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【聖杯戦争候補作】Pink Elephants on Parade

夜。ネオン煌めく、見滝原の歓楽街。その片隅の路地裏。派手な格好をした美女がため息を吐いている。警察帽にピンクの長髪、豊満なバストとヒップ、露出度の高い服装にハイヒール。目鼻立ちは日本人ではなさそうだ。

「はぁ……またまた、とんでもないことに巻き込まれちまったみたいね……」

彼女はたった今記憶を取り戻し、現状を把握したところだ。道で拾ったこの宝石に、こんな大それた力があったとは。

ジャパン。いい国だ。カネはあるし治安は良い。自分みたいなワルには、ちと退屈だが。いつの間にやら、自分はアメリカからここジャパンのミタキハラって街に来て働いてたらしい。そういう記憶を刷り込まれている。日本語もペラペラになってる。どういうことなのか。

「ヒューゴーの奴もいないみたいだし……ま、あたし一人でもないらしいけど」

しかもだ。これから始まるのは、格闘大会でもなければロックコンサートでもない。聖杯戦争とかいう殺し合い。集められた連中に英霊、サーヴァントって手駒が割り当てられ、そいつと協力して戦うのだという。で、そいつらを七匹倒せば……万能の願望器『聖杯』がひとつ出来る。

でも、それだけでは帰れない。ってことは、聖杯に帰還を願うことになるが……なんだか勿体無い話だ。二つ作れば、一つは持ち帰れるのだろうか。折角なので貰えるものは貰いたいし、夢がないではないが、なんでも叶うとなると迷ってしまう。

「サーヴァント、ねぇ……あたしは、そいつがうまく戦えるよう仕向けるのが仕事ってことかァ。結局やることは、マネージャーみたいなもんね。ガチの殺し合いってのが引っかかるけど」

肩を竦め、眉根を寄せる。爪をかじる。サーヴァントの能力は人間では太刀打ち出来ないレベル。しかしマスターを殺せば、大概のサーヴァントは消えるらしい。狙うならそっちだろう。殺しはあまり好きではないが、殺さねば帰れないなら仕方ない。言ってはなんだが、やるのは自分の手下だ。この、手の甲に刻まれた『令呪』を使えば、三回までは命令に従わせたり、強化したり出来る。切り札の使い所も見極めねば。

では早速、自分のサーヴァントを喚び出してみようではないか。出て来た奴によって作戦も変わってくるだろう。

「強くて、従順な奴がいいねえ。いかつい武人とか、イケメンとか。美女や美少女や美少年が出てきちゃったら、フフ、どうしてやろうかねぇ」

掌に乗せたソウルジェムを頭上のネオン看板に翳し、苦笑する。と―――それは光り輝き、虚空に金色の粒子が凝集する。
「お……来たね」
魔術師でもなければ魔法少女なんて柄でもないが、彼女の目は好奇心に輝く。ともかく、自分のこれからの相棒だ。ビッといかせてもらおう。

「………!?」

彼女の目は驚愕に見開かれる。現れたサーヴァントは3メートル近い巨漢!あのヒューゴーよりも大きい!そればかりではない!筋骨隆々の巨漢が身に纏うのは、毛皮!顔の上半分はその毛皮で隠れている!そこから伸びるのは―――! その姿を見た時、彼女はこう叫ばざるを得なかった!

「ゲ――――ッ 象のサーヴァント…………」

巨漢は両腕を振り上げ、長い鼻と大きな牙を天高く伸ばす!

パオオ――――ッ! オレを喚び出すとはなあーっ!オレは『ランサー(槍兵)』のサーヴァント! 真名は『マンモスマン』だ――――っ!!」

目の前には、ピンク色の髪をした女。感じ取れる魔力は弱いが、オレを召喚した以上はマスターということになる。魔術師でも超人でもない、普通の人間の女だ。見るからに水商売系で、そこそこ鍛えており、カタギとはいい難いものの。ただ……何か、こういうことに「慣れている」感じがある。やはり只者ではないのか。

女はしばらく唖然としていたが、気を取り直して名乗った。
「あーっと……あたしは『ポイズン』よ。よろしく、ランサー。……バーサーカー(狂戦士)じゃないのね?」
「その適性もあるようだがな。この牙と鼻が宝具として、『槍』にあたるとみなされたようだ」

差し出された手を握る。強くなるため熊(ベア)の毛皮を被った戦士がバーサーカーの語源だそうだが、オレの毛皮は自前だ。そしてオレの宝具というなら、確かにこの牙と鼻だ。英霊化し、宝具化したことで、生前よりパワーアップしている気もする。

「まずは聞いておこうか、マスター。おまえは聖杯に何を望む?」

マスター・ポイズンは顎に手をやり、小首をかしげながら答える。
「……帰還? かな。聖杯がなんでも叶えてくれるんなら、そう願えばいいんだろ?」
「欲のないことだな。聖杯を複数作れば、持って帰ることも出来るだろうさ」
「つってもさ、一つ作るのにサーヴァントっていうのを七匹狩らなきゃだろ? 二つで十四。そんなに行けるかねえ、と思ってて」
「フフ……運が良かったな、オレになら可能だ。超人だか英霊だか知らんが、何人でも来るがいい!」

マスターは怪訝な顔をしている。どうもこのオレのことを知らんらしい。まあ1980年台より随分未来のようだし、仕方あるまい。
「確かに強そうだけど、随分な自信だねえ。……あんたには、望みとかないのかい」
「ないな。現世でやることは大体終わった。悔いはない。超人だから、何者かが生き返らせてくれることもあろうが……」
「生き返る? いや、だから何なのさ、超人って。英霊じゃないのかい」
「超人は超人だ。人間の力を超えた者だ。おまえの国にはいないのか?」
「? スーパーマンとかスパイダーマンとかなら、いるのかも知れないけどさあ。フィクションでしょ?」

超人がいない。オレとは違う世界の住人か。その方が人類にとってはマシかも知れん。
「生憎、オレはフィクションじゃないぜ。ま、安心しろ。おまえが死ねばオレも消えちまうんだ。令呪もあることだし、守ってやろう。……酷い扱いを受ければ裏切るかも知れんがな」

軽い脅しに、マスターが青くなる。
「ちょちょちょ、あんたに抜けられちゃ、あたしは死んじゃうよ。あんたみたいのがゴロゴロいるんだろ。それにパワーでなんとかなりゃいいけど、魔術師ってのもいるらしいし。仲間がいた方がいいんじゃない?」
「ウーム、それもそうだな。暴力だけではなく、知性を使わねばならん。では、弱くて油断していそうな主従を見つけたら、奇襲を仕掛けよう。不意打ちで殺して聖杯の糧にする」
「いきなり卑劣だねえ。どうせ生き残らなきゃいけないし、卑怯だの卑劣だの言ってられないか……」

PRRRRRR……女の腰ポケットから音。板のようなものを取り出し、話し始めた。
「……あー、ごめんごめん。今戻るよ。……じゃランサー、話は後でね」
「何だそれは。電話か?」
「スマホよ。知らないの? ……ああ、昔の英雄なんだっけ。まあ電話ね」

ポイズンには夜の仕事があり、本戦はまだ始まらない。とりあえずランサーには霊体化し、偵察してもらう。情報収集も大切だ。ついでに現代社会にも慣れてもらおう。

ロキシー、ただいま」
「どこ行ってたのよォ、もうお客さん来てるよ」
「悪い悪い、ちょっとね。じゃ、始めよっか!」

ポイズンはギターをチューニングし、ロキシーと共にステージへ向かう。ここは彼女たちのライブハウス「POISON&ROXY」だ。

妹・ロキシーは、自分がいた世界の本人ではない。この客たちも、この街の連中も。いずれ帰れば、別れねばならない。たとえこの世界のロキシーが死んでも、元の世界に帰れば、ロキシーはピンピンしてるはずだ。
だが……彼女を死なせたくはない。悪党ばかりの中で過ごしてきて、死人は見慣れているにしても。割り切れるものではない。こっちでの人生も、案外愉しいのだから。

タフに笑う。いいだろう、戦ってやろう。帰るために、生きるために、守るために、勝利のために。負ければおしまいのデス・ゲームだ。戦って勝つ!

さぁ、派手にいくよ!

【クラス】
ランサー

【真名】
マンモスマン@キン肉マン

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A+ 敏捷C 魔力D 幸運C 宝具C

【属性】
混沌・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
超人:A
人間の能力を超えた半神的存在。人の身では絶対に不可能なランクの筋力と耐久に到達している。マンモスから超人に突然変異した生粋の怪物。蛍石や鉄鉱石を食らうことでその性質を吸収するなど奇妙な能力を持つ。

戦闘続行:A
戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。もとのタフネスも高いのでかなり厄介。

反骨の相:B
一つの場所に留まらず、また一つの主君を抱かぬ気性。自らは王の器ではなく、自らの王を見つける事ができない流浪の星。同ランクまでのカリスマを無効化する。酷い扱いを受けると呂布めいて裏切ることが多々あるが、基本的には忠義者のはず。悪役ゆえ仕方ないものの、『Ⅱ世』でのアレは不死鳥乱心波にでもかかってたのかな……。

【宝具】
『血を啜る暴獣の大牙(ビッグ・タスク)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:2

顔の横から伸びる二本の巨大な牙。伸縮自在で触手のように動き、獲物を刺し貫く。ドリルのように回転させることで破壊力を増し、リングの一角をコーナーポストごと抉り取る威力を誇り、バッファローマンすら恐怖させた。
枝分かれさせて相手を捕らえ(ブランチ・タスク)、板状のものを牙に刺して扇ぎ突風を起こすことも可能。この牙はランサー自身が相手を感知していなくても、新鮮な血液や汗に反応して自動的に襲いかかり、養分を吸い取ろうとする。しかし傷を負ったり返り血を浴びたりすれば、自分自身が攻撃されてしまうという面倒な弱点を持つ(割と判定はガバガバ)。現在は宝具化しているため意のままに動かせ、自分を攻撃することはない。

『吹雪呼ぶ暴獣の長鼻(パワフル・ノーズ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10

牙の間に生える長い鼻。超人を軽く投げ飛ばすパワーを持ち、刺し貫いたり巻き付けたり打ち叩いたりして攻撃する。また鼻を振り回すことで吹雪を起こし(ノーズ・フリージング)、捕まえた相手を振り回して氷漬けにしたりも出来る(アイス・ロック・ジャイロ)。英霊化したせいか威力はさらに上がっている。なお「鼻先を本につけるとその知識を吸収出来る」という特技がある(本の方も特殊だったが)。

【Weapon】
己の肉体と二種の宝具。また被っている毛皮から巨大な耳を出して攻撃・滑空に利用する。相手の首をキャンバスにめり込ませた上でねじ切る「ゴーストキャンバス」、放り投げた相手をアルゼンチンバックブリーカーで捕らえる「マッキンリー雪崩落とし」などの技も用いる。

【人物背景】
ゆでたまごの漫画『キン肉マン』シリーズに登場する超人。CV:佐藤正治。マンモスから突然変異したシベリア出身の古代超人だが、氷河時代に一族諸共アラスカの永久凍土に閉じ込められ、一万年の眠りから目覚めた男。身長279cm・体重400kgの巨漢で、筋骨隆々の肉体にマンモスの頭部のような毛皮を被り、ベルト付きパンツ、交叉鎖、手甲を身に着ける。膝から下はマンモスのもの(長靴?)。超人強度は7800万パワーと非常に高く、圧倒的な戦闘能力を誇る。精神面が弱点。

「王位争奪編」でキン肉マンスーパー・フェニックス率いる「知性チーム」のメンバーとして登場。強力チーム戦では怒涛の三人抜き&余裕の引き分け。残虐チーム戦ではバッファローマンと激闘を繰り広げるがKOされる。
しかしこれは策略であり、隙を突いて「超人予言書」のページを奪い焼却、残虐チームの大将を死に至らしめることに成功した。さらに決勝前にはウォーズマンを闇討ちしてマスクを破壊、戦闘不能に追い込む。

決勝戦では3対3の戦いでロビンマスクと戦うも、ロビンの作戦により自分の予言書が燃えてピンチに陥ったことで自軍の大将に見放され離反。どちらにもつくことなくロビンと死闘を繰り広げ、KOされるも、ロビンは自らの予言書を燃やしてまで技をかけることを躊躇わず消滅。マンモスマンも真剣勝負の素晴らしさと友情に魅せられ、涙を流しながら満足そうに消滅した(毛皮と鎖を残して)。原作ではそのままだが、アニメではキン肉マンのフェイスフラッシュで他の超人ともども復活している。悪魔将軍、スーパー・フェニックスと並ぶ三大悪行超人として語り継がれ、続編『キン肉マンⅡ世』にも登場するが……………ウメーウメー

どこからどう見てもバーサーカーだがランサー。イヴァン雷帝とはたぶん無関係。

【サーヴァントとしての願い】
なし。全力で戦うことが望み。

【方針】
辻斬り。街中に身を潜めて様子を探り、油断している主従を不意打ちで襲う。真剣勝負出来る相手は歓迎する。自分が消滅してしまわないようマスターは守る。

【把握手段】
原作の「王位争奪編」(単行本24-36巻、文庫版12-18巻)。可能ならTVアニメ版も。『Ⅱ世』第二部「究極の超人タッグ編」でのあれこれはなかったことになっているような気がするが、参考にしてもよい。公式web小説『ディープオブマッスル!!』にはマンモスマンのエピソードもある。

【マスター】
ポイズン@ファイナルファイトシリーズ

【Weapon・能力・技能】
『喧嘩殺法』
ストリートで身につけた我流戦法。アクロバチックな動きをし、格闘のプロ相手にも戦えるが、英霊相手にはどうにもならない。

『馬上鞭』
振ると衝撃波が出たりする。

『手錠』
相手を拘束したり、これで殴ったり、投擲したりする。

『投げキッス』
ポイズンキス、ハニートラップとも。相手を魅了する。

【人物背景】
対戦格闘ゲーム『ファイナルファイト』シリーズなどに登場する人物。CVは田中敦子(『ウル4』など)ほか。身長175cm・体重52kg、スリーサイズは88・66・89→91・60・89。好物はフライドポテト、嫌いなものは警察。ピンク色のロングヘアに警察帽を被り、露出度の高いパンクファッションでキメたホットなベイブ。長身で筋肉質。アメリカ・ロサンゼルスの孤児院出身で、ロキシーという妹(妹分)がおり、共にメトロシティの犯罪集団「マッドギア」の構成員になった。マッドギア壊滅後は同じく構成員だった巨漢ヒューゴー(アンドレ)のプロレスラー転向を聞きつけ、彼のマネージャーとなる。サバサバした男勝りの姉御肌で、頭の鈍いヒューゴーをよく補佐し、要領よくテキパキと物事を進め、世界を股にかけて活動中。

初代『ファイナルファイト』で雑魚敵として登場したが、『ファイナルファイト リベンジ』でプレイアブルキャラに昇格。『ストIII』シリーズと『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』ではヒューゴーに随伴するサブキャラクターとして登場するが、『ストリートファイター X 鉄拳』と『ウルトラストリートファイターIV』ではプレイアブルキャラ。性別については女性ともニューハーフとも言われ、性的な意味で注目を集めている。

【ロール】
歓楽街でSMクラブの女王様兼ロックミュージシャンとして働くアメリカ人。性別は不明。ライブハウス「POISON&ROXY」を借りており、妹ロキシー(NPC)と二人暮らし。

【マスターとしての願い】
生き残りたい。出来れば聖杯を持ち帰りたい。

【方針】
戦いは基本的に任せるが、足手まといにならないよう手助けはする。ロキシーが別人だとは理解しているが、死なれるのも嫌なので守る。

【把握手段・参戦時期】
参戦時期は『ウルトラストリートファイターIV』の頃。

◆◆◆

タイトルはディズニーの曲なので貼らずにおく。ポイズンはホットなベイブだ。性別は気にしない。別の鯖のマスターにしようとしたがしっくり来ず、象繋がりでマンモスマンにした。京都聖杯にベンキマンを投下したやつがいたので、ゆで繋がりの連想もあった。おれはあまり詳しくないが、いろいろ調べて書いた。こういうクロスオーバー二次創作のいいところは、詳しく知らなかったいろいろな作品のキャラに触れられる点だ。知ってるキャラでも調べるうちに、他のキャラと絡めるうちに、意外な一面が見えてもくる。

【続く】

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