いつでも会えたはずの母親に二度と会えない、人生で一番最初の失敗談

結論を最初に書いてしまうと「いつでも会えるけど、しばらく会っていない大切な人がいるならいますぐ会いにいけ」ということ。

僕が6歳になる年、父と母は離婚した。具体的に離婚届を出した日は不明だけど、春と夏のあいだくらいだったと思う。

母は三人の息子を置いて家を後にした。
家をあとにするとき、玄関先で僕たちに向かって「ばいばい」と言っていたことを覚えている。

世間一般的に、母親が子どもたちを置いていくなんて状況はよほどの事情だろうと思われるけど、まぁ、詳細はここには書かない。
言えることは、父親は父親としては超絶尊敬できて、男としても素晴らしいと思うけど、夫としては今ひとつだったのかもしれない。
こんなこと、父親本人に言ったらぶん殴られるかもしれないけど……。
まー、父親は息子たちの絶対的な味方であったし、今でもそう。
なので断言する。夫としてはだめだったかもしれないけれど、父親としては100兆点、それが僕の父親だ。

なので、母親について、僕はなんとなく「もう会えないんだな」くらいに思った。父親いわく、当時の僕は完全にママっ子で、いつも母親に付いて回っていたから非常に心配していたと言われたけれど、当の本人である自分は「母親のことは話さない」という謎の決意があった。
なぜそう思ったのかは今だとなんとなく分かる。

(あ、置いていかれた)

いつもどこかに連れて行ってくれた母親が、自分を置いてどこかへ行く。
それだけで僕にとって、残された父親のことばかり考えるようになるには十分な理由だったのかもしれない。

母親がいなくなった夜から明けた朝に食べた父親が用意したご飯は死ぬほどまずかった。
多分、初めてご飯を炊いたんだか、料理したんだか分からないけれど、お粥みたいにべちゃべちゃな白米は食べられたものではなかったし油でギトギトに炒められたソーセージも臭かったし、カッピカピになるまで焼かれた卵焼きなんかどうやって作ったんだよ、くらいなものだった。
そして子供の僕はあんぽんたんなので、大好きだった牛乳をぶっかければ美味しくなると思って牛乳をぶっかけて食べた。
くっそまずかった。

そんな過去はさておき、僕は父親に母親の話題は出さないようにしたし、小学校の宿題で母親のことについて書く、みたいなこともあったりしたときは謎の頑固さを発揮して一切提出しないとか謎の反抗を見せたりもしたけれど、心のどこかでは「その気になればいつでも会える、なぜなら母親だから」という考えが確実にあった。

会う機会があったのは高校生か、いつだかのときに母方のお婆ちゃんが亡くなったときだ。
しかし、ここでも僕は会いに行かないという選択をした。
母親どころかおばあちゃんとも10年以上会ってないものだから、そのときですら兄弟で唯一会いに行かないという頑固さだった。今思うとあのときは憎さがあったような気がする。

心の何処かでは「いつか会おう」とは思っていたけれど、幼い頃からずっと思っていただけで実行に移さない。その気になればいつでも会えるのだから。

そして、2011年3月11日の「東日本大震災」である。

母親が住んでいる場所が津波で大変なことになっていたことを知ったので、ネットで毎日公開されていく犠牲者のリストを毎日チェックしていた。

母の名前を見つけた。

自分の中で漠然とあった、母親と会うときのストーリー。
自分が結婚して、子供ができたりなんかしたら、会いに行こうかな、とか適当で、本当今思うとなんの意味もない考えの結果は、もう二度と会えないという事実と、会わない選択を続けていたことと、会える機会があったのに拒絶をしたことだけが残った。

幼い頃から、恐らくは一番最初に「自らの意思で選択し続けてきたことで失敗したこと」を挙げるなら、このこと以外に他はない。

別に珍しい話でもないしこの手の話は世の中にたくさんあるし、あの日に多くできてしまった。

まとめ

それでも言えることは、やはり人の死って予測もできないし、身近な人だろうが、親だろうが、死ぬときはあっさり逝ってしまう。いつでも会えると高をくくっていたら、死に目にすら会えない、なんてことはざらだ。

孝行のしたい時分に親はなし

もし、この記事を読んだ方でいつでも会えるけど、会いにくかったり、会わないという選択をしている方がいるのであれば、機会なんか自分で作って会えばいいと思う。

さて、いっちょ父親に会ってこよう。

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ma-san.org(鈴木正行)

宮城県仙台市・東京都を中心に企業のWebマーケティング/IT戦略のプランニングからWebサイト構築・運用をしています。「Webアクセシビリティ」を中心に、「変わりゆくWebと共にサービス・サイトを改善していくこと」を重視します。 個人サイトは「ma-san.org」
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