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ゼロ魔クロスSSアーカイブ

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太古の昔、ハルケギニア海に召喚されたクロスオーバー小説群のアーカイブです。
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#トラクス

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)ライナーノーツ

おれだ。そういうわけで、ライナーノーツだ。とはいえ10年以上前……過去ログによれば2007年9月23日から11月12日までに投下された作品だ。もはや記憶も曖昧だが、いろいろ思い出してだらだら書き記す。 ヒストリエのトラクスだ。おれが一番気に入っている。おれはルイズのアンタイでもヘイターでもないが、ルイズコピペのやつみたいに熱狂的に愛しているわけでもなく、るるるのルイズから入ったのでそういう印象がある。初期のサイトの扱いがこいつに似ていたので書いた。ただしどう考えてもルイズが

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第十五話

《『王宮日誌 シャルロット秘書録』より》 タルブでの戦闘から、数週間後。私は、ルイズの実家であるラ・ヴァリエール公爵家を訪ねていた。ワルドとの結婚が、正式に決まったそうだ。戦友として、私やキュルケも呼ばれた。 ◆ あの瞬間、私は『エア・カッター』で因縁あるセレスタンの首を斬り飛ばしていたが、その場所からトラクスとワルドが闘っているところが、ちらりと見えた。何事かを叫び続けるトラクス、怒り狂い、杖を振り上げるルイズ、トラクスに駆け寄られるワルド。トラクスの魔剣がワルドの右

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第十四話

さしもの『破壊の車輪』も、崖下に潜り込んだ敵までは石弾を飛ばせない。トラクスたちは必死に風竜を飛ばし、魔法で飛翔して、どうにかそこへ到達した。マチルダのゴーレムは雨霰と石弾を浴びるが、まだ立っている。 「いヨおし!まずは第一関門突破だ。オレとトラクスと、残りが10人か……中には敵が100はいる気配だな。手強そうなのはまあ、せいぜい20ってところだろうが」 「一人が9人殺せば済む。並みのメイジなら、俺は10人は殺せるだろう」 「並みじゃあなさそうだ。脱走した風のトライアングル

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第十三話

「あの娘たちに逃げられたァ!? 何ぼさっとしてたのよ、あんたたち!」 マチルダは、眠らされていた女官からの報告に吃驚していた。眼鏡の下の目がつり上がる。 ルイズとタバサが、アルビオンから脱走した。目付けのユリシーズを『人質』にして、だ。あのルイズは杖があっても碌に魔法も使えない(爆発は起こせるが)駄メイジで、お嬢様だから融通も利かない。女官やイケメンのユリシーズにちやほやされていれば、ぶつぶつ言いながらも大人しくしていただろう。 ならば、タバサだ。確かあの娘はガリア出身

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第十話

《『王宮日誌 シャルロット秘書録』より》 私たちが『人質』という事になって、幾日も経った。 しかし、トリステインからの救い手は一向に現れず、こちらとしては感覚共有できる『シルフィード』を介しての定期連絡―――彼女が喋れることは隠しているので、質疑へのイエス・ノーや無事の確認程度だが―――以外は何をするでもない、暇な時間を過ごしていた。 出歩く自由がない以外は、衣食住の心配も、身の危険を案ずる心配もない。 アルビオン国王ジェームズ1世は、トラクスの手にかかり討ち死に。 ウェ

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第九話

巨大ゴーレムの肩に乗り、派手に暴れまわるフーケ。少々の攻撃では、ゴーレムに傷は付けられてもすぐ修復し、鉄の拳で粉砕される。本来ゴーレムは城攻め用の兵器でもあるのだ。 「敗残兵どもが、あの『礼拝堂』へ逃げ込んでいく……いや、逃げ出している奴もいるね。あの中にトラクスがいやがるのかもねェ、フフフ」 フーケが不敵に笑う。もう、相手になるようなメイジは殆どいないだろう。しかし、そこへグリフォンに乗った男女が飛来し、礼拝堂へ飛び込んだ。 「おやおや、新手だね。あの赤毛の嬢ちゃんは、学

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第八話

「アッララララ――――――――――イ!!!」 雄叫びを挙げて跳び、ニューカッスル城に突入する蛮人トラクス。手には抜き身の魔剣デルフリンガーが握られている。フーケも後を追って城壁に降り立つ。すでにトラクスの投石と矢によって、こちら側の櫓や城壁の兵士は死に絶えていた。 トラクスは背後を振り返ると、鉄弓と矢を背負って背嚢を投げる。 「ロングビル、俺の荷物を持て」 「ここではフーケとお呼び。あたしは怪盗『土くれ』のフーケさ」 フーケは城壁の内側の地面から、高さ30メイルにも達する

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第七話

《『王宮日誌 シャルロット秘書録』より》 アルビオンの貴族派、『レコン・キスタ』からの使者。 そう、ユリシーズという男は名乗った。逃亡するトラクスとフーケ、それにルイズを『保護』するという。私、ガリア人の『タバサ』は予定外だったらしいが、ルイズと同行するのを条件にアルビオンへ行く事になった。 商人用の馬車に身を隠し、私たちは夜道を港町ラ・ロシェールへ急ぐ。 ルイズの精神は、意地を張ってもかなり限界ギリギリだ。適切な環境でのケアが必須。具体的には、ケガの治療と沐浴、更衣、ち

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第六話

王都トリスタニアの裏路地から、ずっと奥に入ったところの廃屋。 その地下に、魔法を使わねば入れず、まだ誰も知らないフーケの隠れ家があった。一応厩舎もある。 「食事を有難う、ミス・ロングビル。ひと心地ついたわ」 「遅くなって申し訳ない、ミス・ヴァリエール。頭の傷は、もうよろしいですか?」 そう言われてルイズが包帯を外してみると、秘薬がよく効いて頭の皮はくっついていた。少し痕は残るかもしれないが、カツラのお世話になるのは免れた。ちょっと痒いが。早く洗髪して、こびりついた血糊を落と

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第五話

鎖に繋がれたトラクスは……いつも叩いてばかりの私を、きっと恨んでたんだろうな……何とか脱出しようとして私を人質にして…… とうとう脱出して、盗賊になって…… でも屋敷に忍び込んだところを、父様に見つかって…… ああ……何て事をするの、トラクス…… 父様が死んでしまった………ああ……母様や、お姉様たちまで…… 私の……私の家族が死んだのは………私のせい……… 私のせいだ……! 私が悪いんだ……! こんな事になるなんて…… ご主人様に受けた恩を…… 仇で返すなんて……

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第四話

《『王宮日誌 シャルロット私書録』より》 蛮人(バルバロイ)のトラクス、ゼロのルイズ、そしてミス・ロングビル。 《ヴェストリの広場》で姿を消した三人が、なぜここで一同に会しているのか。少し考えれば答えは簡単、このミス・ロングビルが、トラクス(ルイズもいるけど)を密かに助けたのだ。 彼女は『土のメイジ』、あの時土の壁を落としてトラクスを捕らえたのはその魔法。ならば、そこから地面に穴を開けてトラクスを逃がした…とも、考えられる。土壁を自分で崩落させ、姿を消して行方不明扱いにす

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第三話

体勢を低くしたトラクスが、右手に血刃を構え、疾風の如く衛兵たちに突進する! 下から肩へ逆袈裟。横を向いて低く真横に、腹。起き上がりながら旋回し、前後の敵の脇腹と胸。立ち上がって真っ直ぐ、喉を一突き。一呼吸の間に、たちまち五人が斃される。楯も鎧も筋骨も、皮膚のようにたやすく切り裂かれる。 「あっぐ……」 包囲網がすぐに遠巻きになった。誰も死神の手にはかかりたくない。背中にルイズを背負い、荷物を抱えて、この立ち回り。もとよりトラクスは達人だったが、今はそれ以上だ。 「いひゃひ

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第二話

《『王宮日誌 シャルロット私書録』より》 私たちが二年生に進級してから、二ヶ月ほどした頃だった。 その日、私は友人のキュルケと一緒に、《アルヴィーズの食堂》で雑談しながら朝食をとっていた。雑談……といっても、話すのはもっぱらキュルケの方だったが……。 「ねえタバサ、聞いた? あの手足を鎖で繋がれた蛮人(バルバロイ)の使い魔。そう、『ゼロのルイズ』の奴隷よ。やっと鎖を外してもらえるんですって。そりゃ、歩きにくいもんねぇ」 「………!」 「ほんと、見てて可哀相ったらなかったも

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第一話

《『王宮日誌 シャルロット私書録』より》 それは、トリステイン魔法学院の二年生進級が済んでしばらく経った日のこと。 私は当時『タバサ』と名乗っていたが、風竜を召喚の儀式で使い魔とし、『シルフィード』と名づけて可愛がっていた。 だが、同級生のあの少女は……。 ガチャッ ガチャッ ガチャッ ガチャッ ガチャッ ガチャッ 「うっうっ うっ うっ うっうっ」 学院の中庭。人々が行き交い、憩いの時を楽しむ者もいる。 だが金属が擦れるような、耳障りな音がする。そして呻くような