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【FGO EpLW 殷周革命】第五節 万里長城遮土崩

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(前回のあらすじ:孟津に出現した殷のライダー・平将門公により、砂鉄竜巻に封じ込められた一行!シールドで護られてはいるが、これでは手出しが出来ぬ! このままでは、周王の命と鼎を奪われてしまう!そうなれば歴史が変わり、全ては終わりだ!)

「クソッタレ……長くは保たねぇぞ、俺の魔力が尽きちまう!」
「もう少し貴方に魔力があれば良かったんですが……ランサーさん、こういう時のアレは」
「分かっている。多用すればマスターの寿命が縮むが、どのみち、それしか脱出方法はない」
シールダーの問いかけにランサーは頷き、槍を構えて呼吸を調える。目標は、こちらに背を向けたライダーの背後ではない。その先、周王の天幕!
「スゥーッ……ハァーッ……スゥーッ……ハァーッ……!」

シールダーが冷たく言い放つ。
「構いません。思い切りやって下さい」
「構うわ! だいたい、この竜巻を抜けたところで、なにをどうしようもねぇぞ! 王様は救出できても鼎が奪われりゃ、どのみち……」
「このままだと確実に破滅だよ。座して死を待つ前に、お嬢ちゃんの意見を聞きな」
「チャーナキヤさん。聖杯、九鼎の魔力は、わたしにも及びますか」
「鼎で召喚された我々が優先されるはずだが、魔力の塊であることに変わりはない。問題なく使えるでしょう」
「では◆◆◆さんの魔力も鼎から供給すれば済む事です。問題ありません」

天災に近いライダーの攻撃も、地球規模の修羅場を潜ってきたシールダーにとっては、さしたるピンチではない。状況判断だ。
「ええい、ならいい! やっちまえランサー!鼎のとこまでジャンプだ!」
マスターは覚悟を決め、目を閉じ、歯を食いしばる。死なないまでも、死んだ方がマシぐらいな苦痛は避けられまい。

『推シテ参ル半蔵之門(ゲート・オブ・ハンゾウ)』!
グワーッ!
宝具出現! 魔力を吸い上げられ、マスターが悶絶! ランサーが門を蹴り開ける!

「Wasshoi!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「なんだ、あれは」
周王たちは天幕を出て、船着き場の方を見やる。突如として出現した黒い旋風が、周軍を蹂躙している!
「敵の英霊としか考えられん。余と鼎を奪いにやって来たに相違あるまい」
「は、早くお逃げ下さい!」
「英霊たちが戦っている。余には分かる。決して諦めてはならん」
敵が放つ凄まじい妖気は、かなり離れたここからでも伝わってくる。人間に対抗できる敵ではない。しかし、英霊ならば!

「Wasshoi!」

突然、周王の目の前に英霊たちが出現! マスターはエピメテウスを被ったまま気絶!
「英霊がた!」
「王よ、今すぐ鼎の力が必要だ!」
「分かった! 天幕の中へ!」
ランサーがマスターを背負い、鼎の一つに放り込む! KWAAANG!
「グワーッ!」
「その中でじっとしてて下さい! 王は鼎の背後に!」
チャーナキヤ、勾践、イシュタムも自分の鼎に飛び込む! マスターが入ったのはイシュタムの鼎だ! 役得!
「鼎と貴女を接続し、スキルで強化します! シールダー殿、頼みますぞォ! 『英雄作成』&『軍師の忠言』!」
魔力を補給したチャーナキヤが叫び、シールダーとその場の全員にバフがかかる!

シールダー、マシュ・キリエライトは天幕の入り口に立ち、大盾を構える! その目前に、ライダーたちが迫る!

『『『ソコカ……小娘、立チハダカラバ、踏ミ潰スノミ』』』

ライダーの声が脳内に鳴り響く。正直ナメていた感はある。認識を改めよう。恐るべき英霊だ。しかしながら『防衛』において―――わたし、シールダーの力を、ナメてもらっては困る。

なぜかサーヴァントとしての力が復活したものの、未だ不安定。鼎……聖杯が三つもあるとは言え、以前のような力が出せるかは、まだ不明だ。それでも! 人類の歴史を、未来を、仲間を護り、本来のマスターを取り戻すため……ここで終わるわけにはいかない!

「真名、開帳───私は災厄の席に立つ……」

「其れは全ての疵(きず)、全ての怨恨を癒す、我らが故郷――」

「顕現せよ!」

「『いまは遥か理想の城(ロォォォド・キャメロット)』!!」

シールダーの前に、万里の長城の如き白亜の城壁が出現! 悪を阻む盾、円卓の城、『キャメロット城』だ!

『『『コレハ……何ダ』』』

三つの鼎の力が集中し、光り輝く城壁が前進! ライダーたちと黒い竜巻を、押し返す! シールダーが咆哮!
「おおおおおおおおおおおおお!!!」

「グワーッ!? グワ、グワアバーッ!? ゴボーッ!?」
発光する鼎の中では、マスターが吐血して瀕死! 鼎があるとはいえ、大宝具の解放出力! 彼の乏しい魔力回路では限界が近い!
「じっとしてな! お嬢ちゃん、なかなかすげェじゃあないか……」
「周王はご無事か!」
「お、お蔭様で……しかし、防いだだけでは……どうするのです」

「スゥーッ……ハァーッ……スゥーッ……ハァーッ……」
シールダーは呼吸を調え、意志を保つ。先程ランサーが用いていた呼吸法を見て習い、真似び用いる。一点の曇りもない心を保たねば、この城壁は即座に崩れる。ゼン……ヘイキンテキ……そういったものだ。この呼吸は、それを調えるのにちょうどよい。深い呼吸を繰り返すたび、魔力がどこからか湧いてくる。己を取り巻く世界とチャネルし、そのエネルギーを……。

だが、マスターの方が限界か!? シールダーの集めた魔力が、少しずつ漏れ出していく!
「……もう一歩、前へ……これを……動かす、魔力を!」

「魔力が足りないンならさァ……あるでしょ、そこらじゅうにさ!」

アサシンの声。天幕から黒い縄が多数伸び、空中をのたうつ。おお、ナムアミダブツ!霊的視力のある者は彼女の縄の先を見よ!ライダーに虐殺された周の兵士たちの魂魄だ!敵に吸収される前に、こちらの力とする気なのだ!

「さっき、セイバーが言ってたよねェ。『本陣を護れ』『鬼神同士の戦いだ』ってさァ。あんたらも死んだからにゃ、王様を護る鬼となりな!」

縄が兵士たちの魂魄を捉え、鼎の中へ放り込む! マスターを介して、シールダーへ力が流れ込む!

「……これならば!」
シールダーは目を見開き、力強く一歩を踏み出して叫ぶ! エピメテウスも共に!

『「DOSSOI!!」』

ゴウランガ! 大地から巨神エピメテウスのヨコヅナ級エンシェント・スモトリめいた腕が召喚され、城壁と融合! 巨大な掌となり射出される!

『『『グワーッ!?』』』

ライダーたちが強烈なテッポウ・ハリテに吹き飛ばされ……河水へ落下!
「沈み、錆びて、朽ち果てよ!」

『『『グググ……オノレ……コレシキ……』』』

纏う砂鉄の重みで溺れ、沈んでゆくライダー! このまま水底から逃れることもできよう! だが!

疾(チッ)!
セイバーが両腕を振りかぶり、空中に双剣を放り投げた! 鼎の力を借りて、天幕を突き破り、城壁を飛び越え、河の上へ!
「越王八剣が霊能の一、『驚鯨』!!」

ZZZZZZZZZZZZZZTOOOOOOOOOOMMM!!

ナムサン! 双剣から凄まじい電撃が放たれ、水中のライダーを灼く!

『『『AAARRRGGGGHHHHHHHH!!』』』

トドメとばかりに巨大な掌が河に到達し、ライダーの上に倒れ掛かり爆発!

『ヤ』
『ラ』
『レ』
『ターッ!!!』

KRA-TOOOOOM!!

インガオホー! ライダーは断末魔の叫びとともに爆発四散! 双剣はくるくると空中で回転し、セイバーの手元に戻った。
「よしッ! まずは一騎、討ち取ったり! ……生きているか、カルデアのマスター」
「……aarghhhh……」
体中の穴から血液と煙を吹き上げているが、生きてはいるようだ。が、しばらくは使い物になるまい。セイバーとアサシンが鼎を出て、外へ。ランサーも続く。

「……ハァーッ、ハァーッ、……やりましたね」
「お嬢ちゃん、お疲れ。あいつ共々、しばらく鼎の中で休んでな」
膝を突き、力強く笑うシールダー。肩を貸すアサシン。それを見るランサーの表情は、メンポに覆われているにせよ、冴えない。
「あれで、終わりならよいが……」
「アーチャー・メーガナーダと、もう一騎がいるな」
「うむ。それに、ライダーが復活する可能性もある。警戒は怠れぬ」
以前の特異点でも、セイバーが復活したことがある。まして将門公ならば、復活しても不思議はない。

『みんな、お疲れ。戦後処理して一休みしたら、九鼎についてもう少し相談しよう』
「諸侯や兵士たちの士気や記憶は、私が幻術でなんとかします。……ああ、過労死しそう」

ぱちり、と額の眼が開く。ヨーガのサマーディから不意に引き戻された。今の居場所は商の宮殿の奥深く、香を焚き染めた暗い一室。
「この感覚……ふむ、ライダーは倒されたか」

あの雲の壁は、おれの魔力を利用している。然るべきサマーディに入れば、あれを無とすることも、幻とすることもできよう。だが、しない。あれはおれだ。おれそのものが、おれを阻んでいる。敢えてこちらから破ることはすまい。いずれ向こうから破ってくる。万全の準備を整えて。それが楽しみなだけだ。闘争の中で何かを掴み取れれば。

ライダーを倒すとは、いかなる力か。聖杯、九鼎の力を集めたと推察されるが、早くも他の鼎を集め終えたか。それとも、鼎ひとつのライダーでは、あちらの三つの鼎には敵わぬのか。それよりも……。
「おれをここへ招いた者よ。聞いておろう。見ておろう。答えずともよい」
ヴィシュヌか。シヴァか。ブラフマーか。それともブッダか、アッラーか。いずれにせよ、おれよりは高次の存在。
「愉しんでいるのだろうな、お前は。待っていろ、そのうちおれも出陣する。何億という屍を地上に満たし、お前の遊戯を彩ってやろう」

――――ふと、眼前に白い影がよぎる。……我が妻、スローチャナ。蛇王シェーシャの娘。悲しげな表情でおれを見つめる。ふん、強情者め。まだおれに戦うなと申すか。それとも、これもヴィシュヌの幻術か。鼻をひとつ鳴らすと、妻の幻影は消えた。

同時刻。孟津から遠く離れた、とある山中。そこに一騎の英霊が現界していた。天候は、雷雨。

「ふん。ここで待っておれ、とな。異なことよ。しからばそれまで、罠でも仕掛けておるか」
異様な風体の男だ。周囲には冷たい瘴気を漂わせ、雨にも消えぬ燐火を浮かべている。怪しく、禍々しい英霊。否、怨霊か。
「待っておろうぞ。待ち構えてやろうぞ。そやつらを滅ぼし、九つの鼎を集めれば、万事願いが叶うというなら。わしの願いはただ一つよ」
雨を浴びながら嗤う男は、先ほど消えた『申公豹』という男が聞いておることを確信しながら、ひとりごちる。

「けひゃひゃひゃひゃ。けひゃひゃひゃ。ああ、恨めしや。恨めしやのう!」

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