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【聖杯戦争候補作】ヴェンジェンス・イズ・マイン!!

父よ、御心なら、この杯をわたしから取りのけてください。
しかし、わたしの願いではなく、御心のままに行ってください。
――――『ルカによる福音書』22:42

「……本当に、本当に、本当の本当に、いらんのか!?」
「何度も言いましたよ、セイバー。僕は聖杯を必要としません

雨の止まぬ昼下がり。冬木市にある教会の一室に、カップの置かれたテーブルを挟んで、少年が二人いる。

一方は、小柄で黒髪。女性と見紛う美形だが、顔には複雑な紋様の入れ墨が施されている。黒檀色の装束を纏い、腰の左右に一振りずつ宝剣を帯びる。明らかに、現代人ではない。

もう一方は、金髪のボブカット。黒髪の少年よりは背が高く、やや年上。これまた美形だ。色白で童顔、眉は凛々しく、青い瞳は憂いを帯びている。西欧系の顔立ちだ。

セイバーと呼ばれた少年は、柳眉を逆立て、噛みつかんばかりの勢いで相手に食って掛かる。

「なぜだ!? 余がお前なら、欲しいぞ。何でも望みが叶うのではないか!」

金髪の少年は、ため息を一つついてから、セイバーに顔を近づけ、指を一本立てる。そして噛んで含めるように、己にも諭すように、穏やかに説明する。

「いいですか、僕はまず、クリスチャンです。まぁ、バチカンからは破門されていますが。主イエス・キリストの聖血を受けたという『聖杯』は、このような殺し合いによって獲得されるべきではありません。ましてや、魔術師の集団がこしらえあげた、『聖杯』を騙る『万能の願望器』などという胡散臭いものは、悪魔の誘惑そのものです。仮にもキリストを信じる者として、そんなものの存在を許してはいけません。主は、それを望まれません」

セイバーは渋面をし、頬を膨らませ、口をへの字に結ぶ。金髪の少年は穏やかに微笑み、二本目の指を立て、続ける。

「第二に、僕には、人々との殺し合いを行ってまで、望むような願いはありません。少なくとも不老不死ですし、それなりに力もあります。必要以上の富や名声を求めてもいません。友人だってたくさんいます。将来の夢はありますが、それはまっとうな手段と努力によって、僕自身が叶えるべきものです。主の恩寵は望みますが、それ以外の誰かに願って叶えてもらう筋合いのものではありません」

セイバーは、ぷしゅうと息を吹き、頬を縮める。あまりにまっとうな正論だが、納得したという表情からは程遠い。

「今僕が望むのは、一刻も早くこの戦争を終わらせ、元の世界に生還することです。聖杯は、破壊し得るなら破壊します。もちろん、戦いを望まない多くの参加者も、共にそれぞれの世界に生還させねばなりません。志を同じくする人々とは協力し得ます。破壊や殺戮を望む者とは、戦って排除します。僕とあなたの力は、そのために使います。わかりましたか、セイバー?」

まーったくわからん! お前は阿呆か!? タマ落としたか!?」

思わず声を荒げるセイバーを、金髪の少年はしぐさで黙らせる。周辺に気配はないが、騒ぐのはまずい。セイバーは舌打ちし、椅子にどっかと座り直し、イライラした様子で金髪の少年に問いを投げつける。

「……たとえば、そうよの、お前にも、憎いが倒せぬ奴の一人や二人おるであろう。余にはなんとなくわかるのだ、そういうのが。聖杯の力を得て、そやつに恨みを晴らしたいとは思わぬのか?」

「いいえ。それに、主は万人を分け隔てなく愛せよと教えています。敵を愛し、己を迫害する者のために祈りなさい、と。僕はまだまだ、そんな境地には立てませんが」

答えながら、彼は苦笑する。故郷に教会もなく、専門的に聖書を学んだわけでもなく、存在自体が異端な自分が、人に聖句を説くなど。まして自分の一族は、まさにその教えを説く者たちによって、迫害され続けてきたのではないか。なんたる偽善、自己矛盾。故郷のみんなや、友人知人、師匠である神父が敵に襲われ、取り返しのつかぬことになったら。自分はその敵を許せるだろうか。

「意味がわからぬ。……お前は悪霊祓い師だというが、悪霊は憎かろう? 善人ならば、悪を憎むものだ。普通は」
「いいえ。僕が悪霊、悪魔たちを祓うのは、彼らを憎むからではありません。苦しむ人を救うためです。主はご自身の計画のため、時に悪霊をも手足となさいます。聖霊の御力を借りられる僕だって、魔族である吸血鬼の血を半分引いていますよ。ほら」

彼が口を開けると、その中には牙。真っ直ぐな目で見つめられ、言い返されて、セイバーは目をむき、歯をむき出し、額に青筋を盛り上がらせた。こやつは、この口の減らぬ、なんとかというガキは、情熱を向ける方向をどこか間違えているとしか思えぬ。天然か。まともな人間か、こやつは。いや、半分人間ではないのだった。邪悪な吸血鬼の方が、まだしも余に理解できる奴かも知れぬ。

「お前のような阿呆は初めて見た」

セイバーはそう吐き捨て、相手を、自分のマスター『ピエトロ・ド・ブラドー』を睨み据えた。そして、フイと顔を逸らし、語り出した。

「余は、国を治め、敵を憎み、戦をすることより他は知らぬ。乱世の君主ゆえな。生涯の半分近くは、己の生き恥を晴らすための、復讐に費やした。賢人を敬い善政を敷いたが、それも復讐の手段であった」

ピエトロ、愛称『ピート』は、静かに彼の言葉に耳を傾ける。
彼のクラスは「セイバー(剣士)」。英霊、サーヴァントの中では最も優れた性能を持つという。ただ、彼は武勇によって歴史に名を残した英雄ではない。その凄まじい復讐心と覇業、そして現代まで残る「名剣」の持ち主としてだ。僕とは何の繋がりもない。吸血鬼でも聖職者でもなく、西洋の英霊ですらない。しかし、これも何かの縁だろう。

互いの名は、先程確認している。彼の真名は『勾践』
古代中国、春秋時代の越の王にして、諸侯の盟主となった覇者の一人。歴史の教科書にもちらっとは載っている、有名人だ。

「愛とか申したな。余も、血も涙もない暴君というわけではない。領民は国の宝、家臣は余の股肱だ。慈しんではおった。仇敵である呉王夫差にも、いらぬ情けをかけた。まぁ、我が国に攻めて来おった、あやつの父親を殺したのは余でもあるしの」

「ほう」

「かつて、夫差は会稽山に余を追い詰めたが、余を殺さなかった。憐れみをかけ、命を救った。ゆえに余は嘗胆し、呉をやぶることができた。追い詰められた夫差の使者が、余のもとに来てな。『もしや会稽のためしのごとく、罪を許されるお心はございませぬか』と申したのだ。余は、つい憐れに思い、許そうとした。そうしたら、余の軍師・范蠡が、こう申した」

セイバー、勾践は、ゆっくりとピートの方を振り返り、呟く。

「『天の与うるを取らざれば、かえってその咎めを受く』」

ピートは、黙って彼の視線を受け止める。怒りと恨みと、迷いと疑念に満ちた、昏い瞳だ。

「天は、会稽で越を夫差に賜った。したが、夫差めは受け取らなんだ。その報いが亡国よ。今、天が賜った呉を受け取らねば、夫差の二の舞いだと、こう申したのよ。手本はすぐ手元にあり、会稽の恥を忘れたか、と。余はそれでも、夫差を海中の小島の領主とし、生きながらえさせてやろうと伝えた。するとな、夫差は恥辱に耐えかね、自殺したのだ。その時、顔を布で覆わせたという。あやつが讒言を信じて自刎させた老臣に『あの世で合わせる顔がない』と言って」

セイバーは言葉を切り、天を仰いで嘆き、首を振る。
「天がそのようにしたのだ。結局、余は天の使いとして、夫差の悪行への報いを代行したに過ぎん」

言い終わるや、セイバーはずいとピートに顔を寄せ、本題に戻る。ピートは真っ向から、彼の意志を受け止める。

「よいか。お前が聖杯戦争に招かれたのは、天がお前に聖杯を賜ろうとしておるのだ。受け取らねば、天の咎めを受けようぞ」
「天の父、主なる神が、そのようなことをお命じになりましょうか。罪なき者と殺し合い、その罪に穢れた杯を受け取れと」
「お前がここにおること自体が証明だ。まじない師どもや主催者ではない、司命の神、天帝がそれを定めたのだ」
「悪魔よ、引き下がりなさい。誘惑をやめなさい。神を騙ってはならない!」
「救えぬ愚物だ!」

激昂して立ち上がり、腰の剣の柄に手をかけるセイバーを手で制して、ピートは静かに言った。

「……それに、あなたの行いは、あなたの言ったことと違いますよ」
「なに?」

セイバー、勾践は、聡明な人物だ。ただ、怒りと恨みと、迷いと疑念に、目が曇らされているだけだ。それを解いてやればよい。理をもって説けば、納得させることはできる。憑き物を落とすことは。

「あなたは天命に逆らって、夫差さんの命を救おうとしたんでしょう? 恨み骨髄に徹した相手を、憐れに思って生かしてやろうとした。それは立派な愛です。仁です。夫差さんが自分を恥じて死んでしまったのは、彼自身の責任です。自分で自分を罰してしまったのですから。あなたは天の与えた仇の命を取らず、そのことで天の咎めを受けることもなかった。范蠡さんの言い分はもっともですが、そこは間違いです」

「いわれてみればそうである」

セイバーは腑に落ちた様子で、すとんと椅子に座った。
勾践は呉を併呑した後、七年ほどしか生きなかったが、越は代々国を保ち、百三十年後に楚に滅ぼされたという。死んで百年以上も後のことを、天の咎めと言われても困る。勾践自身に天の咎めは下らなかったのだ。

「主なる神は、こうおっしゃっています。『悪人に報復するのはこの私、神のすることだ。復讐は神に任せよ。お前たちはやらなくてよい』と。また『敵が飢えていれば食わせ、渇いていれば飲ませ、寒がっていれば服を着せてやれ。そうすれば、敵の頭に燃える薪を積むようなものだ』と。敵から手厚い施しを受ければ、彼を恨みに思っている自分が情けなくなり、頭に血が上って顔が真っ赤になるでしょう?」

微笑むピートの言葉に、勾践は意表を突かれ、ぷッと噴き出した。そしてピートの背中をどやす。

「…………ッパはははははは! お前の神も、少しは面白いことを言うではないか! そうよのう、余があやつめに長年へいこらして生き恥を晒したのは、あやつなりの復讐であろうからのう! しからば余は、夫差めに見事な復讐を果たしたわけだ! あやつの頭の上に、燃えさかる薪を積んでやったわ! ざまを見よ!
「う、うーん、ちょっと違いますが、まあいいでしょう」

ともあれ、愉快な気持ちにはできたようだ。機嫌のいいうちに、説得を終えておこう。
「……そういうわけで、僕は聖杯を受け取りません。受け取れば、むしろ天の咎めを受けるでしょう」

セイバーは笑いながら、ピートに掌を向ける。
「わかったわかった、もう言わぬ。お前の決意は堅いようだ。ちょっと試したまでのことよ。余とて、なすべきことは既に終え、眠りについておっただけの身。今は、お前の手助けをせよというのが天命なのであろう」

ほっと息をつき、ピートはセイバーに頭を下げる。自分のぶんまで彼が怒ってくれたおかげで、精神的に落ち着くことが出来ている。
「感謝します。逆境や苦難に立ち向かうには、相互の理解と協力が必要ですから」
「ははは。余は安楽を共にすることはできぬが、苦難を共にするにはよい男と評されておる。この戦争が続く間は、互いに助け合おうぞ」

握手を交わす両者。こうして信頼関係を築いた今、互いを裏切ることは決してない。互いの誇りとメンツに賭けて。

「しかしお前は、范蠡とは真逆よのう。あやつもナヨナヨした男であったが、悪知恵を巡らすことに関しては天下一品であった。頼りにしておった」
「范蠡さんとは、仲が良かったのですね」
「ふん! あの裏切り者の恩知らずめが、余のせっかくの好意をないがしろにして、亡命なんぞしおってからに……」

また機嫌が悪くなり始めるかと、ピートが苦笑した、その時。
セイバーの帯びている二振りの宝剣が、キィィィンと共鳴し、淡い光を放った。

「……来客だな」
「そうですね。殺気があります。どうやら、敵のようです」
「言わずと知れておるわ。では、丁重に出迎えてやるとするか」

セイバーとピートは目を細め、同じ方向を見て、立ち上がる。ピートも同時に気配を感じ取っていた。この宝剣には様々な霊能がある。今のは『滅魂』。歩光ともいい、敵の接近を感知して教えてくれる。

面白い。この付近の地脈は、既に確保してある。ここは余の領土だ。侵掠者から国を護るために、力を尽くして戦うことができる。次第次第に領土を広げ、まずはこの冬木市を、我が国『越』としてくれよう。

セイバーは、テーブルの上のカップを手に取り、中身を一気に飲み干す。ピートが淹れた、ほどよく冷めたコーヒーだ。ミルクも砂糖も必要ない。これこそが、セイバーの能力を、闘志を、憎悪を、引き出してくれる。あの時のように。

「……苦いのう」

【クラス】
セイバー

【真名】
勾践@史実(中国春秋時代)

【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具B

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
対魔力:B+(C)
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。神代の龍種たる夏后禹の末裔という血統と、全身の黥面文身(いれずみ)、宝具である霊剣の守護によりランクアップしている。

騎乗:C+
騎乗の才能。幻想種を除き、大抵の乗り物を人並み以上に乗りこなせる。更に船舶を乗りこなす際、有利な補正が掛かる。

【保有スキル】
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。諸侯の会盟を牛耳る中原の覇者になったとはいえ、部下の范蠡には「苦難を共にはできても安楽を共にはできない人物」と評された。

嘗胆:A
復讐の人生を歩んだ鋼の精神と行動力がスキルとなったもの。複合スキルであり、復讐者・忘却補正・自己回復の効果を各々Bランクで含む。被攻撃時に魔力を回復させ、微量ながらも毎ターン魔力が回復し、自分が憎悪する対象へのクリティカル効果を強化する。復讐は成し遂げられ覇者となったものの、怨みの毒は周囲への疑念に変じた。「臥薪嘗胆」の語源だが、臥薪は後世の付け足し。強力なスキルではあるが、代償として毎日苦いものを嘗めて憎悪を新たにせねばならない。怠るとその間このスキルは使えなくなる。

護国の鬼将:C
あらかじめ地脈を確保しておくことにより、特定の範囲を“自らの領土”とする。この領土内の戦闘において、領主である勾践は高い戦闘力のボーナスを獲得できる。『自刎劇場(しをみるものはしすべし)』はこのスキルで形成した領土内においてのみ、行使可能な宝具である。本拠地は浙江省だが、天下の地脈を整備した禹の末裔にして覇者であり、倭人と越人の類縁関係もあって、日本列島内でも勢力を広げられる。

竜の息吹:C
最強の幻想種である竜が放つマナの奔流。竜(龍)の因子を持つ為所持している。口から毒煙のブレスを放ち、敵の目を晦ます。

【宝具】
越王八剣(えつおうはちけん)』
ランク:B 種別:対人-対軍宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:100

前秦の王嘉の撰『拾遺記』に見える八振りの霊剣。彼が鍛冶師に命じて白馬白牛を犠牲とし、昆吾の神を祀らせて作らせたもの。ただしセイバーが所持しているのは二振りの剣であり、八種の霊能を兼ね備え、各剣の真名解放により卍解めいて効力を発揮する。外見は中国湖北省博物館所蔵の「越王勾践剣」で、表面を硫化銅とクロームメッキ…もとい硫化錫に覆われた(クロームメッキ説はデマとのこと)錆びない銅剣。セイバーたる所以の宝具。多様な霊能を持つ反面、各々の威力はやや抑え気味。パッシブで効果を発揮する霊能もある。二本で別の霊能を一度に操るには、魔力がやや多めに必要。

掩日(エンジツ) :太陽を指すと日中でもあたりが暗くなる。金属の陰気を放出する純陰の剣。周囲を闇で掩い、光を遮る。
断水(ダンスイ) :水を斬ると割れ裂け、切れ目は再び合うことがなくなる。水を防ぎ、斬った傷は塞がらなくなる。
転魄(テンハク) :月を指すと蟾蜍と玉兎がひっくり返る。月光を反射し、標的の魂魄を転倒させて魅了・混乱させる。
懸翦(ケンセン) :空を飛ぶ鳥が刃に触れると両断される。遠くにいる敵に魔力の刃を投射して攻撃する。
驚鯨(キョウゲイ):海に浮かべると鯨も驚いて海底に潜む。剣から電流を放ち、命中した敵を感電させる。水中や濡れた地面にも通電する。
滅魂(メツコン) :身に帯びて夜道を歩けば魑魅も怖れて姿を消す。敵の接近を知らせ、対魔力を強化し、霊体への攻撃力が高まる。
却邪(キャクジャ):妖に魅入られた者に見せると怖れてひれ伏す。精神攻撃を無効化し、魅了・洗脳・混乱などを解除する。
真鋼(シンコウ) :真剛とも。宝玉や金属も土や木を削るようにたやすく切断する。いかなる物質・霊体でも切断できる必殺剣。

『自刎劇場(しをみるものはしすべし)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1-99 最大捕捉:100

呉王闔閭との戦いで、軍師・范蠡が取った戦法が宝具化したもの。三列に並んだ決死の士が進み出て次々と自刎し、相手の度肝を抜く。これに見入っている隙に、伏兵が襲いかかって相手を倒す。闔閭はこの戦いで矢傷を負い、傷が悪化して死亡したという。一種の呪いでもあり、喪中に攻撃を仕掛けるなど「礼儀」に欠ける相手には効果が高まる。兵は地面より召喚され、甲冑・剣・矛・弓矢などで武装している。「護国の鬼将」スキルにより確保した領土内でのみ行使可能。

【Weapon】
宝具である二振りの「越王勾践剣」。彼の名前が刻まれているが、同音別諱の「鳩浅」を用いている上、鳥蟲篆書体なので読みにくい。彼の本拠地である越(浙江省)ではなく、楚の本拠地(湖北省荊州市江陵県)の墳墓で出土しているため、越が楚に滅ぼされた時に戦利品として持ち去られたか、越の王族が楚に降った時にもたらされたものと思われる。彼が持つ剣は英霊としての体の一部であるため、投擲しても手元に戻るし、誰かに渡すことも出来ない。

【人物背景】
中国、春秋時代末期の越の王(在位:紀元前496-前465)。允常の子。父の死に乗じて攻め込んできた呉王闔閭を撃退し死なせるが、3年後に闔閭の子・夫差の反撃で亡国の危機に陥る。軍師・范蠡の助言で夫差に降伏し、命を許されるが屈辱を受ける。帰国後は復讐のため毎日苦い胆を嘗めて憎悪を新たにし、善政を敷いて越を強国とした。外では夫差に従順に仕え、内では賢者に遜って粗衣粗食に甘んじ、驕り高ぶった夫差が遠征に出た隙を突いて呉の都を攻め落とす。数年後には夫差を山中に追い詰めて自殺させ、呉を併呑。中原に進出して諸侯の会盟を主催し、覇者となった。しかし晩年は讒言を信じて有能な家臣を自殺させ、范蠡はこれを予見して他国へ出奔。夫差の死から7年余り後、勾践は逝去した。

セイバーなのでセイバー顔だが、黒髪だし普通に男である。外見年齢は15歳程度のショタジジイ。胆の嘗め過ぎで口の中が黒い。怒りっぽい熱血漢で、執念深く我が強く、積極性と計画性と実行力に富み、雄弁でズケズケと物を言い、苦難に耐え清濁併せ呑む器量の持ち主。性格は乱世の英雄向きだが、名軍師がいないと暴君になりかねない。一応アヴェンジャーの適性もあるが、既に復讐は成し遂げた。

【方針】
やることは終え、今さら望むこともないのでマスターに従う。マスターが強い魔力を持つため、十全な力を発揮できる。宝具はそこそこ強力とはいえ、セイバーとしてはさほど強いわけではない。マスターとの協力が必要となろう。

【カードの星座】
蠍座。


【マスター】
ピエトロ・ド・ブラドー@GS美神

【Weapon】
吸血鬼の能力と神聖な力を共に操り、蹴り技を主体とした格闘技も用いる。

【能力・技能】
『バンパイア・ハーフ』
高位の吸血鬼と人間の混血(ダンピール)。魔力や耐久力、スタミナが高く、様々な吸血鬼の能力を持つ。寒さにも強い。

ダンピール・フラッシュ
 掌から破邪の閃光を放つ。

バンパイア・ミスト
 自らの肉体を霧に変え、あらゆる物理攻撃をかわす。霊的な攻撃には効果が無い。自分以外に他一人を同時に霧化して移動できる。

吸血支配
 血を吸った相手に魔力を送り込み、吸血鬼に変えて服従させ、意のままに操る。ハーフなので効果は永続せず、数週間で戻る。性格上めったにやらない。吸血鬼はそれなりに強く、血を吸った者を新たな吸血鬼に変えるが、夜しか行動できず、日中は棺桶に入って眠る必要がある。また、支配主が別の吸血鬼に血を吸われると、支配されていた人々は解放され、人間に戻ってしまう。応用として、瀕死の重傷の人間の血を吸って吸血鬼として蘇生させた後、その相手に自分の血を吸わせれば、傷は治癒して人間に戻る。

吸精
 バラの花などに手を触れて精気を吸い取り、食事の代わりに出来る。おかげで吸血の必要はなく、魔力補給も容易。

飛行
 魔力によって空を飛ぶ。そう長くは飛べない。

『祓魔術(エクソシスム)』
キリスト教の神、助け主なる聖霊に祈り、破魔の力を放つ。吸血鬼の魔力を正義の心によって制御したもの。

【人物背景】
椎名高志の漫画『ゴーストスイーパー美神 極楽大作戦!!』の登場人物。単行本3巻(ワイド版2巻)から登場。愛称はピート。アニメでのCVは森川智之。イタリア近海の孤島ブラドー島出身で、金髪黒眉の美男子。父は中世欧州を脅かした最強クラスの吸血鬼「ブラドー伯爵」。ドラキュラは父のいとこの奥さんの兄にあたる。ほぼ不老不死であり、外見は10代後半、実年齢は700歳以上(20世紀末時点)。邪悪な父に外見はそっくりだが、性格は善良で熱血、正義感が強く生真面目で天然。女性に手をあげられないフェミニストで、女性には大変モテるが奥手。太陽や十字架は平気だがニンニクはダメ。銀の弾丸や白木の杭もたぶん効く。実は凄まじい音痴であり、ピアノを弾くと怪音波を発し、学校中の窓ガラスが粉砕するなど結構な被害をもたらす。

バチカンに破門されたエクソシストである唐巣神父に師事し、唐巣教会に在住。試験を突破してゴーストスイーパー資格を獲得した。将来の夢はICPOの超常犯罪課(通称「オカルトGメン」)に入ることで、公務員として必要な高卒資格を取るため日本の高校に通っている。いろいろあざとい設定が山盛りの上、実力は紛れもなく高いのだが、なぜかあまり活躍できず噛ませ犬扱いになることが多い不憫な男。

【方針】
聖杯は不要。弱者を救助し悪人を倒し、仲間を集めて生還する。聖杯は破壊可能なら破壊する。

【把握手段・参戦時期】
単行本全39巻、ワイド版全20巻。現在文庫版刊行中。参戦時期は、単行本11巻で高校に編入して以後、19巻の「スリーピング・ビューティー」編より前。GS資格は取得済み(見習い中)。

◆◆◆

二人の対話は、おれが適当に考えた。宗教を押し付けはしないが、聖書は物書き物読みの基礎教養なので読んでおけ。結構パルプで暴力的だ。その物語で救われる人もいるから、それでいい。三国志と史記も基礎教養なので読んでおけ。単語がわからなければWikipediaとかで調べろ。勾践ももったいないのでエピロワに出演させた。最近出た蘭陵王とやや被るが、意識している。

ピートは声がフジキドでブラド公の親戚というややこしいやつだ。真祖の血を引くダンピールは最近どこかで見たな。GS美神のサブタイトルは映画から来ていることはゆうめいなので、それを真似た。おれはGSではおキヌちゃんがすきだ。作者は持てあましてしまったようだが、おれの中では横島キヌになって二人の子供に恵まれている。

【続く】

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