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【ライク・ア・ドラゴン、ダンス・イン・ザ・ナイト・スカイ】 #ppslgr

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足元には死体が転がっていた。角刈りの頭、ダークスーツ、手には拳銃。明らかにヤクザだ。だがアスファルトに広がってゆく血は緑色のバイオ血液。その死体は「クローンヤクザ」と呼ばれる人造人間。マッポーの魔都ネオサイタマの闇社会に流通する、恐るべきバイオのヤクザ戦士たちだ。

「ふうむ」

白衣の人物は死体を見下ろして、顎に手をやる。あまりにも見慣れた死体。「またネオサイタマに来てしまった」太もものポケットを探ると、サイコロがあった。「こいつの仕業か」

豊かな黒髪を三つ編みにまとめ、白衣を纏った丸メガネの人物。中性的な容貌だが、彼は男性だ。名はM・T。彼にとって姿も名も仮のものであるが、この次元ではそのように定義されている。彼は、超大型巨大自由売買商業施設”Note”に棲む「パルプスリンガー」と呼ばれる異能者たちの一人だ。

彼はいつの間にか「Bar Mexico」にいた。古くからどこか異世界を彷徨っていた、名も形もないなにかに、誰かが名と形を与え、そこに出現させた。彼の記憶はそこから始まっている。それ以来数ヶ月、彼は個人的な好奇心からいろいろな世界を渡り歩いては取材し、書き、まとめ、発表して来た。

彼は次元放浪者だ。過去、現在、未来、さらには異世界へも自在に行ける。ユカタン半島やエンシェント・チャイナ。その前はF市、H市、M市近未来のアメリカやオーストラリア、古代のアラビア、荒野、海上、東京、出雲、伊勢バーチャル空間……いろいろなプレーンを渡り歩いた。だが。

最近、彼はネオサイタマという次元に囚われている。たまに同じ世界の中でオキナワに移動したりもするが、何度か移動を試みても、ここに戻って来てしまうのだ。Bar Mexicoは存在する次元が近いので行き来は容易だが。そしてネオサイタマに転移するたび、ポケットには六面体のサイコロ。

バロン・サムディ。君の仕業だな」M・Tが呟くと、サイコロが宙に浮かんで喋りだす。『そういうことさ。いやあ、オレもすっかりハマっちまって、なかなか抜け出せねえんだよね』バロン・サムディ。M・Tに取り憑いているヴードゥー教のロア(神、精霊)の一柱。たびたび彼を引き回す存在だ。

「私も興味は尽きないが、そろそろ別の仕事にも取り掛かりたいんだ。なんとかしてくれ」『あんたがサイコロを振るからでもあるんだぜ、創造主(クリエイター)殿。こいつは補助輪であり、麻薬でもある。シュガーちゃんの角砂糖みてえにな』サイコロが笑う。『ま、観光に行こう。ここは……』

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四つ辻に立つと、サイコロが変化し、バロン・サムディが元の姿を現す。今回は下着を穿いているようだ。『いつものツチノコ・ストリートだな。あの屋台のラーメンがうまい。ケミカル調味料が効いてる』「腹は空いてない」『あと、その姿だとヨタモノに襲われるぜ。Picrewとかで着替えなよ』

「必要ない。襲って来たって、私に何の危害も加えられないだろうし」M・Tもバロン・サムディも、Picrewによって仮の姿を纏っている。それが何かはご存知だろうから言わないぜ。しかしこの姿はちとカワイイ過ぎない?

確かにヨタモノが多い。が、M・Tもバロン・サムディも、誰にも視認されていない。存在するレイヤーが違うのだ。モータルやニンジャを創造し、その行動を「書く」ことができるM・Tは、この世界で言えば小さなヌンジャとさえ言える。パルプスリンガーたちにとって、その程度は基本能力だが。

バロン・サムディもまたメタ的な存在だ。彼はあらゆる物事を知り、様々なことに首を突っ込んで介入し、混乱させたまま放置する。M・Tは比較的穏健な性格であるが、バロン・サムディは完全に胡乱な自由人で、M・Tにさえ制御できるような存在ではない。2人揃ってなんとか釣り合いが取れている。

『だいたい、あんたにゃパルプスリンガーのおっさんって相があんだろ。そんな中性的な姿でいいの?バ美肉?』「R・V=サンからの貰い物だからさ。福助の方が動きやすいんだけど、あのままで酒場にいるのもあれだしな」『オレ的にはおっさんの方を支持するね』「あっちも忙しいんだよ」

M・Tは、いくつかの相(アスペクト、ペルソナ)に分裂している。もとの姿は不定形だが、いつしか老頭児パルプスリンガーの相や福助の相などが分離し、独自に動き始めた(福助は無数にいる)。一人では手が回らないほど忙しいのだ。結局は一人でやってるのだが。M・Tはそうした相の一つとなる。

チーム・ヒップやチーム・BMのアジトを巡り、下水道に入ってFTの様子を見に行く。少し足を伸ばして、チーム・HDやWL、MShやDM、BPやAZ、モータルPCたちも見ておく。M・Tとバロン・サムディが望めば、彼らはツキジの奥でもドサンコでも瞬時に移動できる。バースの主だからだ。

しかし、この世界そのものは借り物だ。M・Tは古くからそうしてきた。様々な世界を渡り歩き、繋げ、借り物同士を組み合わせる。二次創作、と一般に言われる。パルプスリンガーとしては邪道かも知れないが、それが性に合っている。歴史ものなどを書けば、そうも言われないだろうけれど。

「……さて、ハルケギニアの方も様子を見ておかないとな」『ああ。あんな電子遺跡、よく残ってるもんだぜ。早いとこサルベージしとこう』「アーカイバーの能力も及ばない領域はあるからな」アーカイバー。彼がパルプスリンガーを名乗る前は、そのような存在だった。今もそうだ。温故知新。

『ジオシティーズ鯖』が数ヶ月前に消滅し、多くの貴重な電子遺跡が虚無に飲まれた。インターネット・アーカイブによっていくらかは救い出せたが、無数の知識が消えた。アットウィキ海もそうならないとは限らない。いや、全ての電子情報はそのような、儚いものだ。人間よりもずっと脆い。

M・Tは、ネオサイタマの夜空を見上げる。重金属酸性雨を孕んだ暗き雲を。「『上なるものは下なるもののごとく、下なるものは上なるもののごとし。そは唯一なるものの奇跡の成就のためなり』」呪文を思い出し、唱える。瞬時に飛び上がり、ネオン看板を蹴り渡ってビルの屋上へ。さらに上空へ。

空中をビィン、ビィンと多段ジャンプし、暗雲を突き抜けて満月に手をかざすと、銀色の鏡が出現する。ポータルだ。M・Tは微笑み、ダイブした。

Wasshoi!

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【ライク・ア・ドラゴン、ダンス・イン・ザ・ナイト・スカイ】終わり

これは、「パルプスリンガーズ」バースにおけるつのの一側面「M・T」をもとにしたn次創作めいたなんかです。自己紹介とか現状報告も兼ねています。あなたは自由にM・Tをあなたの作品に出すことができます。つのに報告があれば喜んで飛んでいきます。ただしアンタイ・ヘイター創作とかされた場合、あなたに悍ましい災いが降りかかります。お気をつけ下さい。

【以上です】

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