あみもの短歌 第十八号(一首選の続きです)
車窓からみえる景色のさびしくてちょうどよかったさばの押し寿司
ひらがながすき/梶原一人
はたらけどはたらけどあなたのうたをわかった気になどなりたくない
もつれる/朝野やや子
分けあたう夏柑の水、生きていることに一層心は動く
雨と果実/坂中茱萸
(感情と、写真のような情景とがきれいに調和しています。一首目の「赤」に目を惹かれました)
世の果ての上終町のカフェテリアあまりの距離に待ち人来らず
HOTからICEに変わる梅雨晴間/源薫
分け合って飲んだら恋と勘違いしてしまいそうピーチネクター
のみもの/キール
丁寧に切り刻んだら蓮根の孔もわたしも駄目になるじゃん
永眠のあと/ひろうたあいこ
オルゴールの最後のほうのゆっくりと終わらないまま途切れる感じ
眠れない/くろだたけし
マンモスが京都の街に振り注ぎ京都タワーに串刺しになる
象の降る街前編/あひるだんさー
喉の奥までこみ上げた熱があり叫び方など忘れてしまった
アイスクリーム/岡田奈紀佐
一反木綿洗えますかと訊く人のありてYAMADAに春の訪れ
もののけDays /若枝あらう
(ちょっと前の若枝さんの「マフラー」の短歌思い出してしまったのですが今回は妖怪というシュールなお題でした。)
全身を濡らして歩くひとがいて何秒くらい走っただろう
雨の日/まるち
(不思議な感覚の短歌でした。五首の連作でしたがもっと読んでみたいです。)
雨除けのベールを外しキスされてわたし六月の花嫁みたい
六月の花嫁/華栄
湿度計のない部屋で死ぬそれまではふたりのんびりあやとりをする
ちょっとだけゆううつ/冬樹
シマウマのシマのことだけを考える夜があってもいいんじゃないの
シマウマガール/からすまぁ
雨上がり空にカメラを僕たちの今日のいいこと候補になるね
ふたりの景色/夜凪柊
「前世ではシチリア島の修道士」占い結果に頷いていた
妄想ツアーズ/諏訪灯
わたしにもいらない部屋のあることをプールのない夏の日に知らされ
いらない部屋/秋
そもそもが圏外だろう呪ってもあなたはわたしの夢など見ない
さよならランキング/宮下倖
作りすぎたカレーで生きる平日にチョコプラがチョコプラをしていた
準備の季節/橙田千尋
恋でなく憎悪でよかった君の目が燃え盛るわけ青嵐吹く
枯れぬ瞳に愛し青/米澤静香
生き物が全くいない水槽を眺めるボクはここで生まれた
アクアリウム・バルカロール/西淳子
我ひとり嫌ったところでノーダメのグリンピースがころころ笑う
好きなもの食べて生きていく/穂積文月
カツ丼はこんなに肉がかたいっけこんなにはやく冷めていくっけ
テイクアウト/安錠ほとり
ブイアールゴーグル着けた安楽死一緒に逝ける一本を見る
一本を見る/菊池洋勝
バイシクルばいばいしてくるがむしゃらに漕いで海とか行くんだどうせ
花束を煮る/ぼうふら
(汚い言葉を使うと大抵、歌が崩壊してしまうんですが、まとまっていますのでぼうふらさんはある意味でプロなんだと感じてしまいました。)
【後記です】
いつか、一首選をしてみたいと思っていたのですが、今回やらせれていただきました。気を付けたつもりですが、誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。(あと、載せないでという要望などなどもあればお願いします)
自分は選評が苦手だったものであまりしてこなかったのですが、こういったことをするというのは好きなもの、こと、人に対してはっきり気持ちを伝える行為にも似ていて、なんだこんな楽しいことを皆やっていたのねっていう感じがしています。
連作の中から一首抜き出すのってなかなか難しいですね。はじめは小難しいことを考えたりなどして選んでいたのですが、そうではなく、その人らしいものであれば多少伝わりにくかったり、短歌のわくを多少はみ出ていても選んでみてもいいのかなと感じたりしました。
という感じです。勝手に参加でしたが、ありがとうございました。
ポエム、詩、短歌などを作ります。 最近歴史に興味があります。