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学校向け体験会の提案

「たくさんの子どもたちに走り方を教えるのもいいけれど、1人でもいいから義足の子を走れるようにしてあげたい」

2016年、リオパラリンピック直前の北海道合宿中、佐藤圭太選手が口ずさんだ言葉です。これがきっかけで周りの選手たちやメンバーが集まり、ギソクの図書館ができました。ここで初めて走り始めた子たちも徐々に増えてきました。一方で場所が東京なので、遠方の方々へあまりできることは限られていました。

その後、静岡・新潟・大分・陸前高田・盛岡・大阪・北海道などでランニングクリニックを開催させていただきましたが、特に地方で義足使用者を集めるということはなかなか難しく、初めて開催するところではせいぜい数名でも来れば万々歳という状態でした。それでも1人でも義足のユーザがいるならばやる価値があると考え、地道に活動をつづけてきました。

その中で、1つやってみたいことが生まれました。それは義足の子が通っている学校で、その子にはスポーツ用義足で走る体験を、他のクラスメートにはスポーツ用義足体験を同時に行う事です。クラス全体で義足や走るということを通じて多様性を学ぶことができます。その授業を先日初めて行う事ができました。

きっかけは高山に住む小学校の女の子の親からいただいた、子供にスポーツ用義足で走らせてあげたいと書かれた1通のメールでした。その子の性格やご両親、学校の先生方の考え方も大事なので、まずは学校に相談しました。が、すぐに実施の方向で話が進みました。

そして先日、高山に佐藤圭太選手、比較的近い富山に住んでいる吉川和博と一緒にその学校に行ってきました。たまたまその子の担任の先生がシッティングバレーをやっているということもあり、元々パラスポーツに馴染みがあることから、話がスムーズに進みました。

まずは授業の前にブレードに付け替えて歩くところから練習
その後クラス全体への講義 この日はスライドなどは使わず佐藤選手の周りに集まっての対話をしました
吉川も生徒の目の前で義足の付け替えを実践
その後クラスメート全員でブレードで歩く、走ることを体験

当日、その女の子の足に無事にXiborg Joy Jr.を届けることができ、短い時間でしたが、佐藤圭太選手によるランニング指導とクラス全体への佐藤圭太選手と吉川和博からの講義、そしてスポーツ用義足体験を行うことができました。

今までは義足使用当事者にブレードを渡して日常的に走れるようにする試みと、学校に訪問して健常な子どもたちにスポーツ用義足で歩いたり走ったりする授業を別々に行ってきました。これらは個々に素晴らしい学びになるものであると思う一方で、どうしても義足を使って生きていく当事者の現実と一般的な学校現場に距離感を感じていました。これまで、なんとなくやってきてしまったスポーツ用義足体験もクラスメート1人が義足使用者であることによって、新たな学びが生まれること、さらには本人だけでなく、クラスメート、先生方や教育委員会の方々、そしてその子の親など、いろいろな立場でこの学びが広がるような機会となりました。

昨年、用賀小学校に乙武洋匡さんと訪問しました。乙武さんはこの学校に、今と同じような電動車椅子で仲の良いクラスメートと"普通に"通っていたそうです。階段はもちろんのことちょっとした段差すら乗り越えることが難しく、さらには障害があることでクラス内で衝突やいじめられるかもと当時の先生方は思ったかもしれません。当時としては四肢欠損の子供を受け入れるということは非常に難しかったことと推測します。その中で用賀小学校は校内の段差にランプを用意し、車椅子でも通えるように環境を整えたと伺いました。その影響で、都内の車椅子の子供たちが用賀小学校に通いたいと引っ越してくる方々もいたそうです。また、乙武さんの当時のクラスメートたちにも話をする事ができました。スポンジのようになんでも吸収する小学校時代を乙武さんと過ごしたことにより、大人になった今でも身体に障害のある人と接するときにはいつも乙武さんを思い出し、その人への接しているそうです。おそらく子供の時に身につけなければ持つ事ができない感覚なのではとすら思ってしまいます。人口の割合から考えてこんな環境で学ぶことはなかなかないかもしれませんが、このような環境での学びが今後の社会に必要な素養の一つになるのかもしれません。

ロボット義足のプロジェクトの中で訪れた用賀小学校。当時の同級生が迎えてくれました
下駄箱のランプ
体育館のランプ
プール

クラスメートに障害当事者がいるということはあまりないかもしれませんが、もしみなさんの周りにこのような学校がありましたら、連絡ください。義足だけでなく、車椅子バスケなど、他の競技にも適用できるコンテンツであると思っております。

連絡はこちらへ
info@xiborg.jp


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