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第1回 利用者満足度調査の結果(1)

ウィル訪問看護ステーションのミッション・アクション・バリューのうち、アクションとバリューの中に”アウトカムの測定・成果を追う”を掲げています。その一部として看護を受けている利用者からもきちんとフィードバックをもらう機会を作る必要があると考え”利用者満足度調査”を行った結果をご報告いたします。この記事は点数化できるアンケート結果のご報告で、自由記述の内容ご報告については、こちらの記事をご参照ください。

<調査の対象> 
2019年4月にウィル訪問看護ステーション江戸川、江東サテライトの訪問看護サービスを利用している方全190名を対象としました。※沖縄、一関は今回含んでいません。また過去に利用していた方も対象外となっています。

<調査方法と内容>
対象者へ看護師の手渡しまたは郵送によりアンケート調査を行いました。倫理的な配慮として任意の回答とし回答の有無と内容に関わらず訪問看護サービスへの影響がないことを明示し、回収されたアンケートは個人が特定されぬようにデザイン、回収時に看護師への手渡しの場合は封入を行って頂くことで対応しました。患者満足度の測定には、日本語版のClient Satisfaction Questionnaire 8項目(CSQ-8J)を基本とし立森ら(1999)の文献を参考に調査票を作成しました。患者基本属性・臨床的特徴については、所属事業所、疾患分類、訪問看護サービス利用期間(日)、小児成人分類、を調査しました。更に自由回答欄を設け、「訪問看護サービスを利用する前後で”在宅看護””訪問看護”への印象の変化があったか」「ステーションへの希望・要望・応援メッセージ」の自由記載も加えました。今回使用した調査票は以下です。

<結果>
調査に対する説明同意が得られ、全ての項目に回答が得られたのは107名(江戸川54.8%、江東サテライト62.8%、全体回収率56.3%)でした。回答の分布は以下の通り。全ての質問について満点である4点が最も多く、平均して約70%が4点の回答でした。1点の回答はどの質問においても0%、2点の回答は0~2%でした。

<考察>
全ての質問において3~4点が多かったことから、回答頂いた利用者全体においてウィル訪問看護ステーション江戸川+江東の看護は概ね満足して頂いていると考えられます。一方でこのアンケートに回答して頂けた時点で、ウィルへ好意的な印象を持っている利用者群のバイアスがあると考えられるため、回収できた点数は良い傾向に出る可能性が高い背景も考えられます。

各質問を確認すると、相対的に「④知人が援助を必要としていたらウィルを推薦するか」「⑧また援助が必要になった際にウィルをリピートするか」の質問においては4点の割合が少なく3点に分布が割れていることが分かります。⑧の質問については、訪問看護を利用する方の多くは長期的あるいは永続的に援助が必要な方も多く、”一度終了して再度利用する”という状況の想定がしづらいことも考えられました。④については、東京において数ある訪問看護ステーションの中で”必ず薦める”という選択肢は取りづらさがあったかもしれません。しかし、再度ウィルを利用しよう、他の方にも薦めよう、と感じて頂くにあたって、他の質問と比較し一歩足りていない面があったことは事実で、引き続き誠実に看護をしていく必要があると受け止めました。

上記のグラフは利用期間と合計点数の分布です。横軸は看護を利用している日数、縦軸がCSQ-8の合計点数です。長期利用している方ほど満足度が高いのではないかと思いがちでしたが、利用期間が長い=満足した結果利用継続という相関はないことが見て取れました。利用期間が進むにつれて「さらにお願いしたいこと」も出てきたり、状況や状態が変化し「ニーズ」も変わっていくことから、利用期間に関係なく常に誠実で慎重な看護の提供が必要であることが分かりました。

その他でデータ項目とした疾患分類などの属性については、疾患を複数持っている方も多く、重たる疾患にて分類をしましたが、今回の調査においてはあまり妥当な分類ではない可能性が高く、今後の調査においては調査項目の見直しが必要であると考えました。

調査結果をこれからどう活かすか?

これらの結果をチームにフィードバックし、日々の看護実践を振り返る機会にします。また定期的にこの調査を行い、より良い看護が提供できること、ウィルのチームがより看護・リハ実践に熱中ができるようにしていきたいと考えています。

<参考文献>

立森 久照 , 伊藤 弘人,日本語版Client Satisfaction Questionnaire 8項目版の信頼性および妥当性の検討,精神医学 41巻7号, 1999,pp711-717

<分析サポート>

東京大学大学院医学系研究科地域看護学教室 成瀬昴

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