見出し画像

乱れ雲

東宝 成瀬巳喜男監督
加山雄三, 司葉子, 草笛光子 土屋嘉男

初成瀬。

こりゃすごい、きめ細やかな演出。
司葉子の亡くなった夫(土屋嘉男)の遺族年金の手続きや
彼の両親による離籍への流れ、
姉(森光子)が参加する旅館の女将たちの寄り合いから
妻子持ちの居候(加東大介)との感情、
商社の官への接待の具体的な様子と
映画的な世界では取って付けたような表現になりがちなエピソードが、
確かなディテイルで表現され
主人公たちの感情の移り変わりのリアルさに反映している。

なにより素晴らしいのが
加山雄三の演技の幅を逆手に利用し
無神経極まりない、それでいて実直な男を
その世界に無理なく溶け込ませている、
いや!違和感に満ちあふれた男であることを、
これまた自然に表現するという離れ業。
(俺は何が言いたいんだ)
司が納得できる段階を経て加山に引き付けれて、
また揺り戻す微妙な感情が
また美しい。

(2009.2.15)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?