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鉄橋の眺め

先週、ちょっとした小旅行に出かけた。いまだ本格的な旅が出来ず、近場を回ることにした。選んだのは、「ロッキーマウンテニア鉄道」。百キロ離れた山中の観光地から出発し、千百キロほど離れたバンクーバーまでの一方通行の列車の旅だった。途中、ホテルに一泊し、車なら十二時間程度の距離を、正味25時間以上の乗車を記録し、ゆっくりした移動であった。列車は、車窓という言葉が対応しない一面のガラス壁、ゆったりした座席、贅沢な飲み物や食事といった、言葉通りの観光列車だった。

貴重なサービスは、ほとんど止まることのない親切丁寧な解説だった。刻々と変わってゆく車外の風景を眺めながら、それらをめぐるいろいろな知識に耳を傾け、大いに見識を広め、数えきれない新しい知識が得られた。

その中で、とりわけ印象に残ったのは、二つ一組の鉄橋だった。

カナダには、ほぼ同じぐらいの長い歴史をもつ二つの鉄道会社がある。さまざまな改編などを経た現在になっても、ほぼ昔の骨組みを保ち続けている。それはCN(カナディアン・ナショナル鉄道)と、CP(カナダ太平洋鉄道)である。BC州の境内を走るこの二つの鉄道は、その多くにおいてフレーザー川を隔ててそれぞれの線路を構えている。そのため、列車に乗っていて、川の向こうを走る列車の様子がつねに目に入ってくる。

一方では、BC特有の地形の中で鉄道は頻繁に大きく曲がり、そのため、列車の中に乗っていても、ときには自身が乗って列車と、並走する列車がともに視線に入ってくるという珍しいアングルも得られる。

CPとCNの二つの会社は、長い間互いに競争の相手となり、これまでの百年以上の歴史においてさまざまなドラマを演出した。いまになって、競争は依然と続くが、一方では、友好的な協力関係も結んだ。その象徴的な現状は、長い線路のうち、唯一の交差として、それぞれの会社が鉄橋を作り、両者が互いに乗り入れをするという合理的な相互利用を始めたことがあった。シスコ鉄橋(Cisco Bridges)である。ここを起点に、東西に向かう列車はそれぞれ川の片方を走るという運営が実現されたのだった。

列車の中から撮影した様子を並べてみよう。CPが建てたトラス橋である。

CNが建てたトラスアーチ橋である。

一方では、ここまで魅力的で物語がある橋だから、数多くの写真や動画が公開されている。つぎは、その中のほんの一例である。

観光列車は、「乗り鉄」には最高の場所だと想像する。そのような下積みをいっさい持たない自分としても、短い旅行は、ただ貴重な経験だった。しかしながら、カナダの西側にあるこの鉄道は、いまになっては観光の道具に止まり、交通の手段としての意味をなさない。今度も、帰りに飛行機、一時間ほどの短い飛行だった。

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