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忍殺TRPGリプレイ【スピン・ザ・ブラック・サークル】02

 前回のあらすじ:ネオサイタマ、キタノ・スクエア、ピザタキ。アルバイトのコトブキは、斜向いに開店した大手チェーン店「ピザスキ」に対抗すべく、店主のタキ、客のフクトとともに作戦会議を行う。決定したのは「プロを雇う」こと。募集に応じてやって来たのは、イタマエのアキジだった!

「指を……見ていました。貴方の指先を。その色素沈着は、バイオイセエビの殻を毎日のように剥いた指だ。見たことがありやす」「う、うう……!」タキは言葉にならず、カウンターに突っ伏して男泣きに泣いた。「姉貴……オレ……オレは……!」アキジのスシは、心を握る。彼のピザは、心を焼く。

「どんな材料にも……材料独自のよさがあるんです。それを邪魔せず、引き出してやるのが『和』の料理です」コトブキとフクトもピザを勧められ、恐る恐る口にした。「こ、これは……!」「ブッダ……!」馥郁たる香り、芳醇で玄妙な味が口とニューロンを駆け巡る。まるでニルヴァーナにいる心地。

「あ、アキジ=サン!合格です!いえ、ぜひ、うちで雇わせてください!」コトブキは深々とオジギした。アキジは恭しく頭を下げる。「あっしは、店を持たずに流しでやってやす。長居はできやせんが、僭越ながら、多少なら技術指導めいたことぐらいは……」「ぜひ!ぜひともオネガイシマス!」

「……頭をお上げください。こちらこそ、ピザの奥深さ、学ばせていただきやす」こうして、イタマエのアキジは一週間ほどピザタキにとどまり、技術指導を行うことになったのである。

修行

 PCはそれぞれ、以下のスキルのうちから一つを習得してよい。これらはスキルスロットを消費しない。このシナリオが終わると、これらのスキルは失われる。
●材料目利き:即応+16
●下ごしらえの心得:回避+4
●タツジン:ホウチョウ:すべての攻撃に無属性エンハンス+1
●焼きの職人:攻撃フェイズで常に集中状態にあるとみなす
●飾り付けマイスター:攻撃・射撃・発動+4
 フクトは1D6[3]=「タツジン:ホウチョウ」を習得。コトブキは1D6[2]=「下ごしらえの心得」を習得。また、PCは「◉知識:料理」を得ても良い。これはスキルスロットを消費する。即座に記憶スロットに入れても良く、シナリオを終えても失われない。フクトとコトブキがともに習得する。

 フクトとコトブキは、基礎からアキジの指導を受けた。二人がミスをしても、アキジは決して声を荒げることも、手を出すことも、叱責することもなく根気強く自身の『ワザ』を伝授し続けた。その結果、ひとつの技術は多少なりとも形になった。実際付け焼き刃ではあるが……「よくできていやす」

「「アリガトゴザイマス!」」二人は深々と頭を下げた。アキジも深々とオジギする。「こちらこそ、ピザの奥深さ……学ばせていただきやした」タキが情報屋稼業で稼いだカネはアキジへの謝礼等に消えたが、タキは文句を言わない。「しかしよォ、ウチはピザで稼いでるわけじゃあねェしな……」

「これから稼げばいいんですよ!」「びっくりするようなピザは出せねェがよ、客に旨いって言って貰えりゃあさ」「ご立派なこったな」タキは冷凍ピザにこだわりがあるのか、アキジに料理を習おうとはしない。いや、実際は密かに少し習っている。あのバイオイセエビ・ピザの味が忘れられずに。

 その時。「「オジャマシマス」」ぎい、とドアを開けて、ピザタキに客が入って来た。二人組のサラリマンだ。「イラッシャイ」「美味しそうなピザのにおいがしたんでね。何か適当に一枚ずつ」「「ハイヨロコンデー!」」フクトとコトブキは威勢よく返事!今こそ修行の成果を見せる時だ。

 アキジは厨房の隅で腕組みし、頷く。二人の眼の前に、イマジナリとしてスモトリめいたピザ調理概念が四体出現した。一触即発アトモスフィア!

調理開始

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◆ピザ(種別:調理概念)×4
カラテ       3    体力        4
ニューロン     1    精神力       2
ワザマエ      2    脚力        2
ジツ        -    万札        -

攻撃/射撃/機先/電脳  3/ 2/ 1/ -

◇装備や特記事項
●調理作業:近接攻撃、回避N、ダメージ1
◉突撃:痛打+1

能力値合計:6

1ターン目

イニシアチブ:フクト/FU&コトブキ/KB(5)→ピザ/PZ(1)
FUはホウチョウ・カラテ、6D6[664344]5成功&殺伐[2]頭部痛打!(イマジナリ戦闘なのでモータルやウキヨでもサツバツが出せる)モブなので即死!残りPZは3体!KBはカラテ、[1631]1成功!PZ1体に1ダメージ!

「イヤーッ!」SLASHSHSH!フクトのホウチョウ・カラテが火を噴いた!『ピザーッ!』サツバツ!ピザの頭部を刎ね飛ばした!ピザ一体消滅!残り三体!「ハイヤーッ!」コトブキはカンフーの構えから圧倒的な下ごしらえを叩き込む!KRASH!『ピザーッ!』命中!だがピザはよろめいただけだ!

PZ3体は…1D6振って1-3ならFU、4-6ならKBへ突撃![341]FUへ1体、KBへ1体が突撃![442][231][153]KBへの攻撃は失敗!FUは[3215][363]回避!

 ピザたちはオスモウ・クラウチングし、二人へ突撃!『『『ドッソイピザーッ!』』』「「ハイヤーッ!」」二人は巧みに回避!ワザマエ!

2ターン目

FUとKBはカラテ、[326442][1325]2発命中!残り体力3のPZが3ダメージを受け倒れる!残り2体!2D6[35]FUとKBへ1体ずつ突撃、[463][441]2成功2発。FUは[3531356]回避&迎撃!KBは8D6[11236242]回避。PZ1体の残り体力3!

「「ハイヤーッ!」」『ピザーッ!』ピザ一体消滅!残り二体!『『ドッソイピザーッ!』』ピザたちがフクトとコトブキへ突撃!アブナイ!「「ハイヤーッ!」」『ピザーッ!』二人は華麗に躱し、フクトはピザ一体にホウチョウを叩き込む!ワザマエ!「まだまだ!」「ハイ!」カラテあるのみ!

3-4ターン目

FUとKBはカラテ、[422322][5243]2発成功。体力3のPZを倒す。残り1体!PZは[6]KBへ突撃![223]攻撃失敗!FUとKBはカラテ、[421231][2352]2発成功。3ダメージを与え残り体力1とする。PZは[6]KBへ突撃、[422]1成功。KBは[32666566]回避&迎撃!PZ全滅!

「「ハイヤーッ!」」『ピザーッ!』ピザ一体消滅!残り一体!『ドッソイピザーッ!』コトブキへ突撃!「「ハイヤーッ!」」華麗に躱し、迎撃を叩き込む!『ピザザザーッ!』ピザはもんどり打って倒れ、まな板の上のピザめいて大人しくなった。ゴウランガ……!「よし!」「やりました!」

生地は1D6[4]=ミラノ風、ソースは1D12[3]=バジルソース、トッピングは10D6[51][41][63][46][24]=餅、パイナップル、マヨネーズ、モッツァレラチーズ、イカ。評価は1D100+50。[42]+50=92!

調理終了

「ヘイオマチ!」「おお、ハヤイ」二人の客は差し出されたピザを見て目を丸くする。「モッツァレラチーズはともかく、餅、パイナップル、マヨネーズ、それにイカ?」「どういう組み合わせだ……?」二人は半笑いで、恐る恐るピザを一切れ、口に運んだ。「……ムウッ!」「これは……!」

「いかがでしょうか?」コトブキが不安げに尋ねる。「なかなか……」「これは少し考えを改めた方がよさそうだな」二人は手早くピザを平らげ、ケモビールを飲み干し、代金をテーブルに置くと名刺を出してオジギした。「改めましてドーモ。私はピザスキ社の営業課、チャノです」「ノミタケです」

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 Stable Diffusion Demoに「two japanese buisiness man」と呪文を唱えるとこう出ました。どっちがどっちかわかりませんが、ノミタケはまだ鉄仮面を被っていません。AI絵なので顔や手が怖いですが大目に見てください。

???

「ど、ドーモ。コトブキです」「フクトです」「アキジと申しやす」各々アイサツを返す。「俺が店主のタキだ。ピザスキ?そこの、斜向かいの店のか?」タキは訝しんだ。「ハイ。ヨロシクオネガイシマス」「アッハイ」「商売敵か。まあ、共存共栄と行こうや」タキは鷹揚に肩をすくめた。

 だが、チャノとノミタケは首を振った。「否。我がピザスキは、完全にこの地域のピザ需要を支配し、一点の曇りもない勝利をおさめなければならない。上司の命令です」「あなた方にはピザスキの傘下に入ってもらいます」「はァ?」タキはマヌケな声をあげた。チャノとノミタケは笑う。

「ここをピザスキのフランチャイズ・チェーンのひとつとします。店は古びて小汚く、閑古鳥が鳴いているようですが、なかなか腕のいい職人もいらっしゃる様子。実にもったいない」「タキ=サン。いかほどで買収されてくれます?」タキは怒った。「ここはオレの城だ!サンオクエンで考えてやる」

 二人は引き下がらない。「名誉店長にでもして差し上げますよ。名ばかりのね」「給与も支払います。職人の方々より給与は低くなるでしょうが」「テメエら……」「そちらの……コトブキ=サン。貴女はアイドル性があります。然るべくプロデュースすれば、我が社の営業の即戦力になるでしょう」

「お断りします」コトブキは笑ってオジギした。「私は自我があります。私はこの店を気に入っています」「そうおっしゃらず」「ダメです!」「……でしたら、こうしましょう」チャノは懐から書類を取り出した。「我がピザスキとの『ピザ勝負』を受けて頂きたい」「「「ピザ勝負……!」」」

 ピザ勝負。こうした店舗間での勝負は、ネオサイタマでまれに行われる。遺恨や対立関係に決着をつけるための「決闘」だ。敗者は恥辱を受けるだけでなく、実際負け犬として扱われ、例外なく廃業やセプク。あるいは膨大な借金を抱えてカニキャッチ漁船行きの憂き目に遭う。「いいでしょう」

 コトブキは頷いた。「ピザ勝負、お受けします!」「おい!ここはオレの店だぞ!?」タキは慌てた!「言質は取りましたよ。では、ここにハンコとサインをオネガイシマス」「ハイ」「オレの店だっつってんだろ!」タキはコトブキを必死で止めようとした。「まあまあ、アキジ=サンもいるしさ」

 フクトはタキを宥めた。アキジは何も言わず、真剣な表情でこちらを見ている。タキは頷いた。「……わかったぜ!」アキジの腕前にかかれば、ピザスキごとき。それに、こちらには泣く子も黙るソウカイ・シンジケートがついている!「よろしい」「その代わり、こっちが勝てばそっちは閉店だ!」

「委細承知。日取りや決闘方法は、後から提示致しますよ」「受けて立ちます!」「いいか、こっちにゃソウカイ・シンジケートがついてンだ。ズルしたらわかってンな」「ソウカイ・シンジケート。弊社もお世話になっておりますね」チャノとノミタケは笑った。「叩き潰して差し上げましょう!」

???

 ……数日後、勝負当日。キタノ・スクエアの広場にはピザ・スキによってピザ勝負用のブースが設営され、満員の観客がいまかいまかとその始まりを待っている。『ドンツクドンツクブブンブーン。ドンツクドンツクブブブンブブーン。ヒーイェヒイェヒイェ、イェイェイェ、ピザ・スキ!』

 会場にはピザスキのテーマEDMサウンドが流れ、そこかしこにピザスキのブースへとそれとなく誘導するような導線が仕込まれている。さらに本社からの応援一流自我研修済みスタッフまでをもそろえ、材料も今日のために調達した、最高級の、普段は使用しないオーガニック素材をそろえてある。

 チャノとノミタケは、本気でピザタキを潰すつもりだ。そしてこの勝負をピザスキの宣伝の場とし、徹底的にキタノ・スクエアのピザシェアを支配しようとしているのだ!『レディース・エン・ジェントルメン!それではこれより、お待ちかね!ピザスキVSピザタキのピザ勝負を行います!』

「ワオー!」「ウォーッ!」「ヤッター!」「早く食べさせろ!」観客たちはすでにボルテージを上げている!集まった観客たちに制限時間内にピザを提供し、投票数が多い方が勝利だ!「数で勝負か。あっちの方が人数的には圧倒的に有利ってわけだ」フクトは鼻を鳴らす。当然資本力でも敵が有利。

「調理・販売スタッフ、合計四十人はいるぜ。客にサクラも仕込んでるだろうな。対するこっちは、タキ=サンを合わせても四人か。誰か助っ人は呼べなかったのか?」「……オレなりに手は尽くした。コトブキのツテで、ツキジからピザの材料は大量に調達できてるンだ。後は、なんとかしろ!」

 ピザスキの妨害工作によるものか、誰も助力に来なかった。圧倒的不利。だが、やるしかない!アキジは静かに告げた。「コトブキ=サン、フクト=サン。我々はいつもやってきたことをやるだけです」「「ハイ!」」『皆様投票券はお持ちになりましたね!?では、ハジメテ!』タダオーン!

 合図の銅鑼が打ち鳴らされた!「「「ワオオオーッ!」」」客が動く!

戦闘開始

【続く】

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