったようです。クルマでも、軽車両でもない、法律上謎の存在でしたが、「新たな交通主体」のひとつとして、こうして名前がつき、公安委員会の管轄として定められることで、物事が進んでいきます。業界団体としてロボットデリバリー協会も発足し、もう少しすると、特区以外の場所でも普通にロボットが走行し始めるのだろうなぁと思います(個人的にはロボットが走れる街は、バリアフリーの進んでいる街だと思うので、とてもいいことだとおもう)
さらに、マイナンバーカードへの運転免許の書き込みについても具体的に動き始めました。券面上では見ても運転免許が入っているかどうかはわからないようですが、任意で書き込みが希望でき、その場合は運転免許証を別途交付してもらうかどうかも選べることになるようです。
マイナンバーカードに固有の情報(性別、個人番号、有効期限、顔写真)は警察からはアクセスできないようにする、らしいですが、どうやってやるのかはよくわかりません。免許証の提示を要求されたときにマイナンバーのパスワード忘れてたらどうなるんだろう。
そのほか、ちょっとおもしろい改正ポイント。
なにか難解な哲学書を読んでるような気持ちになる一文ですが、電動車いすよりも少しスピードが出るけど、車道を走るのは無理なスマートモビリティについて、「確かになにか(移動用小型車と呼ぶことにする)に乗っているが、歩行者である」という解釈を与えたわけですね。
ところで、ここまで読んで、4月から施行だと大騒ぎの「白ナンバーでも社用車運転前のアルコールチェック義務化」が全然出てこないじゃないか、と思ったら、あれは道路交通法施行規則(省令)の改正なんですね。こんな生活に大きな影響を与える部分が省令なのはちょっと意外でした。
というわけで、↑の記事のタイトルはちょっと間違ってるかも。
自分の仕事(地方自治、防災、AI)について知ってほしい思いで書いているので全部無料にしているのですが、まれに投げ銭してくださる方がいて、支払い下限に達しないのが悲しいので、よかったらコーヒー代おごってください。