2023年宝塚記念イクイノックスの評価

2021年有馬記念エフフォーリアに似た評価の難しさ

宝塚記念回顧にも書いた通り、今回の宝塚記念のイクイノックスを見て2021年の有馬記念のエフフォーリアを少し思い出しました。

私は今回のイクイノックスのパフォーマンスは勝ったことは素晴らしいですが、勝ち方自体はそこまで高く評価できるものじゃない気がしたのですが、殆どの著名人や競馬ファンなどは期待通りかそれ以上の満足度での絶賛が多かったです。

今回のイクイノックスのパフォーマンスを絶賛してる人達が2021年有馬記念のエフフォーリアをどう評価していたかを遡って見に行ってみました。
大体は今回と同じくらいエフフォーリアを絶賛していました。

私も当時は本命にしていたエフフォーリアが勝ったことに安堵していましたが(ちなみに宝塚も本命イクイノックス)、秋天や皐月賞などの見事な勝ち方を見てきた人達の一部はオルフェーヴルや祖父シンボリクリスエスのような圧倒的な有馬記念の勝ち方を期待していて、微妙な勝ち方に、「思ったほど強くないな」と言ってる人も中にはいました。
今から思うとあのレベルの相手(欧州帰りのディープボンド&クロノジェネシスに僅差)にあのレベルのパフォーマンスで終わったのは不振の兆候でした。蹄の件も含め。

そのことと照らし合わせると、今回のイクイノックスを高評価する声の信頼性もそこまで高くない気がしています。

ルメール騎手の表情、感想が少し不穏

今回のイクイノックスは2021有馬のエフフォーリア以上に見た目の勝ち方は強いです。
大外ぶん回しに後方一気と宝塚記念ではあまり見たことがない勝ち方で異次元と考えることもできます。
一方で他の上位入線馬を見ると近い位置から近い戦法をとった馬ばかりが並ぶ上に僅差というのを考えると、イクイノックスだけが飛び抜けたパフォーマンスというわけでもないように思えます。
むしろ本来のイクイノックスなら彼らにもっと差をつけて勝ちそうな展開、条件が向いた中での内容かもしれません。
レース後のルメール騎手も会心といえるほどの表情、感想ではないように見えました。

斤量58kgへの対応と今後

とはいえイクイノックスは初の斤量58kg、初の阪神を最高の形でクリア。
適性も基本的には東京、左回りが合うと思うので、東京に戻ればまた素晴らしいパフォーマンスを見せるかもしれませんが、仮に斤量58kgのイクイノックスのパフォーマンスは今回くらいが基本だとしたら今後は絶対の存在ではないかもしれません。

エフフォーリアも古馬になってからもう一度東京でのパフォーマンスを見てみたかったです。
関東、中山での2022年有馬記念では先行馬総崩れの中で先行馬では最先着、57kg斤量馬でも最先着の5着で、内容的にも春の関西2戦よりパフォーマンスがマシになっていたので、戦績内容的に関東の方が合ってたことは確かだったように思います。
単純に能力や精神の減退があったとすれば、春より冬の有馬の方が悪化するはずが、恵まれない展開の中でも比較的良いレースをしています。
または斤量が宝塚記念の58kgから有馬記念では57kgに減ったことで改善されたという可能性もあります。

イクイノックスは3歳秋天や4歳春ドバイと同等の強さが発揮できるなら4歳秋の東京でならドウデュースにダービーのリベンジをできるはずと思いますが、斤量58kgに苦しむならG2とはいえ同コースの斤量58kgで下げるどころか進化したパフォーマンスを見せたドウデュースの勝機が出てくる可能性もあるかもしれません。

とはいえ、ドウデュースは結局ドバイを回避しその後も使えなかった馬で、秋も順調に出てこられるのか分かりませんから、イクイノックスが絶対的に有利なはずです。

一方でイクイノックスも既に今引退しても問題ないくらいに実績を積み重ねてきたので、もし何か夏~秋に順調さを欠けば引退即種牡馬入りということもありえなくはないでしょう。
現状でも欧州などへの海外挑戦を期待する声も国内外からある中で、ドバイ以外の海外に色気を見せないくらいによく言えば冷静に、悪く言えば臆病に適性と調子を見極めつつ大事に使ってきましたから、史上最強馬候補への階段を上り始めたかと思ったら急に不振に陥ったエフフォーリアの件もありますし、中途半端な調子なら戦績を汚さずに種牡馬にしようという雰囲気になってもおかしくない気がします。
今の時点でも秋の目標を「秋古馬三冠」とか言わずジャパンカップ(のみ)と言うわけですから、順調でも有馬記念との秋2走、ジャパンカップの1戦のみが有力でしょう。ジャパンカップで強い勝ち方をできたらそのまま休養か引退、万が一負けたら状態次第で有馬連覇を目指すのではと思います。

2着に人気薄を持ってくるのは強い勝ち方説

今回のイクイノックスの2着は10番人気スルーセブンシーズでした。
2着に人気薄が来る時のは勝ち馬が圧倒的に強かった時だという説があり、2008年ダイワスカーレットが勝った有馬記念などが典型例といえます。
その説でいえば今回のイクイノックスの勝ち方も凄く強いということになります。

私自身はスルーセブンシーズをそれなりに評価していたので10番人気には驚きましたね。最近は競馬ファンが馬券上手になってきてるのでG1や重賞では荒れるレースが少ないのですが今回は現役最強馬イクイノックス参戦で少し競馬ファンの心も乱れたのかもしれません。
今回が圧倒的に強い馬の勝ち方だったとするならば、今回の不安は杞憂だったということで、適性的にもむしろイクイノックスは阪神が得意だからこそ強い勝ち方をできたという可能性が出てきます。

今回のレースが今後への不安を見せたレースなのか、圧倒的に強いことを証明し、今後のさらなる躍進を示すレースだったのか、秋に確かめるのがどちらに転んでも楽しみです。

イクイノックスとエフフォーリア比較

新馬戦

エフフォーリア:2歳8月デビュー
イクイノックス:2歳8月デビュー

2歳終了時

エフフォーリア:2戦2勝
イクイノックス:2戦2勝、重賞1勝

3歳終了時

エフフォーリア:3歳時5戦4勝、G1競走4戦3勝、重賞1勝、通算7戦6勝
イクイノックス:3歳時4戦2勝、G1競走4戦2勝、通算6戦4勝

4歳上半期終了時点

エフフォーリア:4歳上半期2戦0勝、国内G1競走2戦0勝、通算9戦6勝
イクイノックス:4歳上半期2戦2勝、海外G1競走1勝、国内G1競走1勝、通算8戦6勝

現時点でイクイノックスは通算で6勝、G1競走4勝(国内3,海外1)
これはエフフォーリアの通算6勝に並んでおり、G1競走通算3勝は上回っているものの、イクイノックスの国内G1勝利数3勝はエフフォーリアの3勝と同数です。

仮にイクイノックスが今後下降線を辿るとしたら、エフフォーリアと同じ通算6勝に達し、通算国内G1勝利数3勝という点でも同じ数に達したので、ここから同じ道を辿るという可能性があるかもしれません。まあ半分オカルトですが。

イクイノックスは既に歴史的名馬

近年の最強候補の馬はアーモンドアイにしてもコントレイルにしても、使い分けをしたり、負ける可能性があるレースをあまり使わずに、それでも惜敗したり、大事に使ってきてる馬が多いので、なんだかんだ言ってもその馬なりに使える大レースをしっかり使って素晴らしい成績を残してきたイクイノックスは近年最強馬といっていいと思いますし、仮に今後今までほどの圧倒的な活躍ができなくなったとしても十分にスーパーホースです。

東京での強さでいえばアーモンドアイの壁は高いですが、今後古馬でジャパンカップや有馬記念を好走すれば斤量問題もクリアし、文句なしに2020年代最強馬といえると思います。
天皇賞秋でドウデュースやジャックドールらとのレースも見てみたいですが、ジャパンカップを最優先にしてくるでしょう。


2023/6/29追記 イクイノックス角膜に傷

イクイノックスは宝塚記念レース中、荒れた馬場でキックバックを受けた影響で目の角膜に傷を負ってたそうです。
宝塚記念の走りが思ったほど弾けなかったのがその影響によるものだとしたら、そんな事情があっても勝ちきったのだからやはり圧倒的に強かったということで今後の不安説は杞憂だったで終了でしょうかね。

ただ一方で、エフフォーリアも2021年有馬記念の前に蹄を痛めており順調さを欠きましたがそれでも有馬記念を辛勝とはいえ勝ちました。
しかし、その後蹄の不安は解消されたということになってるものの、結局彼の走りが本来の強さに戻ることはなかったので、完全な楽観はできないかもしれませんが。

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