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忍殺TRPGリプレイ小説【サマー・サスピション】中編

前回のあらすじ:山奥のオンセン旅館でソウカイ・ニンジャの殺忍事件が発生した。無線LAN装置も爆発し、外界と連絡はとれない。もしや、ニンジャスレイヤーのしわざでは?やつは今も潜んでいるのでは?疑念が疑念を、謎が謎を呼ぶ閉鎖環境で、今、無慈悲なる殺忍犯探しが幕を開ける……!

旅館に滞在しているソウカイ・ニンジャらについては前編をご覧下さい。誰がどこへ行ってどんな情報を得たかは、読者の皆さんには伏せておきます。

数時間が経過した。ホワイトボムの爆発四散と無線LAN装置の破壊は、宿泊2日目の朝。夜になるまで、それ以上何も起きてはいない。結局ただの不幸な事故か。皆が安心し始めていた頃―――それは起きた。

……「イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」……

AM0:00

ダンゴウ

油断していたスキに、またひとり殺された。ダンゴウの場、中央宴会部屋にやってこなかったのは……「なんてこった……!」アースドッグ!

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アースドッグ:死亡 残り5人

日付が変わるとほぼ同じ頃、闇の中にカラテシャウトと断末魔が響き、アースドッグは爆発四散したのだ。ニンジャのしわざに違いない。彼はキラーマシーン教育を受け、強力なカラテミサイルを切り札とする。厄介そうなやつから始末していく気か。「クソッタレ!野郎、どこにいやがる!」

ブラッドリーパーが歯ぎしりする。「アースドッグ=サンは、さっきまで何してた?誰かと一緒にいたか?」ライトニングアックスが情報をまとめようとする。「『もう一度オンセンに入って来る』とか言ってたな……俺はパスしたが」「ほう」ホワイトアックスとポイズンドラゴンに視線が集まる。

「彼と同行はしとらんぞ。自室で筋トレをしていた」「私も自室で荷造りをしていましたが」ブラッドリーパーが舌打ちする。「どうだか。口裏合わせて二人がかり、ってこともねェよな?」「なんだと?」「いい加減に……」疑いをかけられ、ホワイトアックスとポイズンドラゴンが気色ばむ。

ホワイトアックスは冷静になるべく、高タンパク魚肉ソーセージを懐から取り出してかじり始めた。ブラッドリーパーは構わない。「で、テメエらはどこ行ってた?」「ライトニングアックス=サンとゲームしてたよ」「ああ」「そうかよ。ネットも通じねえってのに、どんなゲームだ?」

「アナログ・カードゲームだよ。ほら」「なに、僕ら疑ってるの?言っとくけど僕らカラテからっきしだよ」「ああ、一緒にかかってもアースドッグ=サン相手じゃちょっとな」「ナード野郎め」「そういうあんたはどこへ?」「ゲイシャ遊びだよ。相手してたゲイシャを呼ぶか?証人として」

「あんたに脅されて口裏合わせってこともありうるぜ」「アア?コラ?」「ア?」ライトニングアックスとブラッドリーパーが凄み合う。高タンパク魚肉ソーセージを完食したホワイトアックスが仲裁に入る。「まあまあ、仲間割れはよせと言ったろ。とにかく、やつがいる。気をつけろ」

ポイズンドラゴンが同意する。「そうですよ。ホワイトボム=サンだけを殺して去ったのではなく、我々も襲われるということが明白になったのですから。一致団結し、一緒にいた方が安全です」スモークハンドがつぶやく。「イチモ・ダジーンにされたりして」「混ぜっ返すんじゃねェ!」

ライトニングアックスがため息をつく。「俺たちの中にあいつが潜んでるって?自我はダイジョブか?普通に旅館のどこかに潜んでる方が合理的だぜ」「狂人に合理性を問うてもなァ」「そもそも、ホワイトボム=サンやアースドッグ=サンはマジで爆発四散したの?偽装工作とかじゃない?」

5人の意見はまとまらない。粗暴なブラッドリーパーと、空気を読まないスモークハンドが特に反抗的だ。次第に他の3人も、互いを疑いの目で見始めた。「もういい。俺は自分の部屋に戻って寝る。襲って来たら返り討ちにしてやるぜ」「僕も。修学旅行じゃあるまいし、雑魚寝なんてしたくないよ」

「……そうですか。殺されても知りませんよ」「誰かが爆発四散したら、そいつの部屋に4人で駆けつけるか?」「やつがいたら殺される。逃げたがいいんじゃないか」「逃げても無駄なら、人数が多いうちに囲んで殴ったらどうだ?」「僕はカラテ苦手だなあ」「スリケンでも投げろや!」

行動宣言

議論の結果、全員が自室で待機することにした。襲って来たらなんとか持ちこたえ、救援を呼ぶしかない。各々の部屋は割と離れており、IRC端末は全員持っているが通じないため、大声で叫ぶしかないが。そして、もし誰かが自室を密かに離れても、互いに知る方法はない。危険な賭けと言えた。

ダンゴウの場ではこう言っておいて、口裏合わせをして同じ部屋に仲間を集め、抵抗を試みる者もいるかも知れない。ニンジャスレイヤー自身や協力者が素知らぬ顔でその中に紛れ込んでいる可能性もある。あるいは殺すため、もしくは調査のため、人知れず他人の部屋に侵入する者もいるかもだ。

そして……!

……「イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」……

AM2:00

ダンゴウ

ウシミツ・アワー。旅館の暗闇に、カラテシャウトと断末魔が響き渡った。またひとり殺された。ダンゴウの場、中央宴会部屋にやってこなかったのは……「なんてこった……!」ホワイトアックス!

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ホワイトアックス:死亡 残り4人

「やっぱシロだったか……」ブラッドリーパーがつぶやく。彼は先んじてホワイトアックスの部屋に潜入し、背景情報を調査していたが、特に怪しい情報はなかった。筋トレマニアのゲイだということが分かっただけだ。知らない方がよかったかも知れない。ともあれ、彼は死んだ。「ナムアミダブツ」

「全員が自室にいた時に襲われたっていうのなら、やっぱり僕らじゃないよね」スモークハンドがカタナを抱えて震える。「ねえ、従業員や他の客を、皆殺しにしようよ。あいつを誘き出すんなら、その方が早いんじゃないの」「やってる間に殺されますよ。誘き出しても、勝てますか?」

ポイズンドラゴンが呆れ顔をする。彼の傍らには、既に帰り支度を整えた旅行鞄が置かれていた。「私もカラテはからっきしです。今からでも闇に紛れて逃げた方がいいかも……」「バカにしないでよ。僕にはヘンゲヨーカイ・ジツがあるからね。ムカつく家族もそれで皆殺しにしたんだ!」

「で、生活できなくなってソウカイヤ入りか。よくある、よくある」ライトニングアックスがため息をつく。「俺も似てるかな……虐待されてたからブッ殺して、映像撮ってIRC-SNSにバラまいたんだが」「気が合うね」「ポイズンドラゴン=サンは?」話を振られて、ポイズンドラゴンは頷く。

「ええ……ハック&スラッシュに襲われて皆殺しに。ニンジャになったのもその時ですね」「よくある、よくある」ブラッドリーパーが鼻を鳴らす。「世間話してる場合かよ。俺は親の顔も知らねえスラム育ちだがよ……とにかく、どうすんだ。これじゃおちおち寝てもいられねえぞ」

やおらライトニングアックスが立ち上がった。「どーした。トイレか?」「いや。俺、パパラッチ・ジャーナリストの端くれでさ。興味があると調べずにはいられないんだ」じり、じり、と丸テーブルから後じさりしつつ、3人を見つめる。「そして、知ったことは暴かずにはいられない」

彼は……ポイズンドラゴンを指差した。「悪ィが、あんたの部屋を調べさせてもらった。クローゼットの中もな!」インロウめいてIRC端末をかざす。

端末の画面には、先程撮影した決定的な証拠が写っていた。……ホワイトボムと、アースドッグの、生首が。ハンガーから、紐で吊り下げられている。ライトニングアックスの全身がガタガタ震える。「「エッ!?」」ブラッドリーパーとスモークハンドも、それを見てとっさに飛び退る。

ポイズンドラゴンは……無言で旅行鞄を開けると、何かをふたつ、テーブルの上に置いた。やはり生首だ。ホワイトアックスと、ポイズンドラゴンの!

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ポイズンドラゴン:死亡 残り3人

最終決戦

「ようやく気づいたか。ソウカイ・ニンジャ」地の底から響き渡るような、死神めいた恐ろしい声。「オヌシらの行き先はジゴクだ」

ポイズンドラゴンは……否、死神は、スーツとメンポと変装用マスクを脱ぎ捨て、全身の筋肉をパンプアップさせた。凄まじいカラテが宴会部屋を満たす!彼は金属製のメンポを瞬時に身に着け、赤黒いニンジャ装束を身に纏った。そのメンポには恐怖を煽る字体で「忍」「殺」と刻まれている!

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」

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◆ニンジャスレイヤー(種別:ニンジャ)
カラテ      15    体力       15+2
ニューロン     8    精神力      10+2
ワザマエ     11    脚力        8
ジツ        ?    万札       10

◆装備や特記事項
◆家族の写真、パーソナルメンポ、伝統的ニンジャ装束
◆フックロープ:遠隔武器、ダメージ1、拘束、カラテ値対抗判定に勝利すると引き寄せ
●連続攻撃3、連射2、マルチターゲット、時間差
◎◎タツジン(ジュージツ)、憎悪:ニンジャソウルの闇、ソウカイヤ
◎スリケン見切り、鉄拳、ランスキック、チャドー呼吸、ヘルタツマキ、ツヨイ・スリケン
 ヒサツ・ワザ:ポン・パンチ、サマーソルトキック、タツマキケン
★ナラク・ウィズイン、即死耐性
●気力体力の充実(体力と精神力+2)

能力値合計:? 回避ダイス:16(回避難易度-1) 近接攻撃ダメージ2、装甲貫通1
「ベイン・オブ・ソウカイヤ」一歩手前のフジキドです。勝てません。たぶんオンセン旅館を利用ついでに偶然ニンジャを殺しに来たのでしょう。

「ライトニングアックスです」「スモークハンドです」「ブラッドリーパーです」3人はアイサツを返した。「アハ、アハハハーッ!」ライトニングアックスは狂ったように笑い、涙を流した。「特ダネだ!俺が突き止めた!あんたの正体を!」「バカ!ホウレンソウしやがれ!」「スゴイ・バカ!

ブラッドリーパーとスモークハンドはカタナを抜き、ライトニングアックスを叱責した。勝てる気はしないが、3人がかりなら、あるいは!「オヌシらを恐怖させ、絶望させるための余興に過ぎぬ。猜疑心で殺し合わなかったことは褒めてやろう」ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構えた。

「ニンジャ……殺すべし!」

【続く】


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