僕と虫
僕は虫が苦手だ
特に、幼虫や足がいっぱいあるやつが苦手だ
このご時世、テレビは何かとコンプライアンスを気にするが、正直、下ネタよりいきなり虫を映すほうがコンプライアンス違反だと思う。
下半身にモザイクを入れているのを良く見るが、虫にもモザイクをするべきではなかろうか。(たまに、ちゃんとモザイクしている番組もあるが)
僕には、虫レーダーなるものがある。
どんなに身を潜めても無駄だ。僕の目を騙すことなど不可能なのだよ、明智くん。
とあるクイズ番組で、A〜Dの中に虫が隠れているという問題が出た。
瞬殺だった。
僕の虫レーダーが反応したのだ。
Cの、Cの葉っぱに擬態している……!!!!
葉脈だ、葉脈からそこはかとない虫感が漂っているのだ。
無論、正解だった。この問題は早押しじゃなかったが、もし早押しだったら、きっと東大王にも勝っていただろう。
「僕には虫レーダーが備わっている」それを認知したきっかけの事件がある。それは、衝撃映像系の番組だった。
枝や葉っぱが映っている平穏そのものの映像だ。
だけど、僕はその映像を見た瞬間、体が飛び上がり、気づけばテレビから目を伏せていた。
枝だ。枝が虫なのだ。僕がもっとも苦手とする緑のなが〜い虫……。
だけど、何も起こらない。テレビの出演者も何事もなく見ている。
「見間違いか……?」
そっとテレビに目を向けた次の瞬間
葉っぱに降り立った虫を、その枝だと思われていた虫が捕らえたのだ!!!!
「ギャアァァアアァァアァアアァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!」
テレビの出演者も悲鳴を上げた……。遅い……遅すぎるよ…………
出演者の反応なんて信じるんじゃなかった……。自分の、自分の虫レーダーを信じるべきだった…………。
その虫は、枝に擬態するシャクトリムシだった…………。
この一件から、僕は虫レーダーを認知し、今日に至るまで作動し続けている。
だけど虫レーダーは些か敏感なようで、僕の思考を追い越す。虫の要素が目に入ると、脳が判断する前に体に飛び上がるのだ。
一応言っておくと、僕は虫の存在を否定している訳ではない。
確かに、昔は虫に対して残忍であった。だけど、今は違う。
同じ星に住む一つの命だ。それは例え、ゴキブリでも同じだ。
害虫だとか益虫だとか決めたのは人間だ。
ただ、その、見た目が……えー、無、無理……というか、何というか。うーん。
そして最近、昆虫食というのが台頭して来ている。
む、無理だ……。虫を食べるなんて……。
そ、そうだ!可哀想じゃないか!!!!虫だって生きているんだぞ!!!!
…………。
ライオンがシマウマを狩るように、ジンベイザメが大量のプランクトンを飲み込むように、人間だって何かを食べなくては生きていけない。
きっと、生き物が生き物を食べることは、善悪ではないのだろう。生き物にとって自然な営みだ。
もし、何かの動物の住処に仇敵が舞い込んできたとしたら、その動物は躊躇なく排除するだろう。
人間がゴキブリを駆除するように……。
人間に、
罪悪感があるのは、
知性の代償なのだろうか。
虫さんよ、どうかじっとしておくれ。きっと逃してあげるから。
虫さんよ、どうか隠れて過ごしておくれ。きっと共存できるから。
虫さえ苦手じゃなければなぁ……
[虫さえ]と打とうとしたら、ミスって、[虫酒]と打ってしまった。
ヒエッ
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