邦題：殻を破れ（Break the Shell）

これは2019年7月20日から21日にかけてTwitter上のnjslyrタグで行われた、ニンジャスレイヤーTRPGの簡易版ゲームでのつののリプレイを纏めたものです。公式のソロアドベンチャーシナリオとしては第六回です。

今回は新ニンジャを作るにあたり、これまでのあらすじを超ミニマルに作って準備しました。多少成長してもサンシタのままですが。

◆ボーンピッカー（種別：ニンジャ）
カラテ　　　　　　　４　　　　体力　　　　　　　　４
ニューロン　　　　　５　　　　精神力　　　　　　　５
ワザマエ　　　　　　４　　　　脚力　　　　　　　　２
ジツ　　　　　　　　０　　　　万札　　　　　　　１０
ＤＫＫ　　　　　　　３　　　　名声　　　　　　　　０

◇装備や特記事項
▶生体LAN端子：ニューロン判定ダイス＋１、ハッキング時は＋３
◆ウィルス入りフロッピー：ハッキング難易度－１、使用後出目３以下で喪失
○サイバネ賞金稼ぎ：重サイバネの死体から万札＋５

能力値合計：１３　サイバネ数：１　回避ダイス：５

ではリプレイの様子から、このニンジャのアトモスフィアを感じ取っていきましょう。例によってパルプ小説仕立てでやります。

◇🎲◇

◆ソロアドベンチャーパート開始な◆

ネオサイタマを睥睨するトコロザワ・ピラー。その傍らの片隅に、地下カンオケ・ホテルがある。ソウカイヤのニュービーニンジャを寝泊まりさせる簡易宿泊所だ。タタミ3枚きりの「ドージョー」に、フートンと木人、香炉があるだけのサップーケイな部屋。ミニマリズムの極みだ。

ニュービーニンジャの中には、寝る場所もない者もいる。野放しにしておけば問題だ。精神的な問題を抱える者、多重債務者、そうした者も収容される独房めいた施設だ。食堂はあり、トイレやシャワー室は共用で、揉め事を起こせば厳罰。彼らは外にねぐらが見つかるまでここで暮らし、鍛錬を行う。

ボーンピッカー（BP）は、この施設で暮らす下級ニンジャの一人だ。時々彼のもとにモーターロクメンタイ（D6）というナビゲート・ドローンが現れ、ミッションを伝え、ナビゲートがてら監視を行う。査定次第で報酬が増え、運が良ければ上に認められて、カンオケから出られるかも知れない。

「電脳薬物のバイニンがねえ…」ボーンピッカーはカンオケ・ドージョーを抜け出し、いつものようにD6のナビを受けつつ現場へ向かった。スラム地区の地下駐車場へ。スラム地区は彼にとって庭のようなものだ。人捜しならツテもあるが、荒事の予感もする。ニンジャのカラテがいる案件か。

地道な鍛錬でそこそこ戦えるようにはなったが、彼のカラテやワザマエはニュービーニンジャとしても平均程度だ。「重サイバネ野郎が相手ならいいがな。稼げる」指を動かし、サイバネを剥がすイメージを脳内で転がす。彼はもともとサイバネ賞金稼ぎだ。そういうミッションは、まだ来ない。

◆入口な◆

地下駐車場への入口は封鎖されている。その前にたむろしているのは、野良ギャングスタが10匹。ニンジャにとってはゴミも同然だ。蹴散らしてしまおう。とはいえ、10人全員を相手取るのも面倒だ。スリケンを投げて何人かやれば、後はNRSで逃げ散るだろう。BPはスリケンを構えた。「イヤーッ！」

ワザマエ4で[1,1,2,6]＝ギリギリ成功！

「アバーッ！」ギャングスタの眉間に命中！「ちょいと危なかったな」BPは薄笑いつつ手首をぶらぶらさせる。スリケンはあまり得意でない。ハッキングならお手の物だが。「サイバネアイでも入れようか」BPは物陰からぬうっと姿を現し、彼らを睨む。「アイエエエ！？」「ニンジャ！？」

残る9人のギャングスタたちは驚き、失禁して逃げ去った。BPはジツも使えぬケチなサンシタだが、ニンジャだ。「もう少しやりゃよかったな」BPは倒れたギャングスタからスリケンと財布を抜き取り、ドラム缶で焼かれていたイカを奪ってむしゃむしゃと食った。ニンジャは簒奪者だ。

獲得：万札1

路地裏をウジ虫めいて蠢く浮浪者だった彼は、ニンジャになった。常人を虫けらめいて殺せる超人に。ソウカイヤに見つかってこき使われ、鍛錬し、それなりに強くもなった。だがニンジャの中でも下だ。憑依ソウルはジツも使えぬレッサーニンジャ。「へっ、まじい」イカを吐き捨てた。ゴムの味だ。

もしスリケンを外していたら、10人のギャングスタが一斉に銃撃してきただろう。ニンジャでも避けきれねば普通に死ぬ。BPはそこそこ注意深く、それぐらいは避けられたかも知れないが。BPは今までを思い起こす。そこそこツイており、それなりに稼いできた。次はあのカンオケからの脱出だ。

捨てたイカを拾い上げ、死んだギャングスタの身ぐるみを剥いで懐におさめる。何かには使えるだろう。彼は意地汚い。 

◆地下駐車場な◆

問題の地下駐車場へ。スクラップ同然の車、前後ネオンワゴンなどが放置されている。人の気配はない。「トレジャーを漁ってもいいが、今回は人捜しだよな…生きてるかねえ」手ぶらでは帰れない。まずは手がかりを探そう。ソウカイヤになにか証拠を渡せば、最低限で調査ミッションは果たせる。

「こういう時は、あれだろ」BPは目ざとく監視カメラを見つけた。まだ生きている。彼の一番の得意技はハッキングだ。生体LAN端子にケーブルを繋ぎ監視カメラと直結する。大したセキュリティでもなさそうだ。

ニューロン5+生体LAN端子でダイス8、[2,2,4,5,6,6,1,2]＝難なく成功。

「アタリだ」BPは監視カメラの映像を確かめると、駐車場の隅に並ぶ自販機の近くへ行った。バッジが落ちている。クロスカタナの紋。ソウカイヤのものだ。件の電脳薬物売人のものに違いない。彼がむしり取って棄てていったというわけもなかろう。落としたのだ。そして、本人は行方不明のまま。

「こんなところに落ちているってこたあ、拉致か…」BPは嫌な予感がした。冗談めかして語られる、自販機に潜む怪物の噂を思い出す。まさか。自販機から物音。嫌な予感が強くなった。ニンジャ第六感だ。

ニューロン5+生体LAN端子で6D6、難易度EASY。[2,3,4,5,5,6]＝成功。

「ヤバイ！」

「シュシューッ！」自販機の取り出し口から多数の触手！都市伝説の存在！恐るべきバイオ生物ベンダーミミックだ！

「ファック！実在したのか！？」BPは一瞬早く動く！

5D6で難易度NORMAL、[1,2,2,4,6]＝回避成功！

少々ビビりはしたが、ニンジャではない。ただのバイオ生物だ。だがモータルが襲われたらひとたまりもなかろう。「犯人はこいつってわけだな、D6＝サン」『そのようですね』「どうするか…」このまま帰って報告しても、報酬は貰えるだろう。D6が記録している。監視カメラの映像もある。

だがこいつをカラテで倒し、物的証拠として持ち帰ればどうだ。このバイオ生物はヨロシサンが作り出したともいう。そいつがソウカイヤの末端構成員をやったのならケジメ案件だ。ヨロシサンからたっぷり万札を搾り取れる！BPは意地汚い男であった。「イカ野郎、ジャーキーにしてやる！」

戦闘開始

「イヤーッ！」BPがベンダーミミック（VM）めがけカラテを繰り出す！

4D6で[1136]＝1ダメージ！VMの残り体力5！

KRASH！自販機が歪む！「シュシューッ！」「チッ、硬えな」VMが攻撃を回避することはないが、堅固な自販機の殻を持つVMになまなかなカラテは通じぬ！だがダメージはありだ！カラテを繰り返せば殺せる！

重サイバネではないにせよ、機械の殻を纏っていることに違いはない。ならばこれまでの知識が通じるはずだ。叩いて壊し、隙間を貫いて殺す！

「シュシューッ！」VMの反撃！

BPは5D6で[34445]＝回避！

「イヤーッ！」BPのカラテ！

[1144]＝1ダメージ！VMの残り体力4！

「シュシューッ！」「イヤーッ！」「シューッ！」「イヤーッ！」「シューッ！」「イヤーッ！」「シューッ！」ニンジャのカラテとVMの触手が色付きの風めいて交錯！

[13256]回避！攻撃！[1455]命中！残り3！手強い！反撃！[34546]回避！[1135]命中！残り2！反撃！[11146]回避！攻撃！[1545]残り1！[11366]回避！

だがニンジャであるBPにVMの攻撃はかすりもしない！逆にVMは動けぬままBPのカラテを浴び続ける！まるで木人だ！「イヤーッ！」KRAASH！

[3343]＝命中！残り体力0！

「アバーッ！」VMは断末魔の叫びをあげた！緑色のバイオ血液が自販機から溢れ出し、触手は痙攣した後だらりと垂れ下がって動かなくなる。「……やったぜ」BPはぐったりしたVMの触手を掴み、デコボコになった自販機から引きずり出してトドメを刺した。イカやタコによく似ている。

これでカネが貰える。収穫だ。勝利だ！ノーカラテ、ノーニンジャ。彼が地道に鍛錬したカラテが火を噴き、恐るべきバイオ生物は倒されたのだ。BPは証拠品を担ぎ、意気揚々とトコロザワ・ピラーへ向かった。売人のバッジと監視カメラの証拠映像も忘れない。D6の記録映像もある。

◆トコロザワ・ピラーな◆

ピラーの近くまで来たが、BPはVMの粘液やバイオ血液を浴びてドロドロに汚れている。このままピラーに入るのは流石に躊躇われる。そこへ大柄な男が近寄ってきた。「ドーモ、BP＝サン」シックスゲイツの一人、ソニックブーム（SB）だ。「ドーモ、SB＝サン」BPは深々とオジギした。

スカウト部門筆頭である彼は、一応BPの上司にあたる。今回のミッションをD6を介して依頼したのも彼だ。ならば、彼に報告せねばならない。慰安温泉旅行に続きオキナワ研修に行っていたSBは、重金属酸性雨が降り注ぐネオサイタマには不釣り合いに日焼けしている。機嫌も良さそうだ。

SBと共に傍らのブリーフィングルームへ入り、BPはD6と一緒に事情を説明する。映像も物的証拠も見せる。いかに自分がカラテを食らわせ、このVMを退治したかを熱っぽく語る。SBはヤクザらしさとカラテを重んじる男だ。高く売りつける。BPの「商売人」としての交渉能力は意外と高い。

だがSBは「証拠品」を見て笑った。「で、犯人はこいつか。俺様はもっとでけえのを倒したぜ！」「え」BPはキョトンとした。「ああ、こっちの話だ。テメエもそこそこやるようになったじゃねえか。これでスシでも食いな！」万札3を投げ渡される。「あ、あの」「それはそのまま持ち帰れ。いいな」

BPはヨロシサンが云々と食い下がったが、SBは取り合わない。政治的事情があるのだ。「後でそれなりの報酬は受け取れるようにしてやる。そいつはいろいろワケありなんだよ」「アッハイ……」仕方なくBPはVMの死体を担いでピラーを立ち去り、地下のねぐら、カンオケドージョーへ帰ろうとした。

◆エピローグな◆

そこへヨロシ救急車が止まり、声をかけた。「そのバイオ生物、買い取らせて貰えませんか？」BPは振り返る。提示された金額は万札10。ヨロシサンが嗅ぎつけて来たのだろう。いや、これがSBからの間接的な報酬か。VMは都市伝説である方がいいというわけだ。救急車からはニンジャの気配もする。

「わかりました」BPも所詮はケチなサンシタ、ヨロシサンに喧嘩を売るのも損だ。VMを引き渡し万札10をゲット。そこそこの報酬にはなった。売人は死んで、万札に化けた。有意義に使わせて貰おう。後始末はSBの仕事だ。

ねぐらへ戻ったBPは、最初に仕留めてかっぱいだギャングスタの衣服や装飾品を改める。換金すれば万札2ほどにはなろう。合計で万札16。手持ちは26だ。万札とそれらを自室に放り込み、着替えを取り出して鍵をかけ、シャワー室で体を洗い、着替え、洗濯物をランドリーへ投げ込む。仕事は終了だ。

VMの買取価格は万札12ですが、先にSBのところへ持っていってしまったため、後からSBからも報酬があると思わず、2減らして10にしていました。なのでギャングスタの持ち物を売り払って万札2に換えます。

BPはフートンに寝転がり、天井を見据える。万札26あれば、サイバネアイとLAN直結型ハンドガンが買える。あと6でスシを食い、鍛錬する。家賃に1いるか。「うううう……」隣室から呻き声。「うるせえ」ぼつりとつぶやく。ここはクソだ。死者や狂人が掃き集められたゴミ溜めだ。抜け出さねば。

拳を握り、VMとの戦いを振り返る。自分も自販機に潜むあいつと同じだ。いつか誰かに、カラテで殻ごとぶち破られる。いや…自分から殻をぶち破って、外へ出ればいいのだ。チームを組み、アジトを手に入れる。外へ。外へ。ゴミ溜めの、カンオケの、ジゴクの外へ。

―――殻の外には、より大きな殻があるだけだとしても。

【ブレイク・ザ・シェル】終わり

◆リザルトな◆

◆ボーンピッカー（種別：ニンジャ）
カラテ　　　　　　　４　　　　体力　　　　　　　　４
ニューロン　　　　　５　　　　精神力　　　　　　　５
ワザマエ　　　　　　４　　　　脚力　　　　　　　　２
ジツ　　　　　　　　０　　　　万札　　　　　　　１０＞２６
ＤＫＫ　　　　　　　３　　　　名声　　　　　　　　０

◇装備や特記事項
▶生体LAN端子：ニューロン判定ダイス＋１、ハッキング時は＋３
◆ウィルス入りフロッピー：ハッキング難易度－１、使用後出目３以下で喪失
○サイバネ賞金稼ぎ：重サイバネの死体から万札＋５

能力値合計：１３　サイバネ数：１　回避ダイス：５

◆忍◆
つの版ニンジャ名鑑
【ボーンピッカー】
ソウカイヤの末端ニンジャ。スラム街で生まれ育ち、ジャンクを漁って生きていたサイバネ賞金稼ぎに低級ニンジャソウルが憑依。ケチで意地汚いが根性はある。
◆殺◆

鍛錬しておいた甲斐があって無傷でクリアできました。VMにサツバツを出せば早めに終わったのですが、泥臭く殴りまくってなんとかしました。重サイバネではないにせよ、機械の殻を纏っている非ニンジャを殺し、中身をかっぱぐという点ではサイバネ賞金稼ぎに近いビズですね。なおつのバースではSBが（15人がかりで）カイジュウ級のVMを討伐したことがあります。

アジトのないニンジャたちがどうしているかは諸説ありますが、BP＝サンのような根っからの浮浪者あがりはこうしているのかも知れません。ソロアドを3つもクリアしましたので、そろそろチームやアジトを斡旋されるでしょう。とはいえチーム・ヒップやチームBMに合流するわけにもいかず、MShやDMと組むことになるかも知れませんね。

以上です。つの産のこうしたニンジャたちを、あなたは自由に活用して下さい。つのはとても喜び、あなたの記事にスキをつけたりするでしょう。

【以上です】