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【聖杯戦争候補作】ホーリー・グレイル・ヴァーサス・フューリー・ソウル

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「こんなのってないぞ……聖杯戦争いい加減にしろよ……」

痩せて小柄、黒髪でショートボブ。永久脱毛した眉毛の代わりにイバラめいたタトゥー。テックジャケットにジーンズ、エンジニアブーツ。首には「地獄お」とレタリングされた赤いマフラー。彼女の名は、エーリアス・ディクタス。今、彼女に生命の危機が迫っている!

「■■■■■■■■■■■■!」
ナムサン!狂乱の叫びと共にエーリアスに挑みかかるのは、右手に棍棒を握った、スモトリめいた巨漢!バーサーカー(狂戦士)のサーヴァントだ!その上半身には炎が纏わりついているが、火傷は急速に修復していく!

棍棒がエーリアスめがけ振り下ろされる!アブナイ!だが彼女はかろうじて回避!そのまま棍棒は道路のアスファルトを砕いて穴を穿ち、破片を飛び散らせ、蜘蛛の巣めいた亀裂を作る!コワイ!燃え盛るライブハウスからは、悲鳴を上げてパンクスたちが脱出する。さっきまでエーリアスらがいた場所だ。

「■■■■■■!」「アバーッ!」「アバーッ!」「ペケロッパ!」
ナムアミダブツ!バーサーカーは危険な棍棒を振るい、周囲の市民を無差別に殺戮!ネギトロ、トマト、ピザめいた惨殺死体が次々と出来上がる!まるでツキジだ!さらに棍棒を振るう!振るう!振るう!逃げ回る市民!「「「アイエエエーーエエエ!」」」

「ち、畜生!せめて俺だけを狙え!無関係な奴らを巻き込むんじゃねえ!」
市民たちがNPC、電子情報として擬似的に再現されたドロイドめいた存在であることは、さっき知った。だが、そうであっても。激しい混乱と怒り、彼女の善良な人間性が、この場を逃走するという最善の選択肢を拒んでしまった。自分がマスターであることを露見させた。

「……あの女、やはりマスターのようだが……近くにサーヴァントがいないとは。不運な奴」宵闇と月光の中、付近の路地裏に潜み隠れ、双眼鏡で様子を伺う者あり。スキンヘッドの上に大きく「卍」のタトゥーを入れ、チョビ髭を生やした怪しい男。彼こそがバーサーカーのマスターである。聖杯戦争に乗った彼は、己のサーヴァントを暴走させ、無差別にマスターやサーヴァントを呼び集めて殺すという愚劣な作戦に出たのだ。

「イヤーッ!」カラテシャウトを発し、エーリアスは炎を振り払ったバーサーカーの背中を駆け上ると、両手で側頭部に強烈な掌打を放つ!ヤバレカバレのカジバヂカラか?それともカラテカなのか?否!彼女は恐るべきカラテとジツを振るう半神的存在、ニンジャなのだ!

「おや、少しはやるか。だが……生身の人間が、サーヴァントに、それもバーサーカーに、勝てるものかね」

「■■■■■■!」「グワーッ!」バーサーカーはエーリアスの掌打にびくともせず!そのまま背後に倒れ込み、ブリッジと同時に押し潰す!彼女のカラテ……物理的戦闘能力は、一般的なニンジャに較べれば絶望的に弱い。非ニンジャのヨタモノ数人を撃退するだけで精一杯というところだ。

カラテを挑めば、実際貧弱なこの敵マスターは、手負いのエーリアスにも負けるだろう。しかし、イクサとはただカラテをぶつけあえば解決するものではない。手駒のマジックモンキーを用いるブッダの頭脳があればこそだ。
彼はバーサーカーへの魔力供給をブーストするため、盗み取ってきた違法薬物のカクテルを一気飲みした。遥かに良い。

どうにか距離を取ったエーリアスは、突如ニューロンへ急速に流れ込んできた大量の情報に混乱していた。(確か、ライブハウスでカードゲームをやってる時に、配られた真っ白いカードを手に取った瞬間からだ。『来た』時と同じだ)イクサの最中だが、溢れる疑問に頭が追いつかない。必死で攻撃から逃げ回りながら、彼女は必死で考える。

整理しよう。ここは結局なんなんだ?ネオサイタマやキョートじゃなくてアメリカ大陸だと?ニンジャの仕業か?どっかの並行世界か?いや、月の超UNIX「ムーンセル」が云々ってことは、つまりそいつが定義したIRCコトダマ空間だかのようだが、しかし、上空に黄金立方体はない。通常の物理空間を住民含めてほぼ完全に再現し、そこでの法則までも再現してやがる。とんでもねえUNIXだ。まるでニンジャだ。

この俺が現実の俺本人なのか、それとも月UNIXが擬似的に再現した電子情報、コトダマの集まりに過ぎねえのかは、よくわからねえ。だが、この俺は俺だ。これが今は現実で、俺の記憶とアイデンティティを持つ意識体が……ええと、なンかそんな感じだ。まずもって、俺を「俺だ」と定義しねえといろいろ不安定な俺だ。俺だと考えるしかねえようだ。元の役割もそこらのパンクスってだけだ。

でもって、聖杯戦争とかいう殺し合いに、俺が選ばれちまうとは。また厄日だ。寝てたらアパートをクレーン鉄球で破壊されたのよりひでえ。もっとカラテのある、邪悪なニンジャとか呼びやがれ。そいつらだけでやってろ。俺は奥ゆかしくて善良な小市民的ニンジャなんだ。聖杯への願い事なら、俺の体を取り戻して、この体を元の持ち主に返還するッてことだが、何か別の、マシな方法があるはずだ。

そしてなんてこった、サーヴァントがニンジャより強いなんて。いや、英霊ってんならイモータル、半神的存在だから、ほとんどニンジャか。じゃあ単に俺のカラテが足りねえんだ。情けねえ。カラテがダメならジツがある、と言っても、英霊で狂ってるこいつにはユメミル・ジツが効かない。さっき追いつめられた時に出た『あいつ』のカトン・ジツも、あんまり効いてない。どうすりゃいい。敵のマスターはどこだ。

サーヴァントを呼び出せるとかいう白いカードは、最初に外へふっ飛ばされた時、風でどこかへ飛んでいってしまった。ブッダはいつも通り寝ているようだ。呼び出せたのなら、そいつが俺を探して来るまで、独りでこいつを相手しなくてはならない。無理では?NPCのマッポやデッカーじゃ、こいつはどうしようもねえ。正義感の強いマスターやサーヴァントが駆けつける可能性もあるが、期待薄……

「■■■■■■!」「グワーッ!」ウカツ!注意力散漫!エーリアスはついに棍棒の一撃を食らって吹っ飛び、「不如帰」のネオン看板にぶつかってゴロゴロと転がり、道路に突っ伏す!「畜生……俺は……俺はニンジャなのに……!ブッダもオーディンもいねえのかよォ……」

悔しがるエーリアス。それを聞いて、敵マスターは邪悪にほくそ笑んだ。イディオットめ、ニンジャ気取りのイカレたパンクスか。この無慈悲な殺戮ゲームで、強力なサーヴァントを引いたのは幸運だった。当たりを引いた。私にはブッダが微笑んでいる。ゲームに勝って聖杯を手に入れ、世界の王になれと、ブッダが命令しているのだ。

そして私は従僕に命ずる。こいつに―――

「トドメオサセー!」


……その時!


ハイウェイから恐るべき速度でエーリアスめがけて迫る真っ赤なスーパーカーあり!何者?まさか、そのバッファロー殺戮武装辺境鉄道めいた猛スピードで、哀れなエーリアスを轢殺し、無惨なネギトロに変えようというのか!?おお、ブッダよ!あなたはまだ寝ておられるのですか!

否!スーパーカーは道路の登り坂を利用して、飛んだ!
そして見よ!見るがいい!飛翔するスーパーカーの屋根の上に立ち、平然と拳銃を構える、ライダースジャケットを着た謎の男を!そのサングラスと、赤黒いハチマキを!


【ホーリー・グレイル・ヴァーサス・フューリー・ソウル】


BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!

ブルズアイ!男の放つ拳銃弾は、一発も外すこと無くバーサーカーの全身に降り注ぐ!さらにスーパーカーが放物線を描きバーサーカーに激突!

「■■ーーー■!?」

これほどの速度、これほどの質量を真正面から喰らえば、たとえニンジャであろうと実際即死の危険!だが、バーサーカーはニンジャではないが、尋常な生き物でもない!英霊、サーヴァントだ!棍棒を捨て、ダメージを顧みず、凄まじいサーヴァント耐久力とサーヴァント筋力によってスーパーカーの激突を受け止める!

「■■ー■!」後方へふっ飛ばされつつ、勢いを利用し、サーヴァント敏捷性で空中へ連続回転上昇!ワザマエ!それを追って、謎のハチマキ男も跳躍!スーパーカーは滑らかに道路上へ着地し、走り去っていく!自動操縦なのだ!両者はビル群の猥雑なネオン看板を飛び移り、さらに上昇!上空を飛んでいた報道ヘリにしがみつき、片手でぶら下がる!

「な……!?」「なんだ、ありゃあ……!?」
敵マスターとエーリアスは、呆然と上空を見上げる。

「■■ー■!」男の銃撃を受け、手負いのバーサーカーはヘリから飛び降り、建設中の高層ビルの屋上へ!追うハチマキ男!ハチマキ男は無言のまま、バーサーカーは狂乱の叫びをあげながら、ワン・インチ距離でのイクサを開始!右拳!左拳!メイアルーアジコンパッソ!ブリッジ回避!地上数百メートルの鉄骨の上で、目まぐるしいカラテの応酬だ!

「■■ー■!」バーサーカーは業を煮やし、鉄骨からハチマキ男をビルの谷間めがけて突き落とす!男は巧みに姿勢を制御すると、やや低い別のビルの屋上に設置された貯水タンクにウケミを取って着地!瞬時に膝のバネを用い、跳躍し、対空パンチを放つ!鉄骨から飛び降りパンチを放ってきた、バーサーカーへと!

「■■ーーーーーーー■!!」

ドクロめいた月を背景に、両者のカラテが激突!!


――――――――――――――


ハァーッ!ハァーッ!なんだあいつは……サーヴァントなのか?あの女の?」目を血走らせ、口から泡を吹き、暗い路地裏を逃走するのは、バーサーカーのマスター。あまりにも意表を突く奇襲、物凄いカラテだった。ニューロンが焼け焦げそうだ。

混乱する彼の目の前へ、轟音とともに何かが二つ落下!それは彼の従僕、スモトリめいたバーサーカーと、赤黒いハチマキの男!「アイエエエエエエ!?」敵マスターは失禁!血みどろのバーサーカーは、よろめきながらも立ち上がる!だが!

「グワーッ!?」痛烈な前蹴りが、敵マスターを路地裏奥のビルの壁へと吹き飛ばした!袋小路!敵マスターは壁の下に設置された大きなゴミ箱の上に落下し、ブザマに転げ落ちる!

「見つけたぞ。お前が奴のマスターだな」「ゴボーッ!ば……バカナー!?」吐血!貧弱な生身の人間である敵マスターには、この男のカラテは強烈過ぎる!男は決断的に敵マスターへ向け疾走!

バーサーカーが男の背後から襲いかかるが、男は這いずっていた敵マスターの襟首を掴むや、振り向きざまに突き出す!フレンドリーファイア!敵マスターの顔面にバーサーカーの右拳が命中!片眼が飛び出し、歯が飛び散り、首が180度回転!直後!

「■■ー■!?」「アバーッ!?」ゴウランガ!これは伝説の暗黒カラテ奥義、サマーソルトキック!バーサーカーと瀕死の敵マスターは同時に空高く蹴り上げられ……刹那、ハチマキ男が後を追って跳躍!垂直上昇する両者よりも高く!

「「ア■バ■ー■ー■ー■ッ!!」」サツバツ!男は両者を上空から斜めに蹴り落とした!その落下地点には、ナムサン!違法路上駐車中のタンクローリーだ!危険!

「ゲームオーバー」男がそう呟く。ドクロめいた月もまた、この騒乱を見下ろし、「インガオホー」と呟ZGGGGGGTOOOOOOOOM!タンクローリーの燃料タンクを両者が突き破り、その衝撃で燃料に着火!爆発炎上!

「「サヨナラ!」」バーサーカーとその邪悪なマスターは、タンクローリーもろとも壮絶に爆発四散!ナムアミダブツ!男はその爆発に背を向け、開脚着地して落下の衝撃を受け流した。タツジン!

「あ……アイエエエ……」

男の着地点の目の前にいたエーリアスは、あまりのことに口も聞けない。彼のイクサを見ていたのだ。

こいつは、この男は、どう見ても。

ニンジャだ。


――――――――――――――


男は立ち上がり、サングラスを外す。赤黒いハチマキに、指ぬきレザーグローブ。赤いインナーシャツに袖をまくったライダースジャケット、ジーンズ、スニーカーというラフな格好。左肩から右腰にベルト。黒髪だが、見たところ日本人ではなく、金髪ではないにしてもコーカソイドのようだ。それでも会話は通じる。低く渋い声で、男は話しかけた。

「待たせたな。君が俺のマスターか?」
「あ、ああ。……ドーモ、エーリアス・ディクタスです。エーリアスでいい。ありがとう、助かったぜ」

エーリアスは手を合わせて丁重にオジギした。アイサツは大事だ。古事記にも書かれている。アイサツをされれば、返さねばならない。特にニンジャであれば、本能的に、必ず返すはずだ。

だが……彼は、先程のイクサで、一度もアイサツをしなかったようだ。たとえ相手がニンジャでなくても、自分がニンジャならば、イクサの前にアイサツをするのが礼儀だろう。アイサツ前に一度だけ許されたアンブッシュ(不意打ち)にしても、長すぎる。拳銃があれば必要なかったのか、スリケンもクナイ・ダートも投げていない。カラテシャウトすら発していない。

では、彼はニンジャではないのか?それにしては、彼のカラテとアトモスフィアは、あまりにもニンジャに近い。

「エーリアス(別名義)か。あからさまに偽名だが、まあ詮索はしないでおこう。俺は『ライダー』のサーヴァント。真名は、『カン・フューリー』。凄腕の警官だ」

警官。通常のマッポ、というよりはデッカー(刑事)だろう。熟練デッカーの戦闘力は、状況次第ではサンシタニンジャにも匹敵する。そういえば、右の胸元にデッカーのバッジをつけている。とすると、デッカーの英霊か?彼は、そんなに有名なデッカーだったのだろうか?

しかし、ライダーが自己紹介を続けると、エーリアスは確信した。

「俺はかつて、ただの人間だった。だが、ニンジャ装束を纏った謎のカンフーマスターに、相棒を殺された。カタナで、すっぱりと。錯乱した俺は、奴に拳銃を撃とうとしたが、その時、凄まじいことが起きた。落雷に撃たれ、コブラに噛まれたんだ」

「気を失うと、少林寺で僧侶たちがカンフーの修行に励んでいる光景が見えた。俺の意識は、寺の奥へ進んで行った。そこに座っていた老僧が、俺に名を授けた。『カン・フューリー』、すなわち『カンフーの怒り(Fury)』と」

「目を覚ますと、目の前にカタナを構えて走ってくるカンフーマスターが見えた。相棒の仇が。時間が、敵の動きが、泥めいて遅く感じた。俺の肉体は瞬時に変異し、カンフーのパワーが宿った

「俺はそいつを返り討ちにし……そいつが遺した赤黒の布を、忘れないよう額に巻いた。俺は力を得た。だが守るべきと、行うべき正義がある。だから、このカンフーで犯罪と闘うと、誓ったんだ」

やはり、こいつはニンジャだ。どう考えても。少なくとも、それに非常に近い存在。あのハチマキが、彼のメンポ(面頬)なのだ。正体はともあれ、こいつのカラテ(カンフー?)が凄まじいのはよくわかった。あのニンジャスレイヤーと比べても、そう見劣りはしないだろう。

何より、こいつは善良な人間性を保っている。罪もない奴を殺戮する、さっきの奴らのような悪人じゃない。狂った復讐鬼でもない。映画やカートゥーンの主人公めいた、悪人には無慈悲な、正義のヒーローだ。

当たりを引いた。エーリアスはそう確信し、己のサーヴァントに提案する。
「カン・フューリー=サン、いや、ああっと、ライダー=サンか。言っておくが、俺はこの殺し合いに乗る気はない。といって、死ぬつもりもないぜ」

ライダーはうなずき、無言で続きを促す。エーリアスは慎重に言葉を選ぶ。説明は苦手なのだ。

「さっきの奴らみてえに、全員が殺し合いに諸手を挙げて賛成、っていうなら仕方ねえ。けど、そうでない奴もいるはずだ。俺みてえに。願い事がないわけじゃないが、そんな奴まで皆殺しにして願い事を叶えたって、俺は寝覚めが悪いし、俺の仲間にも顔向けできねえ。アンタはさ、正義のヒーローなんだろ?聖杯戦争をやめさせるのに、協力してくれねえか。帰り方はおいおい考えるとしてもよ」

ライダーは無表情のまま、静かな怒りを込めて答えた。

「俺の仕事だ(My Jooob)」

エーリアスはうなずき、無言で続きを促す。ライダーは続ける。

「当然だ。俺は警官、法の番人で守護者なんだ。こんなボーシット(くそったれ)な殺し合い、まっぴらゴメンだ。俺は聖杯戦争を止める。聖杯を破壊し、開催者をやっつけて、逮捕する。話しても聞かないバカどもは、やっつけりゃいい。シンプルだ。すべてカンフーで解決できる。エーリアス、君と俺の望みは同じだ。やろう」

決断的な答えだった。

「おう!そう言ってくれると信じてたぜ!」
「聖杯は、確かに君の願いを叶えてくれるさ。俺をサーヴァントにしやがったからな。壊してくれと言ってるようなもんだ」

二人の傍に、先程走り去った真っ赤な自動操縦スーパーカーが戻ってきた。二枚のシザードアが翼のように開く。
「この車が、俺の宝具だ。助手席に乗ってくれ。ひとまず他のマスターを探し、殺し合いに乗るか乗らないかを問う。弱者を救助し、味方を増やす。街中で暴れてる奴がいれば、俺がブチのめす。君は安全のため、この中にいればいい」
「まあ、そうだな。お言葉に甘えるよ。俺だって戦えなくはないんだが、アンタの方がよっぽど強いからな」

笑顔を交わして握手し、二人はスーパーカーに乗り込む。長いイクサの始まりだ。

『ようこそ、お嬢さん。私は「ホフ9000」です』
カーナビUNIX画面に壮年の男の顔が浮かび上がり、口のライトを点滅させながら人工音声で喋った。
「この車に搭載された人工知能だ。この車自身と言ってもいい」
「ど、ドーモ、ホフ9000=サン。エーリアスです」
エーリアスはアイサツを返す。アイサツは大事だ。

「ホフ、出発だ。周囲の異変を感知してくれ。それと、ミュージックを頼む」
『OK、カン・フューリー』
ライダーだ。今からそう呼んでくれ」
『OK、ライダー』

ガオオオオン!猛烈なエンジン音と共に、急発進!まずは再び、ハイウェイへ!ホフ9000は男らしい声で、男らしい歌を歌い出す。このハードなイクサを暗示するかのように。


Kung Fury主題歌『トゥルー・サヴァイヴァー』 by デヴィッド・ハッセルホフ (私家版和訳)

ドミノが倒れ、街では暴動
ベイビー、時間だ
撤退もしない、降伏もしない

悪魔が現れる、過去からの影が
憤怒の炎を燃えあがらせて

時間切れだ、時が過ぎていく
今夜、カウントダウンの音が聞こえる

俺たちには必要なんだ
アクションが!
真の生存者のようになりたいなら
アクションが必要だ!
俺たちの愛を奪いたいなら
必要なんだ
生きる情熱、信じてるんだ
燃える心と、まっさらな気持ちを
アクションしろ!
真の生存者のようになりたいなら

灰をかきわけ、不死鳥が再び蘇る!
戦え、正義と善のために
俺たちが信じるもののために

俺たちには必要なんだ
アクションが!
真の生存者のようになりたいなら…


ハイウェイを疾走するスーパーカーの前に、巨大なドクロめいた月が浮かぶ。果たして、マジックモンキーはブッダの掌に噛みつき、ボーでブッダの中指をケジメできるのか?は観測者から当事者となり、インガオホーを迎えるのか?これもまた、古事記に予言されしマッポーの一側面か?

今はただ、走れ!カン・フューリー、走れ!

【ホーリー・グレイル・ヴァーサス・フューリー・ソウル】終わり

【クラス】
ライダー

【真名】
カン・フューリー@Kung Fury

【パラメーター】
筋力A+ 耐久C 敏捷A+ 魔力D 幸運C 宝具A+

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。彼が得意とするのは自動車の扱いであり、獣に対する騎乗能力は本来ならばさほど高くない。ライダーのクラスの恩恵でこのランクになっている。バイキング時代にアスガードというティラノサウルスに乗ったことはあるが、自分で御していたわけではない。また、かつてタイムスリップのため、キーボードに乗ってコトダマ空間めいたどこかを飛翔したことがある。

【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。決定的な致命傷を受けて斃れても、仲間に超常的ななんかでどうにかしてもらえば復活することができる。天国で自分のスピリットアニマルに「生き返らせろ」と迫り、遺体を見つけた仲間のハッカーマンに傷を(ハッキングで)治してもらって復活した逸話に基づく。コトダマ空間(オヒガン)と関わりがあるようなので、エーリアスの『ユメミル・ジツ』でも効果があるはず。

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要となるが、膨大な魔力を必要とする能力など持っていない。かつてパートナーを目の前で失ったトラウマにより、あえて一人で行動する癖がついているが、戦いの果てに「チームワークはとても大切」と学んだ。そのため、彼は大事な仲間を決して見捨てることはない。仲間のピンチには必ず駆けつけるだろう。

【宝具】
『不滅闘魂・功夫之怒(ソウル・オブ・カン・フューリー)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:自分 最大捕捉:-

ライダーに宿る、謎のカンフーソウル。ただの警官だった彼を、忍殺のニンジャめいたスーパーカンフー戦士に突如変貌させた。戦車を軽々と持ち上げて投げ飛ばす、引きちぎった腕をプロペラにして飛翔するなど、常識を覆す凄まじいカラテもといカンフーを誇るが、ジツやニンポの類は一切使えない。天国で自分のスピリットアニマルだと名乗る謎の知性コブラに遭遇しているが、コブラ・ニンジャクランとは特に関係がないようだ。

『霹靂遊侠・霍夫九千(ナイトライダー・ホフ・ナインサウザンド)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:2人

ライダーが駆る真っ赤なスーパーカー(ランボルギーニ・カウンタック)。ライダーがライダーたる所以の宝具。80年代の人気米国SFドラマ『ナイトライダー(Knight Rider)』に登場するドリームカー「ナイト2000」のパロディめいた存在。元ネタと同じく(HAL9000ともひっかけて)自立型スーパーコンピューター「ホフ(HOFF)9000」を搭載。『ナイトライダー』の主演デヴィッド・ハッセルホフが演じている。スペック等はおおよそ「ナイト2000」と同じと思われるが、詳細は不明。天国(アニメパート)ではプロペラを出して空を飛んだ。

『北欧雷神・托爾降臨(デウス・エクス・マキナ)』
ランク:-(EX) 種別:? レンジ:? 最大捕捉:?

どうしようもないピンチに陥った時、ライダーの知り合いである北欧神話の雷神トール(ソー)が突如やってきてウルトラマン風に着地し、とにかくなんとかどうにかしてくれる。ハンマーからビームを放って時空を超えるポータルを作ったり、そこからライダーの仲間たちを呼び寄せたり、敵集団にたくさんビームを放ってネギトロに変えたりした。あまりにもチートなので封印されているが、意外と気軽に出てくるかもしれない。ザ・ヴァーティゴやミーミーは多分呼べない。なお、ニンジャ神話と北欧神話には類似点が見られる。

【Weapon】
カンフーと拳銃。拳銃からはほぼ無制限に弾丸を発射できるが、サーヴァント相手には急所(股間等)を狙わない限り効果が薄い。何事もカンフーで解決するのが一番だ。野球バットやヌンチャクを装備すると月がばくはつしかねない。

【人物背景】
2015年5月に公開されたスウェーデンの80年代アメリカ風超絶濃縮傑作バカ映画『Kung Fury(カン・フューリー)の主人公。監督・脚本のデヴィッド・サンドバーグ自身が演じている。マッポー都市マイアミで警官をしていたが、追跡していた謎のカンフーマスター(ニンジャ)に相棒を惨殺された。その直後、落雷に撃たれると同時にコブラに噛まれ、少林寺の伝説に残る新カンフーの達人たる“選ばれし者”、カン・フューリーへと生まれ変わった。

どこかで見たような懐かしい風貌、ダークナイト版バットマンみたいな声と喋り方をし、火薬量16倍のハチャメチャ痛快ヴァンダミングアクションを繰り広げるカンフーヒーロー。メキシコから来たキンメリア人のような、心身ともにつよくたくましい真の男であり、犯罪者に対しては極めて無慈悲。彼の世界では『TIME』や『People』の表紙を飾るほどの有名人。ヒトラーを倒すためナチス時代のドイツへタイムスリップしたり、謎の恐竜がうろつくバイキング時代に漂着してトール神に救われたり、死んで生き返ったりした。 なお、忍殺語を発したり、カラテシャウトやカンフーシャウトをあげることはない。彼は『ニンジャスレイヤー』の登場人物ではないのだ。いいね?

【方針】
法を犯す行為は許さない。聖杯を破壊し、主催者および殺し合いに乗る奴らを全員やっつける。俺の仕事だ(My Jooob)


【マスター】
エーリアス・ディクタス@ニンジャスレイヤー

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
『二重人格』
エーリアスの記憶と意識は、とある女性の肉体に憑依・間借りしている男性人格である。元の肉体の持ち主の意識は深く沈んで眠っており、肉体側がピンチになると一瞬だけチェンジして能力(カトン・ジツ)をぶっ放す。男性人格は「あくまで仮の肉体であり、いつかは返す」ことを目標にしているが、その方法は見当がついていないようだ。二つの意識には各々本来の名前があるが、その名前で自己を定義すると片方が消えてしまう可能性が高いため、あえてエーリアス・ディクタス(別名義)と名乗っている。コトダマだ。

『ニンジャ』
ニンジャであること。彼女は(肉体の元の持ち主、宿主ともに)ニンジャソウル憑依者である。ニンジャ一般の基礎的能力をおおよそ持つ。ただしジツ(術)特化型であるため、カラテはニンジャにしては非常に弱い(一応ヨタモノ数人を撃退できる程度)。女性人格側はまだしも強いが、現状では一瞬しか出現できない。

『ユメミル・ジツ』
エーリアスの用いるジツ。他者のニューロンをハッキングする、精神潜行能力。宿主人格の用いていたジツと名称は同じだが、いろいろあって変質している。接触限定だが、ローカルコトダマ空間(脳内認識)に潜行して相手を短時間乗っ取ったり、ニューロンを焼いたり、錯乱状態や呪いを解除したり、逆に相手の意識を自分のローカルコトダマ空間に招き入れたりと、色々応用が効く。ニンジャ、ないしそれに準ずる存在に対しては、相手がジツ行使中など極度の集中状態にないと無効。詳しくは忍殺wikiとかを参照重点(マルナゲ)。コトダマ関係においては非常に強力なジツであるが、制限も多く万能ではない。使用者のニューロンへの負担も大きく、多用はできない。

『スシ職人のワザマエ』
老舗スシ屋「ワザ・スシ」で特殊な修行を積んだため、その道のプロに近い高度なスシ作成のワザマエを持つ。材料が揃えば美味いスシを握れる。スシは栄養補給に最適な完全食であり、効率よくエネルギーを回復させ、特にニンジャ回復力を高める。サーヴァントにも効果があるかもしれない。高速で多数のスシを作る奥義「ガンフィッシュ」も使用可能だが、カラテが乏しく腕を酷使するためニンジャの体でも15個程度が限界。

【人物背景】
ニンジャスレイヤー第三部「不滅のニンジャソウル」に登場するニンジャ。とある男ニンジャが、いろいろあって女ニンジャの肉体を間借りしている状態。男だった時から、ヘタレで気弱ながらここぞというときに活躍する名サイドキックで、女体になった今やヘッズからは完全にヒロイン扱いである。女子力も実際高い。ここでは第三部初期、フラッシュファイト・ラン・キル・アタック」終了後頃の時系列から参戦。女性人格はまだ完全には覚醒していない。

【方針】
聖杯戦争を止め、元の世界へ帰る。困ってる奴はなるべく助ける。
願いは「自分の肉体を取り戻し、この肉体を元の持ち主に返す」ことだが、聖杯の力には頼りたくない。

◆◆◆

……見てのとおりだ。前のが右だったので思いっきり左に振った。ライダーのステータスが高すぎる気もしたが、適当に調整してくれ。カン・フューリーは忍殺とブーブス足して割らずに圧縮してダシをとったような最高のバカ映画で、おれはだいすきだ。「デイ・オブ・ザ・ロブスター3」は、おおむねカン・フューリーだ。なおエピロワがあんな感じになってるのは、ほぼこのSSのせいだ。気を抜くといつもこんな感じで与太文章を出力しがちなので気をつけたい。

【続く】

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