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米津玄師は芸術に魂を売った

米津玄師の最新アルバム「STRAY SHEEP」、初動88万枚を売り上げCDが売れない時代にひとりバブルで日本が沸き立っている(と思っている)。
CD+DLで約400万枚、更にMVは6億再生以上というアンチも引くような数字を叩き出した「Lemon」をはじめ、親子世代に社会現象を巻き起こした「パプリカ」など、半分は知っている曲という内容も異常なアルバムだ。

私自身はいわゆる信者で、ハチ時代から応援していた。当時小学生だった私はネット文化に入り浸る中でボカロを知り、案の定「パンダヒーロー」「マトリョシカ」を聞いて「こいつは天才だ…!」と言い回ってたのを覚えている。当時はトーマも同じだけの才能を持っていると思っていたが、様々な要素が相まって2人は違う形で活躍している(トーマは現在Gyoson名義で自身の歌唱で活動している)。

そんな彼からは一旦離れていたが、高校時代に友人から「MAD HEAD LOVE」を勧められ、案の定ハマる。そしてその頃少しずつ「10年に一度の才能」と持て囃され、一方で世間からはボカロ上がりのオタク臭いミュージシャンぐらいの扱いだった。

が、その頃既に遅かれ早かれ邦楽の天下を取るだろうなあと思っていた。理由はわからないが何となくそう思っていた。
そしてそれが確信に変わったのがまさしく邦楽の天下を取ったこのアルバム…についていたライブDVDを見ていた時だった。

昔からそうなのだが、米津玄師のMCは重い。彼は話が苦手な方だというのもあるが、だが、重い。その重さを改めて感じた時、その裏側には良いとも悪いともつかないようなぐらいに荘厳なパワーを感じた。

ぶっ飛んだ話になるが、霊感までは行かなくともそういった類を何となく感じる節がある。そんな自分が初めて感じた、ただただ強いという感覚。そして確信した。米津玄師は芸術に魂を売っている。彼は芸術のために生まれ、芸術に囲まれて死んでいくことが運命付けられてる存在なのかもしれない。

少し視点を変えてアルバム自体を見てみると、やはりこれも安易に消費していいものではない。作詞・作曲・演奏・歌唱はもちろんのこと、ポップ→バラード→ロック→バラードという構成も米津玄師の音楽性を現在から遡るような構成になっている。そしてアートワークや特典、MVまで含めて1つの総合芸術と言える。新曲は自粛期間中に作ったものであり、単に切り口が音楽というだけでそのほか全てを使って現代という時代、そしてこれからどう生きていくべきかという大きなテーマに対する彼の眼差しを表象させているのが、彼の芸術だ。

アルバムを締めくくる「カナリヤ」に、こんな一節がある。

「いいよ あなたとならいいよ 二度とこの場所には帰れないとしても」​

未知のウイルスという津波に襲われ、旅行やまして帰省すら難しい時代を優しく包み込む彼の音楽は、ますます生きづらくなる現代を救う大きな箱舟かもしれない。

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