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【AZアーカイブ】趙・華麗なる使い魔 第10回 趙・公明昇天!!

◆華麗なる貴族伝説、遂に終焉……!!

始祖・伏羲、神・普賢真人と袁天君、董天君。4人が作り上げた空間系宝貝『誅仙陣・改』により、巨大植物と化した趙公明が冷凍される。
「花の命は短い……暖かい季節に栄華を極めては、寒さとともに散華する…」
ロマンチックに毛玉(袁天君)が呟く。

「プッ、プリンス・チョウ・コウメイさま……!!」
「ああっ、お兄様……!! けれどミス・ヴァリエール、これも天数ですわ。我ら神々も仙人も、始祖といえども、それには抗えませんの。それに封神は『死』にあらず、新しい存在へと生まれ変わること……!!」

ルイズとビーナスが涙にくれる中、趙公明は絶命する。凍結した趙公明の森と巨大花は崩壊し、『レコン・キスタ』の空中艦隊もほぼ全滅した。
巨大花の根元に、ゆっくりと趙公明の魂魄が現れる。

『ルイズ……ビーナス……悲しんではいけないよ。僕はこんなにトレビアンな戦いが出来て、とても満足している。さぁ、さようならルイズ!! 僕は「神界」へ帰らなくてはならない……!!!』

すぅっと暗くなった天上から光の柱が差し込み、羽毛と花弁が降り注ぐ。
幼児の姿をした天使たちも現れ、楽器を吹き鳴らし、讃美歌を歌い踊る。
巨大花の根元、『レキシントン』号の残骸から、趙公明が昇天する……!!

ラ―――――ラ――――― ラ―――――ラ―――――

『ありがとう、ミス・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!

 プリンセス・アンリエッタ! プリンス・オブ・ウェールズ!

 ミス・キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー!

 ミス・タバサ! ミスタ・ギーシュ・ド・グラモン! ミス・フーケ!

 そしてミスタ・ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド!!

 さようなら……さようなら……さようなら……』

ご丁寧にエンドロールを背景に流しながら、趙公明の魂魄は『神界』へ帰還した。

神々は、ニューカッスル城上空に集結する。

「なんだあれは、それに今の吹雪は!?」「て、天使だっ!! 我らには天が味方しているぞ!!」「あの森と巨大な花はなんだったんだ!?」「ってゆーか、プリンスは!?」「貴族派の艦隊が全滅したのは、あのプリンスのお蔭か?」「皇太子よ、いずこにおわす!?」

「キュルケ、起きて。大変だから」
「ええ、起きているわタバサ。あのプリンスは、天に帰ってしまわれたのね……」

地上では大混乱が続いていたが、やがてニューカッスル城から凱歌が挙がる。ウェールズ皇太子を失ったが、『レコン・キスタ』の空中艦隊は壊滅し、王党派が勝利したのだ。この不思議な戦闘は、のちに『ブラック・プリンスの戦い』と呼ばれたという。

「フィー……久しぶりに力を使うと、疲れるのう……。あやつはしばらく大人しくしとるであろう、多分。で、後始末をどーしたもんやら……」
「そうですね……『歴史の道標』の事もありますし、介入してみますか? どうせ最近、皆ヒマしていたことですから」
「ルイズちゃんも悲しんでいるし、誰かを新たな彼女の『使い魔』にしてあげて、少しずつ助力するって形にしたらどうかな? ……僕はちょっと、忙しいけど」

「むぅ……わしとてめんどくさいし、役職のあるやつらは行かせられんし。 スープーはあんまり戦闘力がないしのう……誰ぞ、立候補せぬか?」

300余りの神々や仙人の中で、ぽつぽつと手を挙げる者がいる。
「ああこら、哪吒や雷震子は破壊しか能がないからいかんっ。土行孫はすっこんでおれ。そこそこ強くて、頭も回って、人間出身の奴が望ましいのだが……」

そこへ、袖のない革ジャンと破れジーンズを着た、鼻に傷のある黒髪でバンダナの青年が進み出た。
「スースよお、俺っちはどうさ? 俺っちも長らく戦ってねえから、ヒマでしょうがねえさー。たまには羽根を伸ばしてえし、倒すのは妖怪や怪物や、『神界』から来た奴らでいいんだろ?」
「おお、そうか、天化なら適任だのう。ルイズも喜ぶぞ」

「なーによ、女の子に使われるから立候補したんでしょ。にしし」
「嬋玉ぅ、俺っちは道士出身の神さー。そーゆー下心は卒業してるって」

やがて『神界』の元始天尊も現れ、役者は揃った。神々はウェールズの魂魄体を城に降し、事情を軽く説明させてから、大広間に集まる。

「……では、三山管領正神・至聖炳霊公、黄天化よ。始祖と神仙両界教主の勅命により、おぬしをこの世界『ハルケギニア』に天降す。ルイズにはこのレプリカ打神鞭を授けよう。これで魂魄が封印できるゆえ、『封神鞭』とでもしておくか」
伏羲から『封神鞭』が下賜される。見た目よりずっと重く、触れるだけで魔力が吸われていくのが分かる。

「封印されていた魂魄は抜いておいた。これはワルドも使っておった通り、風の力を操る宝貝。あまり使えばメイジといえども消耗が激しいが、なかなか強いぞ。魔力は豊富なようだし、おぬしの杖として、ここぞという時に使うがよい」
「は……はい!!」
マジックアイテムを介してとはいえ、魔法が使える! ルイズはプリンスを失った悲しみも和らぎ、感激する。

一方神々は、ひとまずの対策を協議する。
「逃走というか、おそらくジョカもどきによってこの世界に召喚された神々は、まだリストが揃っていませんが……先ほど再封神された趙公明、劉環、陳桐、張桂芳と風林を除いて、およそ36名前後。ほとんどは妖怪仙人出身です。主なものには、余化、呂岳、馬元、丘引、高継能、陳奇、楊任……ほぼ趙公明絡みですね……」

地上からニューッと剣が伸びてくる。
「余化のジジイなら、トリスタニアって街で武器商人してるぜ! 宝貝もいろいろ持ってきてるし」
「おお、『飛刀』もおったのか。こういう妖精や宝貝、わしらの把握しとらん妖怪変化もおるであろう。天化ひとりでは、ちとキツイかのう……」

「ワルドはこの玉鼎が預かろう。剣の腕は立つようだし、鍛えればいい仙人になるかも知れない」
「うむ、数年してモノになったら、天化のサポート役として天降してやろう。ジョカもどきによる洗脳も、わしがちゃんと解いておくぞ」
「あとでリストも作っておくから、何か手におえないことがあればこの携帯宝貝で連絡してくれ、天化くん」
「分かったさ。けど、『莫邪の宝剣』と『鑚心釘』だけじゃ、ちょっとなあ……」

『それならば、グッドニュースがあるよ諸君!!』
再封神されたばかりの趙公明が、ニュッと顔を出した。ルイズもみんなも吃驚する。
「ぬおっ、趙公明!! いきなり雲間からくどい顔を出すでないっ!!」

『フフフ、彼女は「虚無の担い手」という特殊なメイジ。彼女の接吻を受けた者は「ガンダールヴ」という強力な使い魔となり、あらゆる武器や兵器を自在に操る事が出来るのさ!! 宝貝も一緒に来ている者が多いようだし、それらを回収がてら戦うがいい!!』
ポーイと『万里起雲煙』が投げ渡される。劉環の宝貝だった物だ。

「ヘェ……って、せ、接吻!?」
天化が思わず赤面する。
『契約の証だ。気にすることはないよ、黄天化くん!』

「ばっはははは、そーだぜ天化、一つばしーっとキスしちまえ!!」
「ガンバでーす、ファイトでーす天化!!(スポーツ)」
「親父も師父(コーチ)も……まぁ、戦えるんなら我慢するさー」

それを聞いて、ルイズがムッとする。
「が、我慢って言い方はないでしょ!! あ、あんたはテンカっていうの?」
「そうさー、もと殷の鎮国武成王にして周の開国武成王、死後は東岳泰山天斉仁聖大帝に封じられた、黄飛虎の三男! 三山管領正神・至聖炳霊公の黄天化とは俺っちのことさ!! よろしくな、ルイズ・フランス・ナハトムジーク……だっけ?」
「な、長過ぎるわっ! あんたなんかテンカで充分よ! それに私の名前は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!!」

二人はギャーギャーと言い争い始めた。周りの神々は、ニコニコニヤニヤしながら見守っている。

「まぁ天化ったら、ルイズちゃんとすぐ仲良くなって」
「手が早いのは、兄上譲りだねっ!」
「おふくろ、叔母さん! からかうんじゃねぇさ! まあ俺っち男前だし、惚れられるのも無理はねーけど」

「なっ、何言ってんのよ!! しょしょしょしょーがないわね、プリンスの代わりとしちゃ随分格落ちだけど、せっかくだからあんたを使い魔にしてあげる。かかかかか、感謝しなさいよねっ!!」

天化は、ぶっちゃけかなりかっこいい。美青年というか、細身の筋肉質で精悍な剣士だ。飄々としているが立派な身のこなしで、仙骨があり、剣の腕前なら趙公明以上だろう。

「ちぇ、俺っちだって武成王・東岳大帝の三男だからプリンスさー。そんじゃま、ちゃっちゃと契約しちまうべ」
「わ、分かったわよ。ちょっとしゃがんで、目を閉じてなさい! 『我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ』……!」

契約は完了し、左手に『ガンダールヴ』のルーンが現れ、天化は数千年ぶりに受肉する。キスはタバコの味がした。

その後、彼はルイズの使い魔としてハルケギニアを転戦し、三十六柱の迷鬼妖怪を封神して天下の騒乱を鎮め、のちに元始天尊より『夷伐大勇王』の封号を賜わるのだが、それはまた別の話である。

【趙・華麗なる使い魔・完】

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